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2015年02月08日
カテゴリ： 陽明学
Photo By Sam Spicer "SamKent22"
其の後の余〔よ〕、肥後にて村井氏の親しく交わりしに、
或る日、村井外より帰り語りしは、
「扨も今日は珍敷墨跡〔めずらしき ぼくせき〕を見たり。
此国の家老何某〔かろう なにがし〕の方〔かた〕へ、近き頃江週より聟養子に見えし有り。
其の方へ用事ありて行〔ゆ〕きて、物語の序〔ついで〕にふと思い出〔い〕でて、
『そこの御里方〔おんさとがた〕に中江藤樹といいし人ありよし、御存知にもや。
其の手跡などは所持し給わずや。』
と語り出でしに、彼の人座を改め、
遠方へかく参るに付きて兼〔かね〕て秘蔵の一軸を出して得させぬ。
御所望なら見せ申すべし』
とて奥に入り、礼服に改め、一軸を携え出でて床にかけ、遙かに引きさがりて拝せられぬ。
尊敬かくばかりなれば、我も手あらい口そそぎなどして拝してやみぬ。
分部侯にありては、畢竟領地の一農夫なるを、かくまで敬せらるる事、
代々賢を愛し徳を敬い給うことも有り難く、
又藤樹先生も真の大儒なることもはじめて知りぬ」
と申されし。
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Last updated
2015年03月03日 21時51分37秒
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