・戸田大介の『継続する技術』は、「なぜ人は続けられないのか」「どうすれば続けられるのか」という普遍的なテーマを、行動科学と心理学の視点から解き明かした実践的指南書である。著者はメンタルトレーナーとして数多くのビジネスパーソンを支援してきた人物であり、本書では“意志の強さ”ではなく“仕組みの設計”によって継続を実現する方法を明快に説いている。
・本書の出発点は、「人は決して意志が弱いから続かないのではない」という認識にある。著者によれば、継続を阻むのは“人間の仕組み”そのもの――脳が変化を避け、快楽を優先するという生理的特性であり、それを理解しないまま努力だけで続けようとすることこそ、失敗の原因だと指摘する。本書では、継続を「意志」ではなく「技術」として捉え直し、その技術を支える 5 つの原則を提示する。
・継続の 5 つの技術
1. 「行動を最小化する」技術 続かない最大の理由は、最初からハードルを上げすぎることにある。たとえば「毎日 1 時間勉強する」ではなく、「 1 分だけ本を開く」といった “ 極小の一歩 ” を設計することで、脳が抵抗を感じない状態をつくる。
2. 「きっかけをデザインする」技術 行動は意志ではなくトリガー(きっかけ)によって起動される。著者は “ 環境の仕掛け化 ” を提案する。朝の机にノートを置く、運動靴を玄関に出しておく ―― こうした「行動が始まる構造」を作ることが、継続の第一歩になる。
3. 「報酬を内側に持つ」技術 外的報酬(お金・称賛)だけに依存すると、刺激が切れた瞬間に行動が止まる。行動そのものに小さな快感を見出す “ 内発的動機 ” を育てることで、継続の燃料を自分の中に持つことができる。
4. 「失敗を織り込む」技術 人は失敗すると「自分には向いていない」と考えがちだが、著者はむしろ “ 継続のプロセスに失敗を含める ” べきだと説く。 1 日サボってもゼロではなく「 90 %の成功」と捉える思考法が、長期的な継続を可能にする。
5. 「フィードバックをループ化する」技術 継続は “ 成果 ” によって強化される。記録や可視化を通じて、小さな進歩を認識することで行動の快感が増幅される。たとえばアプリでの記録や習慣トラッカーなど、行動の「見える化」が継続の加速装置となる。
・継続の本質は「仕組み化」
戸田は一貫して「人間の意志は信用するな」と主張する。意志ではなく、環境・行動設計・心理の流れを組み合わせて“継続の仕組み”を構築することが肝要だ。この考えは、ビジネスの習慣形成にも直結する。例えば、毎日の報告・読書・勉強・健康維持といった行動を、感情ではなくシステムで動かすことで、安定した成果を生み出せる。著者はこれを「継続のオートメーション化」と呼び、人が“考えなくても続く”状態をゴールとする。
・ 30 〜 40 代の働き盛り世代にとって、「継続の技術」は自己変革の実践書として響く。キャリアの中盤では、努力よりも “ 仕組み ” が成果を左右するフェーズに入る。成長や学習の継続が差を生む時代において、感情に依存しない行動設計は最強の武器になる。本書が教えるのは、「やる気を出す」ではなく、「やらざるを得ない環境をデザインする」こと。継続とは、自分の行動を他人事のように仕組み化する知的な戦略である。
・『継続する技術』は、根性論を捨て、科学的・構造的に「続ける力」を身につけるための実践書だ。継続は才能ではなく、再現可能なスキルである。戸田大介はそのスキルを、心理学と行動科学の融合によって“誰でも続けられる技術”へと昇華した。行動を変える者だけが、未来を変える――本書の核心はそこにある。
継続する技術 [ 戸田大介 ]
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