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日本では、2024年度から高等教育の修学支援新制度が拡充される予定だ。この制度では、中間所得層の多子世帯や私立の理工農系学生にも授業料の減免や給付型奨学金の支給が行われる。この制度の目的は、少子化対策や人材育成のために、高等教育への進学を促すことだ。しかし、この制度は本当に教育格差を解消する効果があるのだろうか。ここでは、3つのデータをもとに、この問題について考えてみよう。
1. 住民税非課税世帯の進学率の上昇
まず、現行の修学支援新制度が始まった2020年度から、住民税非課税世帯の高等教育進学率が上昇したことを見てみよう。文科省によると、2018年度の進学率は40.4%だったが、2020年度は51.2%、2021年度は54.3%と上昇した1。これは、授業料や生活費が実質的に無償化されたことで、経済的な理由で進学をあきらめていた学生が増えたことを示している。このデータから、低所得層の教育機会の拡大には一定の効果があったと言えるだろう。
2. 中間所得層の多子世帯の進学率の低さ
次に、中間所得層の多子世帯の進学率の低さに目を向けてみよう。文科省の調査によると、2019年度の高校卒業生の進学率は、世帯年収が600万円未満の場合、子供の数が多いほど低くなっている2。例えば、4人世帯で年収が400万円から500万円の場合、子供が1人の場合の進学率は63.6%だが、子供が3人の場合は47.9%に下がる。このことは、中間所得層の多子世帯では、子供の教育費用の負担が重くなり、進学を断念するケースが多いことを示している。このデータから、中間所得層の多子世帯の教育機会の拡大にはまだ課題があると言えるだろう。
3. 理工農系学生の進学率の偏り
最後に、理工農系学生の進学率の偏りに注目してみよう。文科省の調査によると、2019年度の高校卒業生の進学率は、文系と理工農系では大きな差がある2。文系では、世帯年収が400万円を超えると、収入が増えても進学率は変わらない。一方、理工農系では、収入に比例して進学率が高くなる。例えば、4人世帯で年収が600万円から700万円の場合、文系の進学率は58.9%だが、理工農系の進学率は73.6%になる。このことは、理工農系の学費が文系よりも高いことや、理工農系の人材が社会で求められていることが影響していると考えられる。このデータから、理工農系の教育機会の公平化には努力が必要であると言えるだろう。
まとめ
以上の3つのデータを見てみると、多子世帯の大学授業料無償化は、日本の教育格差を解消するという目的に沿っていると言える。低所得層の進学率の上昇、中間所得層の多子世帯の進学率の低さ、理工農系学生の進学率の偏りという3つの課題に対して、それぞれ支援の対象や額を調整することで、高等教育へのアクセスを広げることができると期待される。もちろん、この制度だけで教育格差がなくなるわけではない。高等教育の質や多様性、就職やキャリアの支援など、他の要素も重要である。しかし、この制度は、少子化や人材不足という社会的な課題に対応するために、教育の機会均等を推進する一歩となると言えるだろう。
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