ごはんぢから ~武蔵野婦人の厨房から

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2008年06月11日
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今日は台湾のお茶のお話。

お茶の文化も微妙に違います。

で、私はやっぱり台湾のお茶が大好きです。
どしゃぶりの中行った九扮の茶芸館に流れていた、時が止まったようなあの独特な空気が忘れられません。

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再びの平松洋子さんなのですが、彼女の本の中にもこんな一節があります。

===============-
お茶は酔っぱらいます。
お酒で酔うと頭がふわふわするけれど、お茶で酔うと両足が床から10センチほど浮く。頭は冴え冴えとして正気なのに、からだがふわふわ浮遊している。そのうえ、お茶で酔っ払うと時間泥棒にあいます。知らぬ間に。

              (平松洋子の台所 新潮文庫より)
================

こうして、彼女は台湾の茶芸館で「気がついたら深夜3時だった」という体験をしたのだそうです。

その昔、日本に千利休という人がいました。
彼の広めた茶道は、当初は礼儀作法や侘びさびなどでは毛頭なく
密室の中の儀式を経て強烈なカフェインを摂取することでもたらされる
ある種のトリップ体験だったのではないか、
と解釈している人もいます。
それだけ、お茶は奥深い。
儀式があればあるほど、特別な時間軸の中にはまりこみます。



さて、そんな台湾の茶芸。

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小さな小さな急須にお茶葉をたくさん入れて
しゅんしゅん沸いたお湯を入れたら、急須の上からどばどばとお湯をかけてしまいます。
こうして蒸らすのです。

最初に茶葉を通したお湯は捨て、二番目に入れた第一煎目のお茶は
茶海といわれるミルクピッチャーのような容器に、最後の1滴まで入れてしまいます。

まず香りを楽しむ。
その上で、延々と、延々と。
この小さな急須にお湯を注ぎいれながら、小さな盃のような茶器でお茶を飲む。

今回は出発前から、かならずいい茶器をみつけて買ってくる!
と決意して出かけただけあって
台湾の茶芸はすっかりこのところ、わが家に定着しています。

全部買ってくるという選択肢はやめました。荷物になるし、大げさすぎる。
気に入ったものだけをぱらぱらと買ってきたので、家にあるものを何とか組み合わせてオリジナルに茶器セットを作りました。正式のセットでは、おいておく場所もないからね。

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こちらは以前から持っていた茶壷(きゅうすのことです)。
自分でろくろをひいて絵付けをした絵皿があったので、それを茶船(茶壷を置いて、上からお湯をかけて温めておく鉢)にしてみました。
なかなかいいでしょ。これに茶海があればきちんとお茶は入れられます。

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茶葉の開いていく姿が絶妙に美しく見えるガラスの茶壷に魅了されて、手作りのものを買ってきました。こちらは、先日ご紹介した街のスーパーで買ったステンレスのなべやら茶筒やらとセットにして、日常使いのお茶セットに。

これが、今毎日うちのダイニングテーブルで活躍しています。
こんなのでも十分。
大げさな正式の道具一式なくても、気軽に日本の居間にも溶け込んでいます。
中学生の息子が、これでお茶を入れるとうれしそうにテーブルに寄ってきます。
ちょっとだけ手間のかかるお茶の時間。なるほど、これはこういう時間の流れ方を家に持ち込むのか。九扮のあの風景にはかなわないけれど、でもこの時間の流れの中で誰かとかかわりあうというのは、なるほど、とってもいいものなのですな。


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ジャスミンの花の入ったお茶の花が咲きました。
ここから先は、台北で一生懸命みつけた茶器自慢です。

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ガラスの茶器セット。茶壷(きゅうす)、茶海(ピッチャー)、お茶のキャニスター。これにステンレス製の茶漉しも買いました。
これは普段使いで、ステンレスの小なべを茶杯にして使っていますが、ホーローなんかも合いそう。野田ほうろうなどで、茶杯の変わりになるものがないか、探し中。

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ガラス製のキャニスターは、ふたが陶器です。
桃とこうもりの絵が手書きで絵付けされているもの。この桃とこうもりのコンビは、台湾での定番柄です。すっごく気に入って買いました!

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ホテルの裏にあった小さな茶芸館でみつけた、陶器の茶漉し。
美しい磁器製の女性の手が茶漉し受けになっています。いいでしょ。

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こちらは赤絵付けの蓋碗。手書きで繊細な赤の発色がなんともいえません。ああ、うっとりだなあ。いいものがみつかったなあ。とってもうれしい。
この蓋碗は、直接茶葉を入れてお湯を注ぎ、蓋をずらしながら飲むという使い方をします。そのほかにも、蓋をずらしてきゅうす代わりに使うこともできるのだとか。
こちらはいつもの日本茶をサーブするときにも使えそうで、お客様が来るのが楽しみです。

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行く前から目をつけていた、ガラス製の作家もの。
もち手のところに瑠璃の蝶がついています。
台湾では有名な作家さんのようで、台北の桃園空港にも彼の作品はたくさんうられていました。このガラス磁器の真っ白な色がなんともいえぬ美しさです。
これは、こんな袋に入れて渡してくれました。

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肝心のお茶杯ですが、茶芸館で
「日本のお酒用のお猪口を代用される方も多いですよ」と聞き
それならうちにいっぱいあるもの! とかわずに帰ってきました。

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学生時代から旅先で、骨董屋で探し続けて集めたお猪口。
これがこんな風に使えるなら、活用しなくっちゃ。
青磁のおちょこでいただく中国茶も、またオツなものです。
こうなると、本当に「お茶に酔っ払う」風情のできあがりです。


さて。
実は私は、タンニンが苦手で、紅茶文化は一切受け付けないからだなのです。
いい紅茶であればあるほど、気持ち悪くなってしまいます。
濃い日本茶もだめ。悪阻になったように具合悪くなります。

でも、この台湾式の中国茶なら、以外にも結構いけます。
量が少ないというのも、いいのかもしれません。
小さなおちょこで、ちょこっとづつ香りを楽しみながら。
今日も、わが家のダイニングには、ゆったりと不思議な、それなのになんだか酔っ払ってふわふわしてしまうような、甘美な時間が流れています。
今日は東頂烏龍茶を、息子とお三時にいただこう。
むふふ。






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Last updated  2008年06月11日 14時13分37秒
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