Open RAN、5G、AIの導入は、通信事業者が単独で進められるものではありません。通信ソフトウェアだけでなく、データセンター、光ファイバー、電力、システム統合、運用人材、セキュリティまで一体で整える必要があるからです。楽天シンフォニーが中東・アフリカで拡大しているパートナープログラムは、世界共通の技術と地域に根差した実行力を組み合わせ、通信インフラを共同で構築する取り組みです。
2026年3月2日から5日まで、スペイン・バルセロナのFira Gran Viaで開催されたMWC Barcelona 2026では、楽天シンフォニーのCorporate Communications DirectorであるJames Dartnell氏の進行により、顧客とパートナーを交えたパネルディスカッションが行われました。登壇したのは、Telkom KenyaのCOOであるAli Kosi氏、データセンター事業者RadoreのCEOであるIsmail Ozeren氏、コンサルティングやシステム統合を担うOdineのChief Growth OfficerであるTarkan Alagöz氏、楽天シンフォニーのMEA地域営業責任者であるShadi Sayed氏です。
Open RANや低遅延サービスを地域で展開する上で、エッジデータセンターは重要な役割を担います。RadoreのOzeren氏によると、データセンターに対する顧客の要望は、サーバーを設置するスペースと電力の確保から、接続性と迅速な計算資源の展開へ移っています。エッジデータセンターは通信の遅延を抑えるだけでなく、新サービスを短期間で開始するための拠点になります。一方、既存ネットワークを運用する通信事業者は、すべての設備を一度にOpen RANへ置き換えることができません。OdineのAlagöz氏は、適切な技術を選び、限定された地域や用途で検証し、既存設備との接続、監視、障害対応を確認しながら対象を広げる段階的な移行計画が必要だと説明しました。また、プロジェクトの開始から展開完了まで関与する社内責任者を置き、通信事業者自身が移行の目的と優先順位を管理することも重要です。その先にあるのが、回線を提供するだけの「接続性」から、AIによって状況を把握し、最適化できる「知性化」されたネットワークへの転換です。
Open RANやAIの成果は、導入した基地局数や自動化機能の数だけでは判断できません。展開期間、消費電力、現地出動回数、運用人員、障害件数、復旧時間がどれだけ改善し、それが電力費や人件費の削減、新サービスの早期投入、顧客獲得、解約率の改善、売上増加へどうつながったかを測る必要があります。規模で勝てなくても、変化の速さでは戦えます。Telkom Kenyaのような事業者にとって、展開速度の向上は、大手との資本力の差を補う経営戦略になり得ます。ただし、短縮した時間や生み出した人員を新たな価値創出へ振り向けなければ、利益改善にはつながりません。楽天シンフォニーがこの協業モデルをほかの地域へ広げるには、設計、検証、運用、障害対応の方法を地域パートナーと共有・標準化し、それぞれの地域条件に合わせて再構成できる仕組みを整える必要があります。協業の最終的な成果は、地域のパートナーが次のネットワークを自ら構築し、運用し、改善できるようになることです。障害や更新のたびにグローバルベンダーの介入を必要とするのであれば、依存先が従来のベンダーから新しい企業へ変わっただけになりかねません。技術と運用の知識が地域に残り、次の案件へ引き継がれて初めて、オープン化は地域の自立性につながります。最先端の通信網を支えるのは、ソフトウェアだけではありません。最後にものをいうのは、現場を知る企業と人のつながりです。最終的に問われるのは、Open RANを導入したかではなく、協業によって持続可能な通信インフラと事業利益を生み出せたかどうかです。