DarkLily ~魂のページ~

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向こう側へ



「あっ今、通り過ぎました。シェリルさんの向かい側です。」

颯爽と走る姿を思わず見送ってしまい、慌てて小屋の陰から道まで出張る。

アルロスさんを案内しながら、もう一人の仲間の方に目を移す。

見逃しても無理からぬこと。

積み上げられた箱と壁との隙間には、すっかりジャストフィットしているESTIMAさんの姿があった。


「はまった、うごけない。」

今よりも少し前、その報を受け駆けつける。

なぜ、こんなことに。

胸に去来する思いがあった。

あなたは、いったいどこへ行くつもりだったのでしょう・・・

ふつう、そこにははまりませんよ。

「わぁ、本とだ、はまってる!」

騒ぎを聞きつけ、あらわれたMALさん、さすが先生すばやいお越しです。

「ゲースクは?」

「・・・使えない。」

二人が話している間、私も入れるかなと、箱を駆け上がり、侵入を試みる。

やはり!

ここは、ESTIMAさん専用でした。

ごめんなさい、結果、ESTIMAさんの頭をぐりぐり踏みつける。

その周りを走り回る先生が、なんかめちゃめちゃ嬉しそう。


「エサを与えないでください。」

なんとも心憎いオークの文字は、Vさんです。

私は十分堪能したので、下でたたずむ、Vさんと特等席を交替。

「重くないの?」

「首が痛いー」

「体重729Kgです。」

「うわ何者!」

今クロノスに、鋼の体を持つ戦士が誕生したもよう。


「よし、記念撮影をしよう。」

最後に、撮影会を実行。

モデルさん達、はい笑って。

「それじゃあ、また。」

二人が去った、その後でした、走り抜けるアルロスさんの姿を見かけたのは。


「走ってみてください。」

あ、ESTIMAさんが、もがいてる、もがいてる。

「うーん、後はどうしたらいいか・・・。」

その様子を見ていて、私は思っていました。

ESTIMAさんの声を聞き、すわ一大事とはせ参じた仲間たち。

その中で、ホントに助けるために来たのは、アルロスさん、あなただけではないかと。

「そうだ!」

「記念撮影をしましょう。」


「いいものを見せてもらいました。」

アルロスさんも去り、私は、ESTIMAさんに、話しかけた。

「見物料は1クロです。」

「ほとんど、お賽銭ですね。」

「ウム、悔い改めよ。」

「おー、お告げじゃ、お告げがあったぞ。」

「神託は、10クロじゃ。」

「皆のもの神様は、さらなる貢物を御所望だ。」

「貢物は黒装備が良いぞ。」

「ははー。」

「ところで、なぜそんなことになってしまったんですか?」

「屋根に上りたかったんです。そしたら、はまちゃって。」

それを聞いた時、私は、なんだか懐かしい思いがしました。

端までいけると思った堤防、回る滑車に手を伸ばした時、どうなるかなんて考えなかったあの頃。

「そうでしたか、屋根の上に。」

「はい。」

「それじゃ、そろそろ落ちますね。」

「はい、またです。」

「またです。」

ESTIMAさんがいなくなった隙間を、しばらくぼんやりと眺める。

屋根の上か、気持ちいいかもしれないなぁ。


「はまったー、ローリンの傍です。」

「おおぅ、なぜ、こんなところに!」

「とおりぬけようと思って。」

なんだか、猫みたいな人です。

あれ以来、クロノスのパトロールが日課になってしまいましたよ。

ESTIMAさん、はまってないかなー。


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