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ケース1
校長夫人
ご亭主は亡くなられているが、寡黙な方だったようだ。
相当の期間一人身で過ごされていたが、婦人は現在老人施設に入られている。
ミス○○と思えるほどの長身・美貌の女性でボランティアなどに励まれていたが、家事は不得手の様である。
彼女の長男が『お袋の味』と問われて、逡巡の後『キャベツの千切り』と答えたと聞いた。
ボランティアも家事から逃れる理由からの様で、校長夫人・地方の名士としてのプライドは高いが、夫君の実家ばかりか姉妹とも不仲であるから家庭人としては足りぬところのある人物の様である。
長男は大卒サラリーマンで高卒の妻を得て、ふたりの娘さんがいる。
次男は大学中退の自営業者で、資産家の実家を持つ大卒の妻を得、ひとり息子を持つ。
共に実家を離れて暮らしている。
婦人は以前から長男との同居を希望していた。
長男は、嫁姑に確執があることから、定年退職後も帰郷の意思はなかった。
長男のつまは、嫁としては随分な目にあったようだ。
次男の妻は、夫人から褒められる嫁ではあったが、同居の意思は少しもなかった。
次男も押して同居する意思はないようだ。
次男は事業が思わしくないこともあって時折帰省して婦人の面倒を看ていたようだ。
長男は、次男からの要請もあって交代で帰省していた。
ひとり住まいが出来ず、同居もあり得ないことから施設に入居することとなったが、婦人には家とわずかな貯金しかなかった。
誰もが不思議に思うほどに蓄えがなかった。
どうやら浪費家であったようだ。
台所を狭く改造したり、ひとり住まいなのに各部屋にエアコンを付けたり、大画面のTVを買い求めるなど、他人のおだてに乗った様子が窺えるようだ。
『リホーム詐欺』に掛かったのではと、親類筋に評されている。
また、次男にだけは、旅費などを渡していたことから、事業のための金も渡っているのではと推測もされる。
寡黙な亭主と良い息子に囲まれ『お姫様』状態の夫人は、家事不得意も許容されたのであろう。
甘やかされた妻・母であったのだろう。
ふたりの息子を平等に扱う度量はなかったようだ。出来の悪い次男への肩入れが結果としてあったようだ。
感謝の念がない人であったから嫁ばかりか孫に慕われることもなく、また息子たちは母親よりも妻子を選んだようだ。
施設に必要な掛かりが年金をオーバーしていることから、わずかな貯金が底をつけば家も手放すことになりそうだという。
施設に入った今も校長婦人然として振る舞い、好まぬ人たちも周囲にいるものと推測される。