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筋向かいのお宅に咲く"さざんか"を、毎日見ている。 幼い時から身内のように我が家に出入りしていたおばちゃんが昨年亡くなった。
昔は近所の方がお裾分けを持ち、「居るかねぇ」と当たり前のように玄関から上がってきたものだ。「おじゃまします」なんて挨拶よりも、用件を話しながらもう部屋にあがっているのだ。(笑) そんな光景はいつの間にか消えてしまったが、筋向かいのおばちゃんは変わらずひょっこりやって来ていた。
あだ名は「天使ちゃん」だった。小さくて、いつもにこやかで、可愛らしかった。いつも花々の手入れをしていて、「おばちゃん!」とこちらから手招きすると、にこにこして道を渡って来る。夏場は日陰に椅子を出して一緒に涼んだりした。



・・・この日、さざんかが朝日に照らされ一段と輝いていた。八重にひらいた花びらは白く透き通るように美しい。
娘さんは仕事からの帰宅が深夜なのに、おばちゃんが亡くなってから毎朝早くから花々の手入れを怠らない。おばちゃんが亡くなった日、「お互い同じ独り者だから、これからもよろしく頼むよ」と彼女に言われた。それから時々、見かけると挨拶だけではなく立ち話などするようになった。
「見事ですねぇ」 「でしょう!素晴らしいでしょ!」 と話した。こんなに見事に咲いて、おばちゃん喜んで見てるだろうなぁと言うと
私の周辺の宙をくるくると指差し、「この辺にいるよ、きっと」 と彼女は笑った。 写真を撮らせてもらいお礼を言うと、「こちらこそありがとう!」と満面笑顔で涙ぐんでいた。
「母さんが喜んでる。」って。
毎朝毎朝、花の手入れをしているとおばちゃんを感じるのだそうだ。なんか母さんに触れてるみたいでねぇと、いつか話していた。
おばちゃんの声や、笑った顔が浮かんで、・・・懐かしい時代、喉かな時間、祖母の顔も浮かび、温かいのにせつなくて涙がにじんだ。グっとこらえてバス停に向かった。