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校門前に来ると、見事に閉まっている。「おい・・・・・・こうなった場合どうすればいいんだ?」「問答無用。アンタ達ナラ通レルヨネ?ソレトモ、コノ門ヲアタイノ『陰陽術』デ破壊シロトデモ?」3人は息を詰まらせながらも校門をよじ登り、学校に侵入した。まず3人は陰陽術のことも知らない為、校門自体を知らず知らずの内に壊されると大変まずいからだ。「ソシテ次ハ、3-Dノ教室ノ掃除ロッカーヲ退(ど)カシテ、退カシタ先ニアル取ッ手ヲ右ニ。ソウシタラ屋上ニ繋ガル裏通路ガアルカラ、ソコヲマデ行コウ。」すると次の難関がやってきた。教室が閉まっている。かといって職員もいないわけだから、職員室も開いていない。「ショウガナイネェ。偵察人形ノ『力』ヲ見セテアゲルヨ。」すると、葵から蔀が離れ、ドアの鍵の前に立った。「『封式・錠外切開』。」そう唱えたのはよかったが、その後また葵のところへ戻った。「丁度イイ。コレモ練習ヨ。サッキ錠外シノ陰陽術ヲ唱エトイタカラ、指ヲ入レテミテヨ。開クカラ。」と、単刀直入に言う人形に対して右往左往。訳もわからず葵はためしに人差し指を鍵穴に触れさせてみた。するとどうだろう。派手にガチャッという音とともに、ドアが開いた。「ソレミナサイ。~式トイウ風ニツクノガ、陰陽術ナノサ。サテ、今度ハ葵ガヤッテゴランヨ。封式ハ変ワラナイカラ、チョット考エテ唱エテミテ。他人ガ中ニ入ッテコナイヨウニ、『内側から錠を掛ける』コトヲ想像シテミテヨネ。」「う~ん・・・・・・錠を内側から・・・・・・切開はどうやればいいのかな・・・・・・」そこに、陽炎が補足した。「葵、開ケタモノハ、再ビドウスルノ?」「・・・・・・再び閉める。あ、再閉かな?とすると、『封式・錠内再閉』でいいのかな・・・・・・?」葵がそう口にすると、蔀が動揺した。「スゴイジャナイ!正解正解、大正解ダヨ!モウ一度唱エテ、内側カラ閉メテゴラン。」葵が唱えると、蔀の腕が鍵のようなものに変わり、内側から鍵を閉めた。「マァ教室ナンダカラ、内側ニ付イテイル鍵カラ閉メレバヨカッタンダケドネ。マァ、コレモ練習。」3人と3体は教室の掃除ロッカーの前へと移動し、立ち止まった。「んで?ここからこの掃除ロッカーを退かせばいいのか?」命狩が頷くと和希と剣吾は力いっぱい掃除ロッカーを動かそうとした。しかし、その掃除ロッカーは異常に重く、ピクリとも動かない。自分たちの教室の掃除ロッカーは、2人もいれば持ち上げることまでできるのに。「奥ガ隠シ扉ダカラナ。ソウ簡単ニ動カセテモラッテハ困ル。一番早イノハ、『破壊』ダナ。」なぜこの人形達は『破壊』という言葉が好きなのだろうか。と、3人が考えているうちに、命狩が掃除ロッカーの前に立っていた。もう分かるであろう。「『烈式・時雨雹打(れつしき・しぐれひょうだ)』」時雨の如く降り注ぐ雹の様に、掃除ロッカーに打撃を次々と与えて行き、最終的に―――。―――バキッ。掃除ロッカーを貫通。人形達は無頓着で中に入るので、剣吾達もついていった。奥へと目をやると、道がある。通路は暗く、後ろから注がれる一筋の光だけが唯一の明るさであった。やがて教室より少し狭い部屋へと抜けた。「『麻式・腐乱飛丁(ましき・ふらんひちょう』」どこからともなく、陽炎に向かって一本の果物ナイフが飛来してきた。しかし陽炎はなんなく避(よ)けると、投げたと思われる所に近づき、投げ返した。「・・・・・・相変ワラズダナ。デモ、今ハソンナ事シテイル場合ジャナインダ。紫電(しでん)。」コトッコトッと音を立てながら歩き、こちらにやってきた1体の人形。「ソノ者ハ連レカ。」「アァ、ソウダ。自分達ヲ選ンダゴ主人様サ。」そう陽炎が言うと、紫電とか言う人形は口を上下にカタカタと動かし、微笑した。「陽炎トハ、戦闘ヲ交エタクナイナ。遣イガイルダケデ、カナリ違ッテクルカラナ。」遣いというのは、人形を操る人のことだ。「ン?オ前、遣イガイツモト違ウジャネェカ。」「悪イカ?」「悪イモ何モ、マタ最初カラスタートサセルノカ。マァ、俺ハモウゴメンダナ、束縛サレテルミタイデ。」と、彼らの話が十数分間続き、けりがついたところで、紫電は消えた。「でも、本当にこんなところあったんだねぇ。びっくりしたよ。」と、剣吾は、少し狭い部屋の壁をコンコンと叩いてみる。音が幾度となく響き渡り、冷たい鉄板の温度が、音と比例して身体に浸透する。「サテ、練習ヲ始メヨウカ。」人形達が各別々に動き始めると、奥から等身大のわら人形を引っ張り出してきた。「コイツハソコラノ小サイワラ人形トハ格ガ違ウ。燃ヤサナイ限リハ、ホボ永久的ニソノ姿ヲ保チ続ケル。練習相手ニハモッテコイノ相手ダ。」特定位置に設置し、命狩が和希に近づくと、「マズハ、俺ガサッキ出シタ『烈式・時雨雹打』ノ練習ダ。コレハ殺戮人形ノ基本的ナ技ノ一種ダカラ、早ク覚エテオキタイモノダ。」そういって、最初に武術の技の稽古が始まるのであった。
2007.07.14
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彼の名は、三八九 聖(さばく きよし)。20代後半の独身。職業はオカルト作家という微妙な人であるが、評判は悪い訳でもなく、性格も悪くない。剣吾達にもいろいろと世話をしてくれる優しい人だ。「普通、マリオネットに刃なんか仕込んでないし、テグスもこのマリオネットから放出されたものだろう。誰かに操られている訳でもなく、機械的に動かされていたわけでもない・・・・・・。」ふと葵が恐々マリオネットの部品を拾うと、あることに気付いた。「あれ・・・・・・マリオネットに、指輪・・・・・・?」蝶番(ちょうつがい)が仕込まれた左太股の部品と見られる所から、小指にはめるものなのだろうか、小さめの指輪が出現した。「それをはめると、人形が操れる・・・・・・なんてね!」和希が冗談半分で言っている間に、葵がその指輪を小指にはめていた。するとどうだろう。葵が持っている指輪の入っていた太股の部品が手から離れ、バラバラになっているマリオネットの部品が掻き集められている所から十数個の部品が宙を舞い、やがて1体のマリオネットが元の姿に戻った。「あら、これ私が使ってたマリオネット。すっかり元通りになっちゃった。」その姿を見た聖は奇声を上げながら部屋を出て行った。オカルトのネタが思いついたらしい。聖はこういうことに敏感で、性格がガラッと変わる。「コンニチハ・・・・・・。」「わっ!喋った?!」剣吾が驚く様子を見ると、そのマリオネットは話し始める。「イキナリ壊スナンテ、ナカナカ人間モヒドイ事スルンデスネ。アタシノ名前ハ蔀(しとみ)。人形種ハ偵察人形。マタノ名ヲ『スパイドール』ッテイウンヨ。」葵がヒクヒクしながら聞いてると、その茜とか言うマリオネットは、他のバラバラになった2体のマリオネットを見てびっくり。「ナ、ナンテコトスルノヨ!オトコ2人ガバラバラジャナイ!ホラ、アタシト同ジヨウニシテ、アノ2人モ元ニ戻シテヨ!」その言葉に剣吾と和希は驚き、辺りに蝶番の付いた部品がないか探した。「おっ、あったあった。これだな。」和希がその部品を開けると、やはり指輪が。この指輪は中指に付けるのが良さそうだった為、和希は中指に装着した。すると前と同様部品が集められ、また1体のマリオネットが元の姿に戻った。「フウ・・・・・・ヤレヤレダナ。・・・・・・ン?オ前ガ俺ノゴ主人様ッテ訳カ?マァイイダロウ。俺ノ名ハ命狩(めいが)。人形種は殺戮人形。マタノ名ヲ『キラードール』トイウ。」そう説明してる間に、剣吾も指輪を発見し、薬指に装着。残りの部品が宙を舞い、3体目のマリオネットが完成した。「オヤ、ハジメマシテ!僕ノ名ハ陽炎(かげろう)。アナタガ新シイゴ主人様デスネ?ヨロシクデス!」どうやら、持ち主と人形の性格がよく似るようだ。「チナミニ、自分ノ人形種ハ暗殺人形。『アサシンドール』デス。」3体の人形をよく見ると、繋ぎ目が消えている。見た目は人間そっくりで、口調がおかしい所以外は、普通の人間と瓜二つであった。「サテ、アタシラヲ覚マシテクレタコトニハ礼ヲ言イマスワ。ホンマ、アリガトサン。ホヤケド、アンタラニハチョイトシタ『シケン』ッテノヲ受ケテモラワナ、アカンノヤ。『人形遣いとして』ノナ。」蔀の言葉を聞いて、和希が反応した。「ちょ、ちょっと待てよ。・・・・・・何?『人形遣い』としての試験って。」その一言を聞いた3体は動揺し、陽炎が答えた。「エッ、貴方達ハ『人形遣い』ニナリタクテ僕達ヲ覚マシタンジャナイノデスカ?」こちらにとってはよく分からない発言に、あたふたするばかり。「マァ、俺達ヲ覚マシテシマッタコトハ、ショウガナイ。『人形遣い』ニナッテモラッタ方ガ話ガ早ソウダ。既ニオ前達ハ俺達ヲ操ル為ノ『リパルリング』ヲ装備シテシマッテイル。ソノ指輪ハ、「死ぬまで」外ス事ハ出来ナイダロウ。コレカラ、スグ近クノ駅ノプラットホームニ来テモラオウ。ソコデ、『午後5時23分に3番線から来る【葬謁知高鋼車(そうえつちだかこうしゃ)】』トイウモノニ乗ッテモラウ。一般ノ人間ハ、ソノ電車ハ見エナイ。一応無料デ通過デキルヨウニシテオイテヤロウ。」命狩はそう言い伝えると、その場に座った。「一ツ聞クガ、オ前達本当ニ何モ知ラナインダナ?」剣吾たちが頷くと、命狩や蔀、陽炎が自分の持ち主の前に立った。「ンジャァ、5時23分ガクルマデ、僕達ノコトヲ少シ学ンデオイタ方ガイイネ。チョット練習シニ行コウカ!」3体のマリオネットは、それぞれの主の体に装備された。命狩は和希の左肩、蔀は右膝、陽炎は左手に。(ソレデハ、イツモ行ッテイル学校ヘ!)剣吾達は自転車に跨(またが)り、学校へと足を運んだ。
2007.04.07
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冬の早朝。日差しが緩(ゆる)く、まだ寝たいときにこそやってくる時間だ。剣吾は今15歳。両親は次の世界に旅立ち、寂しく過ごしているが、その寂しさを消し飛ばしてくれるメンバーがいる。葵や和希も、もう両親はいない。なので、3人同居して、仲良く生活している。生活資金は、住んでいるアパートの住民の人達に貸してもらっている。大家さんも優しく、周りの住民の人も優しいからだ。もちろん家賃は0円。受験生になり、早半年が過ぎ去った。今は冬休みで、勉強の真っ最中な3人だが、最近3人とも『マリオネット』にはまっている。時々押し入れに入っている3体のマリオネットで遊ぶのだが、最近夜になると、押入れからカタカタという音が聞こえ、怖さに震える毎日が続いていた。この3体のマリオネットは、学校から程近いゴミステーションに3体捨ててあったもので、恐らく捨てた人もこの音で怖さを覚え、捨てたに違いないと最近思い始めた信吾達だった。ある日、3人で買い物に行った。先に自分のアパートの扉の前に来た葵は、その扉をあけて悲鳴を上げた。剣吾や和希が駆けつけると、3体のマリオネットが、立っていた。「カタカタカタカタカタカタ・・・・・・」葵は扉をはさんで怯えたままだ。「ど、どうした葵。この人形自分の足で立ってるぜ?ここは驚く所だろ。」和希が軽々しく言うと、葵はいつもの元気が吹き飛んでいて、引きつっている。「お、お、驚くって・・・・・・あんた達さ、よくそんな人形の前で立っていられるわね。マ、マリオネットはねぇ、う、動かない程度が丁度いいのよ・・・・・・。」そう言い切ると、和希が呆れて部屋の中に入った。「ちょ・・・・・・和希、それ~・・・・・・なんか危なくないかい?」剣吾が促すと、葵は激しく首を縦に振っている。しかし、和希の返事がない。「か・・・・・・和希・・・・・・?」返事はない。「和希!大丈夫か?!」ドアを剣吾が激しく叩くが、いつの間にか鍵が掛かっている。葵はもう半泣き状態に陥っている。口が聞けなくなってしまったようだ。そうすると、隣に住んでいた若い男の人が気付き、部屋から出てきた。「剣吾君?一体何が・・・・・・って葵ちゃんまで。どうしたんだ?」剣吾が短く事情を説明すると、その男の人は驚いて、近くの鉄鋼場から鉄パイプの尖ったものを数本取ってきて、ドアをこじ開けようとしていた。その騒ぎで大家さんも気付き、ドアを強行突破し、3体のマリオネットと和希のいる部屋へと侵入していった。「かっ・・・・・・和希・・・・・・。おい!和希!大丈夫か?!」和希は3体のマリオネットを操るためのテグスのような糸で縛られており、天井から吊り下げられていた。3体のマリオネットからは刃が和希に向かって突き出ていた。「モゴ?!ンン~ッ!!(剣吾?!葵~っ!!)」僕は台所の包丁を持ち出し、急いで吊るしているテグスを切断し、葵と男の人、大家さんは、それぞれ各1体ずつマリオネットをバラバラにしていった。「うぅ~・・・・・・ゴホッゴホッ・・・・・・」巻かれていたものを全部取り除くと、和希は汗をたくさん流していた。相当焦っていたらしい。「ハァ・・・・・・ビックリした。入った途端にグルグル巻きにさせられるんだもの。焦った焦った。」そう和希がいいながら微笑していた。3体のマリオネットはバラバラになったまま。動く気配もない。「このマリオネット・・・・・・ただの遊び道具じゃないな。」男の人がそう述べる。
2007.03.19
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皆は、人形遣いという者を知っているだろうか。その者は文字通り、人形を操り、物事をこなす人物だ。しかし、この現代に至った今、とある少年少女達が、この『3体の人形』に手をつけてしまい、ある時『人形遣い』と化してしまった。この物語の主人公は3人いる。真面目な人で、何もかも忠誠にこなす彼の名は、日々久保 剣吾(ひがくぼ けんご)。興味津々な事柄が耐えなくて、好奇心旺盛な彼女の名は、十二神島 葵(おつるい あおい)。いつもは元気だが、ある事に集中すると人柄が変わる彼の名は、一尺八寸 和希(かまつか かずき)。この3名が、人形遣いとして目覚める・・・・・・。
2007.03.19
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