EMILIVE(feel relaxed)

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4 JUNE 前編




10:45 pm

ヤツが出ました。たった今。
思考停止。動作停止。
バスルームをそっと閉めてフロントへTEL。
「japanese speaker please」と言ってもいないと言われる。
日本人スタッフありと書いてあったのに、一人も見かけない。
仕方ないので、発音したくもない単語を口にした。
コックローチがいるんですけど・・・


すぐに男の人が来てくれた。
「クリネックスある?」と聞かれ渡すと、足でふんずけてトイレに流した。
ヒーロー!!
チップあげちゃったよ。
しかし、ドアは閉めちゃいかんと思って慌ててドアを開ける。
ハワイ顔のかっこよい人だった。
うううー、こわかったよお。ハワイのコックローチも怖いよう。
でも日本とちょっと違う・・。外人顔。


i hate him、とか言ってしまった。


+++


では、朝からふりかえります。


今日は良い日でした。


結局朝まで眠れず、気を失った100分だけ眠ったのみ。
6時には起き出す。
こっちはすべてのカウンターが高すぎ。顔、うまく洗えない。
16Fのベランダで、街を見下ろして朝ご飯食べる。
(ちなみに泊まったのはwaikiki gateway hotelという、ワイキキのはしっこにある安いホテルですね)
甘~いデニッシュとコナコーヒー。無理矢理つめこんで出発。


7時にシェラトン内、旅行会社の受付カウンターへ。
金髪の、きれいな日本語を話す女性が対応してくれた。
日本に住んでいたんだって。いきなり仕事の話などする。
女の人は、いろいろやってみるのがいいんじゃない、と言われる。
「ライターじゃなくて、全く別のこと、旅行が好きならそういうのは?」
とか、いきなり核心をついた発言。
「この小さい島にいると、もう休みの日に行くところもなくなっちゃうのよ。
トレッキングもしたし、マリンスポーツもしたけど疲れちゃうから、結局友人と会ったりね。」
北の方(north shore)や西の方に一人で行こうと思っている、と話すと反対された。
「危ない地域(マカハetc)はアルカホリック、ドラックホリックな人たちが多くて、
日本人の女の子を見るとまずお金、次にレイプ、って考えるから、絶対一人でいっちゃダメよ」って。
みんなグルになって、見て見ぬ振りするんだから、わたしだって行かないわよ、って。
わたしも、じゃあ行きません、って言った。


そうか、ハワイにもそんな地域があるのか・・。
親切で気持ちの良い対応。日本人以外でこんなにきめ細やかな対応をしてくれる人がいるとは。
日本企業の方がお給料がいいから、働いてるんだって。
おばさんが日本にいて、厳しい人で、きれいな日本語を話すようにと言われたんだって。
とてもbeautifulなひとでした。


+++


ジャングルハイキングツアーの人が迎えにきた。
このツアーには行きたくて、日本でも申し込んだけど、
まだ人数が集まってないので現地申し込みをしてくれと言われたのだ。
ガイドさんは、ぼうず頭のサングラスを頭にのせたお兄さんで背が高くて怖そう。
「一人できたんですか?」と聞かれ
「そうなんです、昨日着いたばかりで、全然わかんなくてとりあえずこれに申し込んで・・」
「ふつうは、とりあえず海に行くんですけどねー」
と、にこっと笑ってくれたらすごく優しそうで「はっ!これはよい予感」と思った。


次々にホテルを廻り、参加者を拾っていく。
みんな2人組で、カップルカップルカップル女同士わたしガイド見習い氏の10人+ガイドさん。
車の中にゆるーいハワイ音楽(?)が、静かに流れている。
寝不足だけどたのしい。
アラワイ運河を越えて、山方面へ。
運転も大らかでジェントルでした。
ガイドさんはマサさん。日本人だってわかった。感覚がまったく同じだ。


登山口まで車で登っていく。山道は曲がりくねって、急勾配。
降りると、リュックと雨具とボトルウォーターと杖をもらう。
虫よけスプレーをして、いざ。
山の名は、「プウ・オヒア」。オヒア(木の名前)の山という意味だそうです。
道中わたしは後ろから二番目をゆく。ガイド見習い氏は最後尾。
杖ついて歩く。わくわくする。
緑の匂いをかいで、でも日本の山とは全く違う植物の道をゆく。
木に絡まっていくバニアンツリー、何百年かかけて元の木を乗っ取ってしまうんだって。
マンゴーの実や、小さいイチジクや、シナモンの皮、葉、木いちご、自生するコナコーヒー、
バナナの木、男性のレイに使われるブルーの実(乾燥すると黒くなる)、
たこの足みたいな花と実(アンブレラツリーまたはオクトパスツリー)、などなど
そういうのに触れ、ときにはいただきながら進む。
鳥の鳴く声は、ハワイ語にそっくりだと思った。


途中、街を遠くに見晴らせるところからbig rainbowが見えた。ユメみたい。


ガイドさんがところどころで立ち止まって、待っていてくれて、最後尾のわたしが行くと目が合う。
あー、お兄さんかっこいい。ほれた。
木の実をでっかいナイフで割ったり、マンゴーを小さいナイフで切り分けてくれたり、
シナモンの葉をくしゃくしゃっと手で揉み潰して渡してくれたり、
わたしは嬉しくてすっかり子ども気分。甘えたい。


道ゆくあいだも、出っ張って倒れている枝をなたで切ったり、
道に生え出たタケノコを抜いたりして(歩く道が狭くならないように)
まるで彼は「森の守り」のように、言葉もなく、すっとそういう行動をする。
それがマサさんの「しごと」の一つなんだ。


園芸にも使われるピンクや赤の花々があるところに差し掛かると、
ホウセンカみたいに実が弾けて種が飛び出す様子を見せてくれた。
「ほんとうはこういうことしちゃいけないんですけどね、ジャングルなのにお花畑になっちゃう」と。
彼は、山が森が自然が本当に好きなんだ。山男、まさに出逢っちゃった。


コア・アカシアの木も見た。その昔、ホクレアのようなカヌーに使われたもの。
アボガドの木の下には、けもの道。いのししの二つ爪の足跡。


マサさんは先生であり、山男であり、賢くて優しくて強くて頼れて、子どもみたいに無垢で
そういう人だと直感で感じる。


休憩をとった森の広場のようなところで、手作りのバナナパウンドケーキと水筒の麦茶。
はぁ・・・奥さんいるのか、と思う。
素敵な夫婦だなぁ。いいなぁ。わたしもそういう風になりたいなぁ。それにはまだ未熟かなぁ。
しかし、この麦茶美味しいなぁ。


その広場で、マサさんがどこかへ消えたと思ったら、「TI(ティー)」の葉をとってきて
昔、人々を導く立場の人がつけたというレイを作ってみせた。
「葉っぱの芯のところを取ります」と、口できーっと芯を噛み取った。かぁっこいい。
それからさらさらっと葉をすいていき、簡単なレイを作って、彼がそれを肩にかけたとたん、
ざあざあざあ って、広場中の木々が音をたてて祝福した。
しんじられる? そうなんだ。
木々が風にざわめいて、彼を称賛した。その姿は王様みたいだった。


わたしはそれを見て涙が出てきた。「自然の声」を聞いたから。
初めての、すごくspiritualな体験だった。
今、思い返したら泣けてきた。
畏れ敬う自然の力に触れて、わたしは生きてるものの一つで、謙虚にただそれを知った。
うれしかった。うれしくて涙が出る。


もちろん、彼自身、そんなこと知って感じているに違いない。
風が吹き抜けたとき、しばし耳を傾けてにっこりしていたからね。
beautiful manですね。やばい、久々に惚れ惚れする人に会ってしまった。


そこから、いよいよ頂上目指していく。全部で600mぐらい登るっていったかな? レジュメ欲しいよ。


竹やぶを抜け、登っていくと、雨が本降りになってきた。
山の上らしく、ぱらつく雨が降ったりやんだりしていたけれど、大粒になった。
みんなポンチョ型の雨具を出して着ることにする。
わたしはリュックを置いて、おたおたやっていたら、マサさんがかぶせてくれて袖のところを留めてくれた。はぁ。


ポンチョのまま山頂へ。雲で何も見えない。ワイキキも海も何も見えない。
誰も記念撮影もしないので、わたしはガイドさんに撮ってもらった。
一枚目。横にいた人のポンチョが風でめくれて映りこむ。
「あっ、いいハプニングですね」と言ってもう一枚。


マサさんは、すべてのハプニング(出来事)をありのままに感じ、受け入れる。
たぶんそういうことなんだ。
雨が降ってきたことも、たのしい巡り合わせなんだ。
わたしは楽しくってたのしくってずっとにこにこしていた。


自然の中にいると、何も文句のつけようがない。雨が降るのも、虹がかかるのも同じ。
大きな包容力の中、わたしたちは、包まれて生きるだけ。
人間同士の世界に戻りたくないって思った。


もう下り。下る。下る。さびしいな。


旅の出逢いと別れは、人生においてよりも鮮やかであっという間だ。
今は泣けてきて仕方ないです。
一人できてよかった、今日はハワイに来て最高に楽しかった。
明日の岬へのハイキングにも誘ってくれたけど、もう予定入れちゃってたから。
マサさん、たぶんだけど30代半ばぐらいかなぁ? 素敵な人だった。
巡り合わせに感謝します。


そうだ、ホクレア号の話も聞いたんだ。航海に出てるらしいって教えてくれた。
潮の満ち干きの関係で、たまにしか現れない島の探査航海中なんだって。
昨日の新聞に載ってたって。当たり前のように、日常会話のようにそんな話ができて楽しかった。


+++


ぬかるみにスニーカーとズボンの裾はべっちょり。13時頃、ワイキキに戻ると変な感じ。
通り道のモスバーガーでご飯食べる。やっぱり美味しくなくて、おえーとなる。
ホテルに戻る途中、一人で歩いている男の子発見。美大生みたいな、ハワイっぽくなーい感じ。
歩く速度が全く一緒だったので、ずーっと隣を歩いていて、お互いものすごく意識してる。
声かけようかなぁ、どうしようかなぁ、と思うが結局かけず。
タイプじゃないんだもん、めんどい、と思ったけど、ホテルのエレベーターに乗った瞬間、
「いや、でも」と引き返したら、やっぱりわたしのホテルの周りうろうろしてたけど、
すでにちょっと遠くへ行ってたのでめんどいので声かけなかった。
旅先での、声のかけ方、誰にも習ってくるの忘れた。これ、大事なポイントですね。


シャワー浴びて休憩。






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