匂いのサイン



嗅覚は味覚の1万倍も敏感で、また数ある全ての感覚の中で、脳の基本的な刺激感応部位に最もじかに結びついているといいます。匂いのメッセージは直接反応の中心部に達するから、理性的な自己抑制の対象にはなりにくく、その結果、匂いは私たちが意識しなくても記憶に残るし、あるいは、私たちに直接行動を起こさせることにもなるのだそうです。

どんなものにもある程度匂いはあるけれど、微粒子を味わうにしても、匂いを嗅ぐにしてもそれは溶けていなければだめなのだそうです。私たちのはるか祖先が海に住んでいた頃には、すべてが溶け合って匂いも味も一緒になっていたそうです。嗅覚や味覚はおそらくその頃に起源を持つのでしょう。砂糖は乾いた舌では味わえないし、バラの匂いは乾いた鼻では感じられません。匂うためには、分子は揮発していなければならないのです。空気は動いていなくても、分子が元の物体から離れて、空気中に漂っていなければならないのです。
匂いの分子は空気とともに吸い込まれ、鼻の中の湿った粘膜にくっつついて溶け、その分子の情報が各鼻腔上部の知覚細胞によってリレーされ、嗅球に達し、そこから嗅葉の伝道路を通って脳に送られます。誰かの香水は1秒の千分の1以内の速さで感知されます。匂いのメッセージは信号化されて脳に伝達されるのです。

匂いの感覚は私たちに性の快感(嗅覚を失った患者の4分の1は性欲も失うのだそう)、食欲、あるいは心理的な喜びを与えてくれるものです。この感覚は記憶を呼びさましたり、すでに他の感覚が薄らいでしまったずっとあとにまではっきりと残っているものです。匂いの受け取り方はその人の過去の経験や記憶、感情、現在の関心にも関わりがあります。

嗅覚は人によって、体調によって感度は異なるのですが、大体、女性は男性に比べ感度が高いと言えるのだそうです。

私たちは嫌な臭いに会うと辟易し(火は臭気を負かす最良の手段なのだそうです)、いい香りに出会えば楽しくなります。

教会内で宗教的興奮が高まると心地よい香りー神聖な匂いーが立ち込めるのだそうです。(ハベロック・エリスによる)

フィトンチッド
また、森に入ると、清々しくなり、元気がでます。森にはマイナスイオンが多く、酸素いっぱいの清らかな空気が人間の副交感神経を刺激して、開放感を感じることができます。樹木やハーブが持つ自然の消臭・抗菌作用により、空気は清浄化され、植物の花、葉、枝から発散される匂いで気分が爽快になるのです。この匂いを嗅いでいると、精神の安定、ストレスの解消、精神疲労の緩和など自律神経の安定に効果があるそうです(フィトンチッドと呼ばれる木々から発生する独特の芳香物質。植物という意味のフィトンと殺すという意味のチッドの合成語。植物がかびや微生物、昆虫といった外敵から身を守る為に放出する物質である。ヒバに含まれるヒノキチオール、マツに含まれるピネン、テルピネオールなどで、心や身体に安らぎを与えてくれる効果がある)。

好きな匂いに出会うと
顔の緊張は緩み、微笑み、楽しげな声音、嬉しそうな笑い、うなずき、口元の緩み、深い呼吸などの変化が現れるといいます。逆に嫌な臭いだと、顔をそむけたり、鼻にしわを寄せたり、上唇を尖らせたりします。

人間の匂い
人体の匂いを出す主な場所は生殖器肛門部位と腋下の腺だといわれます。アポクリン腺を持っているところです。顔にもあるといいます。特に腋毛や性毛はアポクリン腺から滲出する匂いを特に集めるようにデザインされているのだそうです。アポクリンは人間が生まれた時からあるけれど、ピークは性的に最も成熟した時で、その後、年齢とともに衰えていくのだそうです。アポクリンが性フォルモンを作るもとであるようです。

感情が高揚したとき(恐怖によって匂いが変わる)
私たちは足、手のひら、脇下に、また時には全身におびただしい汗をかきます。極端に心配したり、驚かされたりすると、大量に汗が出、また膀胱や腸も調整が狂ったりするそうです。人によっては外見ではわからないけれど、動物ならすぐにかぎつける匂いが出ると言われているそうです。

人の気持ちの嗅ぎ分け
まだよく解明されていないそうですが、精神分裂病にかかると、感覚がしばしばゆがめられ、患者は超感覚的な捉え方で聞き、見、また嗅ぐようになる(嗅覚幻覚)のだそう。しかし、大体において、患者が幻覚する匂いは嫌な臭いが多く、そのために彼らはよく臭いを避けようとするかのように鼻に何かで栓をするといいます。時には、いやな臭いの幻覚が肉体的な反応(顔をしかめる、むかつく、吐く、気を失うなど)を起こすこともあるそうです。精神分裂病者が、他人の気持ちを明らかに匂いで嗅ぎわけるという報告もあるとか。
・幻覚症:患者が断続的あるいは永続的に、いい匂いにしろ、悪い臭いにしろ、実際にはそこにないいろいろな匂いを幻覚する場合をいう。精神分裂病患者のなかにそうした匂いの幻覚をもつものがおり、また側頭葉に腫瘍がある患者にもそのようなことが起こる。
・副腎ホルモンの欠乏は嗅覚過敏を引き起こす:この種のホルモンは通常神経の活動をコントロールする役目を果たしている。不貴人ホルモンが不調になると、それによる抑制がきかなくなり、神経が異常に過敏になる。

病気が匂いで判断できる日が来る
人間の体臭が病気の診断に役立つのだそうです。がんの病人や精神分裂症患者黄熱病、壊血病、ペスト患者、ある種の皮膚病も特殊な匂いをもっているといわれます。腎臓に欠陥があれば患者の息は大方アンモニア臭を発し、ホコリのような臭いは精神的な病気、老衰、栄養失調の場合が考えられるのだそうです。母親が自分の子供について何か変わった臭いのするときは真剣に考慮すべきだと言います。
変わった臭いのある場合、問題が早く分かれば病気の被害、あるいは死をも防ぐことがあるようです。
ある特殊な病気は、まるで調香師が匂いを作り出すように、自らにおいを混合して作り出すのだそうです。この匂いの成分は主として体の分泌物と排泄物からなっています。汗、皮脂、鼻、喉、肺から出る粘液、尿、便、性器の分泌物、その他傷からの分泌物や体の組織の分解物といった、私たちの文化社会で不愉快なものと汚名を着せられたものだといいます。
嗅覚は化学反応知覚組織であって、もし体に重大な化学変化が起こったときは、鼻がまずそれを感じることが多いのだそうです。

匂いが病気をなおす
精神病医、ラルク・クラウショー博士によると、「患者の病気が薬剤そのものより、薬の匂いでよくなることもしばしばある」のだそうです。

フロイトによると
人間はごく幼い時期には、排泄行為を恥ずかしいとか、自分の排泄物を汚いということは考えないのだそうです。むしろ、自分の体から出る排泄物に大変興味を持つといいます。汚物と病気の関連性について認識が広まると、人間は汚物に関係するものはなんでも嫌うようになり、子供たちは自分や他人の自然現象(排泄行為)について恥ずかしく思ったり、嫌がったりするように仕向けられたのです。フロイトはこういう反応は理性の領域を超えるという認識にたち、嗅覚の必然的な抑圧の結果が精神病の主因になるとまで考えていたそうです。

匂いとセックス
1890年代、フロイト同僚フリースは、鼻と性行動の過程との関連性を精力的に証明しようと努めたといいます。彼は月経期間中に、女性の鼻の毛細血管が膨らむことなどを確認しています。
フランス人オーギュスト・ガバロンは匂いは人間の恋の主因であると言い切ったそうです。彼は、お互いの匂いの相互作用が性愛の本質であるとして、
「男女の間に結ばれる最も純粋な結婚は、嗅覚によって芽生え、2つの肉体が相寄り、かつ、共感しあうことによって生じる分泌とその発散が脳の細胞を生き生きとさせ、そこに両性の融合が行われ、それを互いに承認しあうことである」と言っています。
彼らは動物の性生活においてはるか昔から欠かせなかった互いの匂いを嗅ぐことが、人間の愛の生活においても本質的なことなのだといいます。

香水をつけるわけ
生物心理学的にみて香水とは個性を強調する為、優越感を味わう為、自我意識を作り上げる為、性的誘引に役立つ為だといわれます。

自然の原料にはワインの場合と同じように上作の年というものがあるそうです。ある年は非常に良く、ある年はあまり良くないといったように。雨量やその天然の成分を摘み取り積み出す時期に左右されるのです。

参照文献「香りで好かれる人 匂いで嫌われる人」ルース・ウィンター





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