a Cafe of Passion! ~情熱カフェ~
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鮨職人・荒木水都弘さん38歳。今、最も予約の取れない鮨屋のひとつです。朝開店時には既に「満員御礼」の案内が掲げられています。* * *通常、鮨職人といえば、中卒くらいで修行に入るようなイメージがあります。ですが、荒木さんのは、ホテルのレストランやとんかつ屋で修行を積んだ後、25歳の時に鮨に出会います。それからはただ鮨を握ることだけに自分の人生を注ぎます。「鮨が恋人ですよ。」そう、話す荒木を奥さんは「変な人でしょ。」と言いながらも優しく見守っていました。「お客さんのこなかった昔も、忙しい今も私が頑張って支えてあげないと」奥さんは常々そう言ってるそうです。* * *確かに今は、「予約をとるのが難しい鮨屋」として名前が通っていますが、決して最初からそうだった訳ではありません。一日一人のお客さんの時もあったそうです。その時期を乗り越え、今の鮨屋「あら輝」があるのです。(この辺り成長曲線ですね)* * *荒木さんは修行時代を新津さんの下で過ごします。新津さんは、多くの文豪が愛し、現天皇陛下が皇太子時代にも食されたのが新津さんのお鮨でした。新津さん自身はもう握ることはないのですが、今でも月1~2回荒木さんの鮨を食べに来ては叱咤激励する荒木さんにとって大切な師匠です。「師匠は玉子を5回焼いたら5回とも均一の色で焼きますよ。私の場合は全部違います。本当にまだまだです。」そんな荒木さんを新津さんは、「あいつはまじめなんですよ。本当に。けど、あいつはそのうち物になりますよ。」最後の弟子とも言える荒木さんに新津さんは自分の全てを伝えようとしているのかもしれません。* * *荒木さんの一番の楽しみは、週に1回愛娘に会うことです。娘さんを奥さんの実家に預けて、荒木さんは店を切り盛りしています。毎週休前日となる、火曜日深夜に車を走らせて、娘さんのもとに向かいます。荒木さんの血を引いているからか、娘さんは4歳ながら寂しさを表に見せず、気丈に振舞って元気いっぱいなところを見せてくれます。「家族と過ごす時間があるから頑張れる。」荒木さんを支えているのは、間違いなく奥さんであり、娘さんなのです。* * *久々に師匠新津さんが、荒木さんの鮨を食べに来ました。荒木さんが一番得意としているのは、マグロです。必ず近海物を仕入れ、決して養殖や冷凍物は使いません。荒木さんは、師匠に向けて一番得意のマグロを握ります。ですが、師匠は一向に荒木さんの鮨に手をつけようとしないで、昔話を始めてしまいます。出された鮨をすぐ食べることが、鮨職人に対する気遣いであるにも関わらず…。* * *そしてようやく、新津さんが鮨の話を始めました。「小さいね。俺はもっと大きな物を握ってたよ。」新津さんはそう話しました。「オレの切りつけ方と違う。凄くきれいな切り方だ。だが、鮨できれいなのは至ってノーマルなんだ。きれいに作るだけなら主婦でもできるよ。お客さんはお金を払って食べに来てくれる訳だろ。だとするとそれなりの(オリジナルの)物を出さないとお客さんは喜ばないと思うけどね。」「こいつはまじめなんですよ。そのまじめさが鮨に出てる。」お前はもっと高い次元に来れるはずだ。型はもうできているんだ。今はもうそれを破る時期だ。師匠の言葉はそう言ってる様に聞こえました。(守・破・離ですね。)荒木さんの目からは涙があふれていました。「ありがとうございました。」そう言いながら頭を下げ、荒木さんは自分が出した鮨をカウンターから下げました。* * *荒木さんの鮨は1回15,000円の決まったコースです。荒木さんはその価格についてこう言います。「1回の食事で15,000円って決して安くないですよね。僕自身でもまだ自分の値段を決めかねているんですよ。」マスコミは、荒木さんのことを”今が旬”と評します。ですが、今本当の荒木さんは一流になるものだけが体験する”地獄”を見ている段階です。「守」の時期を過ぎ、「破」の頃を迎えようとしています。「ずっとこのままやると思います。いえやりますよ。」荒木さんは鮨職人としてまだまだ熟成段階に入ったばかり。本当の”旬”はこれからなのではないでしょうか。 * * *【今日の情熱方程式】・「守」の頃はコツコツと地道にやらなくてはいけません。いきなり結果は出ないのですから。・叱咤激励してくれる師匠を持ちましょう。師匠の言葉は時に厳しく聞こえるかもしれません。ですが、それは期待の裏返しです。* * *セミナーのレポートはまた今日から書きますね。最近食事にお金をかけることが多くなってきました。(食べる料が増えたとかではなく…(^^;;)食事にお金をかけるのって贅沢ですが、凄く幸せな気分になれますね~♪「環境が地位を作る」も多少意識しているんでけどね。
2004年12月19日
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