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リンは台所のシンクに寄り掛かると、腕を組み、僕を威圧的に見つめ笑った。「君はどれだけのことを知っているのか?」「……」「まぁ、いいさ」リンはふっと笑うと、シンクの横にあった灰皿を引き寄せ、煙草に手を伸ばした。「ミセス・マッカーシーは、君達とマッカーシー、ヘイワーズ……そしてヒトラー提督との密約を知らんようだな」リンの言葉に僕は思わず息を飲んだ。どこまで知っているんだ……この男は……「人類史上最大にして、最悪の悲劇『ホロコースト』が、同時に人類史上始まって以来の壮大な茶番だったことは、聞き及んでいたかな?」僕の心音は彼に伝わってしまうのではないかと思うほどに、そのリズムが乱れ、喉の奥に突然大きな鉛を飲み込んだような錯覚を覚えた。「君達とマッカーシー家、そしてヘイワーズ家の歴史は、そう、日露戦争にまで遡る……」「アリシアが帰ったと言うのなら、僕も帰らせて頂きます!」「そう言う訳には行かないんだよ、坊や」その場を立ち去ろうドアノブに手を掛けたが、リンの鋭い眼光が僕をその場に立ち竦ませた。リンは煙草の火をつけると、ゆっくりと震える息の合間から煙草の煙を吐き出した。「我々も合衆国も、君やマッカーシーを敵に回すほど愚かではない。だが、君達が約束を守らなければ……どうなるかな?」「僕には何のことだか……あなたが何を言おうとしているのか、さっぱり分かりません」リンはもう一度、ゆっくり煙を吐くと、唇を歪ませた。「君は聞いたはずだ。合衆国に来る前に。君の家で代々伝えられるべき秘密を。行うべき行動を」「僕がここに来たのは大学で勉強するためです。家のことなんか関係ない」リンは僕の反論などお構いなしに、煙草を掌で握り潰し、話を続けた。「ミセス・マッカーシーが、君達の本性を知って正気でいられるかな?」「脅すつもりか?」「ふっ。ようやく、話し合いのテーブルに着く気になったようだな」「彼女に何かあったら……」「僕を八つ裂きにする、か?」「当たらずとも遠からずだ」「面白い。では、そのギリギリのラインでの交渉を我々は楽しむことにしよう」リンは口の端を上げると、右手を差し出してきた。僕はその手を無視すると、窓辺まで歩き、扉を開けた。アリシア、ごめん。僕は君を守りたかった。本当にただ、それだけだった。目を閉じ、息を深く吸い込むと、僕はリンの方に向き直った。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2009.07.22
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「まぁ、そんなに身構えなさんな。腹が空いたろう?用意は出来てる」リン・イーレイは口の端をくっと上げると、テーブルの方を見て顎で杓った。「アリシアはどこにいる?!」僕はリビングに滑り込むと、暖炉脇にある火掻き棒を掴み、リンの喉元に突き付けた。「くっくっ。君もジョージに劣らず、血の気の多いお坊ちゃんだな」「ジョージ?!」僕が一瞬怯んだ隙に、リンは棒を蹴り上げ、落ちてきた棒を空中でキャッチすると、僕の喉元へと突き付けた。「形勢逆転だな。どうする?」僕が答えずに睨みつけると、リンは火掻き棒をクルクルとバトンの様に回し、暖炉の脇に投げた。「ミセス・マッカーシーは家に帰したよ」「えっ!?」「そろそろ約束の鬨が来た」「約束?」「そう。約束だ」リンは暖炉脇にある椅子に腰を下ろすと、両手の指を組み、顎を乗せた。彼は何を言っているんだ?ここは調子を合わせた方が良いのだろうか?それとも、知らないと正直に伝え、その内容を彼から引き出すべきなのか?「もう君を送り込んでいたとは、フジエダも随分、用意が良いな」僕を送り込む……リンの言葉にはっとなって、顔を上げた。僕がアメリカへ来たもうひとつの理由。それを彼が知っているのだとしたら、その理由は……「もう少しで約束の鬨だ。準備に30年、ようやく……」リンの冴え冴えとした笑みを見つめながら、確信した。もう、運命が動き始めてしまったのだ、と。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2009.07.20
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僕は神経を集中させ、回りの微かな音にも気を配りながら、一歩一歩敏子さんの方へと歩を進めた。敏子さんは僕を見上げると、クスリと笑った。『以前は私と同じ位の背だったのに……。もう“少年”なんて言えないわね』敏子さんの笑顔を見ながら、現実感の無い、それでいて例え様のない不安に襲われた僕は彼女の肩を掴み、揺さぶった。『なぜ、あなたがここに!?それに、アリシアはどこに……』ここは間違いなく日本ではなかった。この部屋の窓の向こう側に見えるフォード車とその英字ナンバープレートに一瞬目を止めると、そう確信した。彼女はよろめき、その顔には明らかに困惑の色が浮かんだ。『あんたこそ、どうしてこんなところにいるのよ?』『それはこっちのセリフ……』カタン扉の向こう側からする突然の物音に、僕は敏子さんを床に伏せさせると、扉の横ににじり寄った。『テツヤ?』『しっ!』ノブに手を掛け、ゆっくりと回した。扉の向こう側には誰もいなかった。肩で安堵の息を吐くと、そのまま扉を向こう側へと押した。「おはよう。ようやく起きたようだな、藤枝哲也君」僕は扉の真横に寄り掛かるようにして立っているリン・イーレイと目が合い、身構えた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2009.07.01
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第3章 約束の地へ目を覚ますと、辺りは薄暗い夕闇に包まれていた。「ここは?」ベッドの上だ。体を起こそうとした時、背中に走った痛みに被弾したことを思い出した。「そうだ。僕は……」リン・イーレイからアリシアを奪い、それから……「車に乗って……」ん?乗ったんだっけ?いや、乗ったような気がする??いや、待てよ。でも、運転してない、……ような気がする。僕はここまで思い出してから、全身から血の気が引いた。「アリシア!」ベッドから飛び降りたけれど、引きつるような背中の痛みにその場に蹲った。『無理しちゃだめよ』『え?!』薄闇から聞こえる声に思わず顔を上げた。『ずいぶん、男っぽくなったのね』僕は声のする方に視点を定め身構えた。『誰だ?!』薄明かりが声の主を照らし出し、僕は「あっ」と声を上げた。『お久し振り。随分起きないから心配したわよ』『まさ……か……』数年振りに見る彼女は、以前と変わらず、艶かしい(いや、前よりも一層と言えるかもしれない)微笑みを湛えていた。『敏子さん』『本名で呼ぶの止めてくれないかしら。ダサイったらないわ』相変わらずの彼女の話し振りに、やっぱり、敏子さんだと確信し、辺りを見渡した。ここは日本なのか?いや、アメリカなのか?今まで夢を見ていたのか?それともこれが夢なのか?僕は混乱の中、ベッドから立ち上がった。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2009.06.25
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ようやく第3章に入れます。最近、ちょっとシビアな内容なので書いていて辛いです。基本、コメディが大好きなので。内容は決まっているもののなかなか題名が決まらず、時間が掛かってしまいました。すみません。またシビアな内容の継続になってしまうかもしれませんが、ラスト目指して突っ走ります!
2009.06.25
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「そろそろ時間だな」リンは腕時計に目を落とすと、椅子から立ち上がり、ゆっくりと私の方へと歩いてきた。『リンは危険だ。陸軍士官学校のプロフェッサーというのはあいつの表向きの顔で』ジョージの言葉が再び頭の中で、警鐘を鳴らしている……リンの手が私の方へと伸びた時、咄嗟に目を瞑り、両手を顔の前でクロスさせ身構えた。一瞬の沈黙の後、背後から多くの人々の歓声と高揚した女性の声が聞こえた。「大統領夫妻は、今、ダラスの地に舞い降りました!」何の声かと恐る恐る後方を振り向くと、そこには紙吹雪が舞う中、黒いオープンカーに乗りながら観衆ににこやかに手を振るニコラス・マイヤーズ大統領夫妻の姿がテレビに映し出されていた。リンはコツコツと足音を立てながら、窓際に寄り掛かり、もう一度腕時計に目を落とした。「僕達はヴォーンのような派手な爆殺なんて殺り方は全くもって好まない」リンのピーナッツ・アイが微かに冷笑を浮かべた。「但し、例外はある」「え?」私がリンに目を移すとほぼ同時に、テレビの方からクラッカーを鳴らしたような音が数回聞こえた。悲鳴が聞こえ、テレビの画面が大きく揺れた。大統領夫妻を乗せた車が映し出されたが、大統領は大きく後ろへと仰け反り、夫人の体も車のドアにくの字に折れ、2つの影はそのまま動かなかった。黒づくめの男達が画面の外から集まったかと思うと、大統領を乗せた車を囲い、ピストルを構え、辺りを威嚇した。アナウンサーの言葉にならない声が、今やマイクを通して絶叫となって私の耳に飛び込んできた。リンは煙草を胸ポケットから取り出すと、ライターで火を点け、「あっけないもんだな」と呟き、テレビを消した。「まさか……」「大統領に敬意を表し」リンは敬礼の姿勢を取ると、くくっと愉快そうに喉を鳴らした。「今日はこれから新聞社は号外作りで忙しいぞ。そうだなぁ、さしずめ見出しはこうかな?『ニコラス・マイヤーズ大統領夫妻暗殺』」「あなたは!」「さて」リンは煙草を捩じ消すと、じっと私を見つめた。『あいつは……』ジョージの言葉を頭の中で反芻しながら、椅子から立ち上がり後ずさった。「どうやらすっかりお目覚めされたようだ。ミセス・マッカーシー」「来ないで!」ジョージはあの日……リンと初めて対峙したあの日……リンから私を隠すように背後に庇いながら小さな声で呟いた。『あいつの裏の顔は全世界を統べるチャイニーズ・マフィアの首領だ』 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2009.06.22
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彼女と私の目が合った。と、思ったけれど、彼女は直ぐに「準備は出来ているわ」と言いながら、先生を抱きかかえているリンと一緒に奥へと入って行った。扉が閉まるほんの一瞬、奥に医者らしき白髪の男性が腕を捲り上げている姿が見えた。「どうか、神様」テーブルの上で腕を組み、目を瞑ると扉が開き、リンが出てきた。「大丈夫だよ。あのヤブはもっと酷い状態だったジョージを助けたんだからな」「彼が?」「医師免許はないが、腕はどこの医者よりも確かだ」「免許がないって、お医者様じゃないの?」「正確には、医者だった、かな。剥奪されたんだ20年程前にな」「どうして……」「まぁ、ともかくヤツに任せておけば大丈夫さ。命に別条はないそうだからな」最後のリンの言葉にようやくほっと胸を撫で下ろした。リンはリビングを横切り、冷蔵庫を開けるとコップに水を汲み、私の方へと差し出した。「有り難う……」1口2口と水で口を潤すと、射るような目で私を見ているリンの存在に気付き、息を飲んだ。「さて、と。まずはこれを見て頂きたい、ミセス・マッカーシー」リンは掌から紐の通された穴の開いたコインを取り出すと、時計の振り子のようにユラユラと左右に揺らし始めた。私はそれを見まいと目を背けようとするのに、まるで強い力に引かれるようにコインの動きをおった。「そう……いい子だ」自分の体が風に揺らめく木の葉のように揺れて行く……リンが何かを言っている……暗闇の中で、ジョージが何かを叫んでいる……何?何と言っているの?「アリシア!逃げるんだ!」次の瞬間、光の洪水が押し寄せ、物凄い勢いで、記憶の成層を上へ上へと昇って行った。「ジョージ!」私は目を見開き、立ち上がった。「思い出したかな?ミセス・マッカーシー」「あな……た…は、リン……。リン・イーレイ」「時は、満ちたようだな」リンはコインをテーブルの上に置くと、薄っすらと微笑みを浮かべた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2009.06.20
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しんと静まり返った川面を祈る思いで見つめた。どれくらい経ったのか……静寂を破る水飛沫の音と共に、二つの影が水面に現れた。「先生!」リンは先生の顔を上に向かせ脇で抱えるようにして川を横断し、私のいる川縁を目指して泳いできた。「先生は?!」リンは陸に上がると肩で息をしながら、強く咳き込み、それから深く深呼吸した。そして先生の口元に耳を寄せると、「大丈夫だ。息がある」と額に垂れた前髪を掻き上げた。「良かった。じゃ、すぐに病院に……」立ち上がろうとする私の手を素早くリンが捉えて、首を振った。「病院には戻らない」「そんな!直ぐに先生を診て貰わないと」「戻らない」「ひどいわ!」掴まれた手を振り解こうと体を捩じらせたけれど、リンの腕はびくともしなかった。「医者に診せないとは言っていない」「だって、でも、病院に戻らないって……」「僕達のアジトがこのすぐ近くにある」「僕達って……アジトって……?」私の質問が耳に入らなかったのかリンは先生の脇に肩を入れると、立ち上がろうとした。私は慌てて反対側に回り込み、先生の腕を自分の肩に回して彼の体を支えた。「車で5分とかからない。ヤブだが腕の確かな医者もいるから安心しろ」リンはニッと口の端を上げて笑った。先生を引き摺るようにして、後部座席に乗せると私も滑り込み彼の頭を膝の上に乗せた。リンはふんと鼻を鳴らすと、運転席に乗り込んだ。そして、私から上着を引き取ると、黒いトランシーバーのようなものを取り出した。「ああ。トシコか?これから5分後に客を連れて行く。ドクター・ケイに代わってくれ」リンは先生の容態を手短に伝えると、黒いトランシーバーを置いた。私がじっとそのトランシーバーを見ていることに気づいたのか、ミラー越しに彼と目が合った。「これが気になるか?」私は正直に頷いた。「これはトランシーバーではないよ。そうだな、未来型移動用電話、と言っておこう」「電話?これが?」「まだ、試作段階だけどね。きっとこれからはこの電話が主流になる。さ、着いたぞ」車はいつの間にか木々に覆われた砂利道の上を揺れながら走り、1軒のログハウスの前で止まった。リンは車を降り、後部座席の扉を開けると身を屈めて先生を抱きかかえた。私も脇から支えるようにして、ログハウスの階段を上がった。リンが扉を開けよう手を掛けたけれど、それよりも早く中から扉が開いた。「お帰りなさい、リ……」中から出てきた東洋人らしい女性は、大きく目を見張り後ずさった。そして、彼女の口は、確かにこう動いていた。「テツヤ」と。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2009.06.18
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すみません。戻ってきたと書きながら、途絶えてしまっています。ごめんなさい。このFG2を書き始めた第1話から既に3年も経ってしまっているんですね……。FG1からはこの6月で4年。書いている本人もビックリ。しかも長い中断が何度も続いてすみません。第2章の「泡沫の夢のように」までようやく漕ぎ着けたのに……。2/3までかけているのに。これからは藤枝家とマッカーシー家、それとヘイワーズ家。その3家がどのように関わっているのかを第二次世界大戦(いや、日露戦争からカモ)に遡って書いていきたいなと思います。そして、アリシア、ジョージ、藤枝先生、エドワードの縺れた糸を解いていきたいな。なぜ、ここまで3人が絡んでしまうのか。読んでくれた皆さんが、「あっ!」「ええっ!?」「それで、『FG1』に繋がるのかぁ」と納得して頂けることを祈りつつ、本格再開を6月18日に据えて、もう、皆さんを裏切ることのないよう真摯に書きたい、描き切りたいと思います。今までごめんなさい。頑張りますね。
2009.06.05
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「先生!先生!!」足がもつれながらも懸命に先生を追い掛けた。涙で先生の姿が見えなくなる……先生、ごめんなさい。私が巻き込んでしまった……先生……先生……「フジエダせんせーーーー!!!」数歩走ったところで不意に肩を掴まれ、後ろにつんのめった。「なんていった?!」リン・イーレイが私の両肩を掴み後ろに振り向かせると、目を見開いた。「あいつはフジエダと言うのか?」リンの反応に驚きながらも私は息を飲み頷いた。「フジエダ……。テツヤ・フジエダよ」「なんでっ……早くそれを言わない!」リンは髪をくしゃくしゃに掻くと、吐き捨てるように悪態を吐いた。「くっそー。あいつら減俸もんだ」彼は上着とシャツを脱ぐと、銃と一緒に叢に放った。「ったく、全く何て損な役回りだ」リンは深呼吸をすると、息を整え、「そこで待ってろ」と呟き、川へと飛び込んだ。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2009.02.27
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リン・イーレイは夕闇迫るポトマック川下流まで車を走らせると、鬱蒼とした雑木林の下で車を止めた。そして、運転席のドアを開けると後部座席のドアに回り込み、シートの下にあるロープで先生の両手足を縛り始めた。「何をするの?」リンは私に一瞥くれた。「彼は知り過ぎた」「まさか……」リンは何も答えなかった。「危害を加えないと言ったわ!」「あなたにはね」先生は意識が朦朧としているのか、薄目を一度開けたきり、また目を閉じてしまった。私は車から降りると、リンの背後に回り、その背を思い切り叩いた。リンは私を払い、銃口を私に向け、先生を担いだ。「僕があなたを殺さないのは、マッカーシーのご婦人だからだけではない。あなたは我々にとって重要な鍵を握っているからだ。だが、聞き分けてくれないと僕にも考えがある」脅しではないリンの目に息を飲んだ。「殺すの?先生を?リチャード・ヴォーンやラルフ・デューイのように?」リンは吹き出し、次の瞬間高らかに笑った。「彼らは僕が殺ったんじゃない。僕だったらあんな派手な爆殺はしない」「じゃ、誰が」「あなたは知らない方が良い。全てジョージやマッカーシに任せて幸せな人生とやらを送るんだな」不意に出てきた二人の名前に頭の奥がキーンとなり、頭を押さえその場に蹲った。「僕だったら万人に知られることはなくひっそりと葬りますね。こんな風に、ね」リンは先生を川に放り込むと、「任務完了」と両手を払った。「先生!先生!!せんせーーーーい!!!」私は下流に流されて行く先生の後を追って駆け出した。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2009.02.16
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私は銃を構えるとリンに照準を合わせた。リンはクックッと喉の奥で笑うと、彼も銃の照準を私に合わせていた。「撃てるのかねぇ。ほら、手が震えてる」リンは一歩また一歩と距離を縮め、細い目を更に細めて笑った。「う、撃てるわ!これ以上、近づいたら撃つから!」先生を守らなきゃ。そして、ジョージを取り戻すの。だけど……だけど……出来ない!もう一歩でリンの手が私の銃に届くと言う時に、私は銃を振り上げリン目がけて思いきり投げつけた。私は車の傍に座り込んでいる先生を庇おうと抱きしめた。咄嗟に銃を避けたリンは目をパチクリさせ、次の瞬間大声で笑った。そして、睨みつける私に拾い上げた銃を手渡し、「乗れ」と顎で杓った。先生を路上に横たえると私は車のドアを開けた。「この坊やも連れて行く」「先生は関係ないわ!」「例の海難事件を嗅ぎまわっている東洋人がいると聞きました。置いて行くわけには行かない」「でも、先生は……」リンは銃を先生に向けると、「今、ここで殺してもいいのですがね。君次第だ」と笑った。先生、ごめんなさい。先生を巻き込むつもりはなかったのに……私は後部座席のドアを開け、リンは先生をシートの上に放った。リンに銃を突き付けられながら、私は助手席に回った。「変な気を起こさないで頂きたい。そうすれば、危害は加えません」「……どこに行くの?」私の質問に答えずに、リンは車のナビを操作し始めた。「ミセス・マッカーシー。まずは夢から覚めて頂きましょう」リンは銃をしまうと車を急発進させ、「いや、これからが夢なのか……」と不気味に笑った。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2009.02.11
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す、すみません!今年もついに終わってしまいますね。「フラワーガーデン2」をなんとしても年内に書きたいと思いまして、でも内容の整合性を取りたいと思い読み返しているうちにもう年越しの声がぁぁぁ。頑張ります。取り急ぎ、ご挨拶です。皆さん良いお年をお迎え下さい!!
2008.12.31
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お久し振りです。更新が滞ってすみません。ただいま、頑張って充電中です。勉強不足を猛反省し、日々、小説を読んでいます。今、「チーム・バチスタの栄光」を読破しましたが、やはり専門分野がある人は強いな~と感心しています。お医者様をしながらの執筆。私も負けないように頑張らなきゃ!と、改めて猛反省。今年も後3か月。koukoさん、皆さん、いつも励ましてくれて有り難うございます。私、元気で頑張っています!遅れていますが、年内再開に向けて努力しますね。
2008.09.22
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ご無沙汰しています。ここ暫く、(密かに)ちょっとばかり入院していました。万全のサポート体制を敷いて受け入れて下さった病院の先生やスタッフの皆さん、本当に感謝感謝です。それから、お休み中もサイトをご訪問下さった皆さん、有り難うございます。更新が滞っていてすみません。日頃のご愛顧に心から感謝しつつ、サイトリニューアルに向けて、只今、体力増強中です。立って歩けること、食事が出来ること、外の寒さを肌で感じることが出来ること。それが、今は無事出来ていることがとても嬉しいです。そして今の願いは「書きたい」それだけです。今後は「フラワーガーデン2」のリニューアル準備に勤しみたいと思います。頑張ります(≧△≦)/
2008.02.02
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長い間中断していますが、皆さんいかがお過ごしですか?昨年は本当に忙しい年でした。今年は再生の年にしよう!かな?と思っています。本年も宜しくお願いします。再開に向けて頑張ります(^^)/
2008.01.01
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残暑お見舞い申し上げます。長い間、ご無沙汰しています。皆さん元気で頑張っていますか?私はこの人生最大の多忙期を乗り切るべく、せっせと頑張っています。もう一度推敲して書き直したい「Flower Garden」。何が何でも書き遂げたい「Flower Garden2」。そして、早く書きたい「Flower Garden3」。気持ちは焦りますが、今は充電時期と思い書く気持ちを抑えています。年内再開を目標に頑張りますね。それでは熱い日々が続きますが、お体ご自愛下さいね。小山千鶴
2007.08.19
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すみません。ここのところ、すっかり更新が止まってしまっています。書きたいことがあっても書けないのはつらいです。でも、なんとかこの超多忙期を乗り切って、書く!デス!!
2007.05.22
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警報が鳴り響く病室を見渡し、そして私とエドは顔を見合わせた。廊下を慌ただしく人々が行き交う様子に、エドは廊下への扉を開けようとした。「エド!」「大丈夫ですよ。ちょっと様子を見て来ます。すぐに戻ります」「行かないで!」「……アリシア?」突然、言いようのない不安に襲われ、彼の袖を掴んだ。エドのふっとした微笑みに、慌てて掴んだ袖を離した。「あなたはここで待っていて下さい。良いですね?」「エド!」廊下からする慌ただしい喧騒を聞きながら、私はベッドに腰を下した。数分もすると、扉をノックする音に急いでベッドから降り、勢い良く扉を開けた。「エド!?」「マッカーシーではなくてすみませんね」私はピーナッツアイの東洋系の男の笑みに悲鳴を上げた。そして、開けようとしていた扉をぐっと廊下側に閉めようとした。「おっと。そこまで嫌わなくてもいいでしょう?」男は……リン・イーレイは素早く扉の隙間に靴先を挟み込み、力ずくで扉を開けようとしていた。「何しに来たの?」「デートのお誘いです」「間に合ってるわ」「では、『誘拐』と言うのはいかがでしょう?」リンはどんどん扉を押し返し、私の力は尽きようとしていた。このままではいずれ彼はこの部屋に入って来てしまう……私は今度は扉から手を離すと、ベッドの横に駆け込んだ。「もういい加減諦めて、私と一緒に来てくれてもいいでしょう?」一歩一歩近づく彼の歩とは逆に、私は後ろへ後ろへと後退した。私はベッドのサイドテーブルの横まで来ると、その上に置いてあったバッグを掴み、中から銃を取り出した。「今度こそ、撃つわ」「ふっ……。は……ははは」「何がおかしいの?」銃を構えた時、リンの背後に影が走った。「アリシア!!逃げろ!!」「え?!」リンが振り向くと同時に、先生の回し蹴りがリンの顔を蹴り飛ばし、彼の体は壁めがけて吹っ飛んでいた。リンはそのまま頭を押さえ、その場で屈みながら流れる鼻血を押さえていた。「今だ!」私は先生の合図と共に、先生の差し出す手の方へと走った。「先生!怪我は?」「大丈夫だよ」「だって、手術したって……」「大丈夫」先生は廊下を苦しそうに息をしながら、駐車場を目指して私を連れて走った。「先生、車は大破したはずじゃ」「うん。だから、鍵を借りて来た」「誰のを?どうやって?」「看護婦さんのを。どうやってかは、企業秘密」先生は茶目っ気たっぷりに答えながらも、顔色は真っ青だった。「先生……。やっぱり、顔色が……」そう言いながら、助手席に乗り込もうとして、先生の青褪めた顔に息を呑んだ。「先生?!」「大丈夫。……ちょっと……無理……し過ぎ……」「先生!!」先生を抱き抱え、彼の額の汗をぬぐっていた時、銃を構え、すぐそこまで差し迫って来ているリン・イーレイと目が合った。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.05.10
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闇の奥で鈴の音が鳴る……揺れるコインから目を離そうとするのに……闇の奥からぬぅっと手が伸びて来るのに驚き、私は飛び起きた。「きゃーーーーー!!」「アリシア?!」伸びて来た手は私を優しく包み込み、「大丈夫です。落ち着いて」とその胸に抱きすくめた。「エドワード?」エドは私の肩に両手を掛けると、私の額に掛かる髪をそっと後ろに撫で上げた。「何か怖い夢にでもうなされていたようですが」……覚えていない。夢を見ていたのか、それすらも目を開けた瞬間、私は覚えていなかった。ただ、ズキズキとまるで頭が割れるような痛みに頭を抱えた。そして、唯一すぐに思い出せる質問をエドに投げ掛けた。「先生の容態は?」「ICUに入ることも無く、無事手術は終わって寝ていますよ。そろそろ麻酔が切れる頃かもしれませんね」「私、お見舞いに……」「今日は止めておいた方がいい。それにあなたこそ真っ青だ。これでは病人が病人をお見舞いする破目になる」「でも、私を庇ったせいで先生は……」ガウンを羽織り、立ち上がろうとする私の肩をベッドに押し戻しながらエドは首を振った。「確かに彼が庇ってくれたお陰であなたは無傷でした。ですが、あの事故は明らかに彼だけを狙ったものです。あなたが気に病む必要はない」「気に病むわ!あんな酷い怪我なんですもの!」「今は体を休ませるんだ!あなたはもう一人の体ではない!」今まで聞いたことも無いくらい強いエドの強い言葉に、私の体はビクンと揺れた。「……すみません。でもあなたはこれ位言わないと平気で無茶をする人ですから」エド……この人は本当に私のことを心から心配してくれて、大事にしてくれる……感謝と申し訳ない気持ちで、涙が出そうになり、きつく結んだ唇が震えた。「……分かったわ。明日行くわ。だったらいいでしょう?」「そうして下さい」エドはほっとした表情で、私のベッドの横にエキストラベッドをポーンと放ると、その上に靴を履いたまま、頭で腕を組み、横になった。「ここで寝るの?」「夫ですから」夫……その響きに胸が痛む。優しいエドワード……そんなエドを裏切り、私はジョージの子を身籠り、先生と夫婦として暮らしてしまった。その上、私はエドに記憶を取り戻した今、最も残酷なお願いをしようとしている……「エド、私、あなたにお願いがあるの」さっきまで仰向けに寝ていたエドはゴロンと寝返りを打ち、私に背を向けた。「僕は、離婚はしません」「え?!」「あなたがどんなにそれを望もうと、離婚はしない」「エド……」「僕の書斎に離婚届の切れ端が落ちていました」エドは知っていた。だからあの時、あんな風に冷たい態度を取ったのだと、胸に痛みが走った。だけど、私は彼が想像している以上にひどいお願いをしようとしている……「エド……。そのことだけど……」何とか言葉を振り絞ろうとした時、病院中に非常警報が鳴り響いた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.05.06
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どうもです。ちょっとご無沙汰しています。只今、リフレッシュ(←自主的に)休暇中デス\(≧▽≦)/で、今日は品川プリンスホテルのアクアスタジアムに行ってきました♪観ましたよ。イルカショー。なんの知識も無く。で、驚いたデス。超エリートなイルカ達の中にスーパー運動音痴なイルカがいる……華麗なジャンプをするビシッと決めまくる華々しいイルカ達の中で、なんかどんくさいのが……いる??そのイルカ君。跳べば他のイルカ達の1/2。しかも立ち泳ぎを見て唖然~(@_@;)お、溺れてるぞ……??これはドクターストップならぬ、トレーナーストップ??が必要なのでは……(@_@;)やばいよ。危険だよ!とハラハラしながら観たのでした。でも、一生懸命な彼の姿にぐっとハートを掴まれちゃいました。んでもって、家に帰ってぐぐってびっくり。彼は運動音痴で有名なイルカだったんですね~。「イルカにも運動音痴なイルカがいるんだぁ~。しかも、ショーに出てるんだぁ」と、感動。漁師の網に掛かって水族館入りしたと言う鈍さを証明するエピソードにも思わずホロリ。今日はいい一日でした。イルカだって頑張ってる!私も頑張ろう!!でも、ソロソロ寝ます。「フラワー」の続きも頑張りますね♪ほいじゃ!良いGWを!!
2007.04.28
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2時間後、先生の手術が終わったとの連絡が病室に入った。手術室から出て来た医師に、命に別状はないと告げられほっと胸を撫で下ろした。「そろそろ会社に行かなくては」腕時計をちらっと見ながらエドはビジネスバッグを手にしていた。私はとっさに彼のスーツの裾を握りしめていた。「どうしました?」「なっ、なんでもないわ」じぃっと私を見つめるエドから逃れるように、私は目を伏せた。「Mr.フジエダの日本のご家族には連絡をつけました。それから、病院中をくまなく調べさせましたが、爆弾らしきものも見つかりませんでしたからご安心を」何から何まで手際の良いエドに感謝し、それでも彼のスーツを離すことが出来ずに、そのまま俯いた。「今日から、警護の者を5人程つけるよう手配しました。ですから……」「……有り難う」「ですから……そんな顔しないで下さい」エドの腕の中にすっぽりと包まれ、心が安らいでいく……目を瞑り、懐かしいエドの温もりにそっと頬ずりした。突然、断片的だった記憶の奥にあった画像が頭を過り、私ははっと目を開けた。「コインが……」「コイン?コインがどうしました?」「揺れて……」コインが揺れる……暗い暗い闇の中でコインが……揺れる……私は何かを……何かとても大事なことを忘れている……そんな気がする……「頭が痛い……」「どうしました?!アリシア!!」「吐きそう……」「アリシア?!」ぐるぐると天井が回り、エドを見つめる視界が揺らぐ……私は……何か……とても大切なことを……倒れざまに私は、あの男を……リン・イーレイをエドの肩越しに見たような気がした。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.04.21
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良く整髪された金髪。皺一つ無いスーツ。世界トップクラスの経営手腕を注目されるCEO。16歳も年上の私の夫、エドワード・マッカーシー。その彼が、血相を変えて私の方へ駆けて来る……「失礼!」廊下を行き交う看護婦や医師達の合間を縫い、そして私の目の前で立ち止った。見上げていたエドのスーツがみるみる近づき、私はその腕の中に抱きすくめられた。「アリシア!朝のニュースを見て心臓が止まるかと思いました」彼を抱き締める手に力を込めた。「なぜ、こんなところに座っているんですか。治療を……」「怪我はしていないの。この血は庇ってくれた先生のなの」「赤ん坊は!?」私ははっとしてお腹に手を当てると、「大丈夫」と頷いた。彼が「良かった」と胸を撫で下ろしている様子に、私は少なからずとも驚いていた。私はエドに男達に襲われたことを手短に説明した。「それで、Mr.フジエダは?」「あそこで手術中だわ」私はオペ室を指差した。「そうですか……。彼には感謝しているが、ここに座っていては体に触る。取り敢えず、病室に戻りましょう」「先生の無事を確認出来るまで待つわ」エドは立ち上がると一人の看護婦を捕まえ、名刺を渡していた。「さぁ、これで大丈夫です。彼の手術が終わったら最上階の特別室に連絡を入れるようにお願いしましたから」「……手際が良いのね」「そうしないと、あなたはここをどかないでしょう」そつのない彼の行動にひとつの疑惑が頭を過る……先生はエドのことを疑っていた。ジョージの船が沈んだ一連の事件の黒幕が、アルバート・マッカーシーであることを考えると、その弟、エドワード・マッカーシーが一枚噛んでいると考えても不思議ではないかもしれないと先生は言った。だけど……体がフワリと浮き、慌てて足をバタつかせた。「下して!下ろしてってば!!エドワード!!」「あなたが頑固だからです」「こんなところで恥ずかしいわ!」「妊婦の妻を抱き上げて、何が恥ずかしいのでしょう?それにそんなに血みどろの恰好で座っていては周りが驚きますよ」冷静な彼の声に、再び、私の胸の中に警告ランプが点滅する……さっきまで安心して抱き締められていた彼の胸の中で、完璧すぎる彼の対応に、私は極度の緊張状態に陥っていった。病室の扉を開け、下ろされたソファの上で、目線を下ろすと私は「ぷーーーーーーっ!」と噴き出していた。完璧なまでに完璧な大人の男性……のはずだったエド。私は再びエドの首に両腕を巻きつけると、泣きながら笑った。「慌てていたんです。……そんなに笑わなくてもいいでしょう」彼は耳まで真っ赤になりながら、私が以前彼にプレゼントしたあひるちゃんのモコモコスリッパを履いた足をソファの下の隙間に隠した。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.04.15
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手術室の前の長椅子に腰を掛けると両手の指を組み、先生の無事を祈った。病院内は騒然としていて看護婦達が目の前を忙しなく走り回っていた。待合室は爆発の影響で負傷した患者で埋め尽くされていた。「あなた!早く手当てしなくては!」突然、肩に置かれた看護婦さんの手にびくっと立ち上がった。「血だらけじゃないの!」「あ……。違うんです。これは私の怪我じゃなくて、庇ってくれた人の……」「あら?大丈夫そうね。ごめんなさい」足早に施術室に消えて行く看護婦をぼんやりと見ながら、その覚束ない目線で自分の掌を見た。手も、足も……気付けば全身血だらけだったことに気付いた。「あらっ!あなた大丈夫?!」また、別の看護婦に声を掛けられ、頭を振った。「……大丈夫です。これは……」これは、先生の……こんなに大勢の人達が傷を負っている中、私は倒れ込んだ時に膝を打ったくらいで、ほとんど無傷だった。先生が命懸けで守ってくれたから……今だけじゃない。ずっとずっと守ってくれていた。ポロポロと涙が頬を伝った。「あなた、大丈夫?」私は頷き、長椅子に腰を下ろすと、震える体を抱き締めるように背を丸めた。待合室は怪我人だけではなく、彼らを心配して駆け付けた人々でやがてごった返して来た。『銃を取れ』手術室に入る前に言っていた先生の言葉を思い出し、ドクンと心臓が鳴った。そして、次の瞬間、総毛立っていた。もしかしたら、この人達の中に犯人がいるかもしれない。あの椅子に、ううん、もしかしたらこの椅子にまた爆弾が仕掛けられているかもしれない。違う。そうじゃないかもしれない。犯人は銃を構えてその照準を私に合せているかもしれない。バッグをぎゅっと握ると、俯きながら辺りを見回した。息がどんどん速くなる……ダメ……ここにいる全ての人達が敵に見える……怖い怖い怖い怖い……銃の撃ち方なんて知らない。でも、知ってたとしても、人を撃つなんて出来ない!「アリシア!」突然、自分の名前を呼ぶ声に驚き、顔を上げた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.04.14
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爆風と共に金属片やガラスの破片等がビシビシと音を立てて、地面に突っ伏している私の頬を掠めて行く……先生に覆い被さられている脇の隙間からそぉ~っと顔を上げ、微かに見える視界の先の先生の車を見て、あまりにも無残なその残骸に言葉を失った。建物の一部は破損し、辺りには先程まで立っていた人たちが呻きながら助けを求めていた。「なんて……なんて酷いことを!」怒りに体が震えた。あの車は先生の車だった。先生が車に乗って病院から帰っていれば、間違い無く先生はあの炎に包まれて……想像するだけで体が震えた。直後にぬるっとした生暖かい背中の感触と、金属臭に違和感を覚えた。「先生?」返事がない?「先生??」私は体を起こし、私の上に覆い被さる先生の方を振り向き、あまりの恐怖に凍り付いた。先生の背や肩や頭には無数の破片が突き刺さっていて、そこから沢山の血が流れてて……頭が真っ白になった。さっきの金属臭は先生の血の臭いだったんだ……生暖かいこの感触も……「せ、先生!先生!!いやっ!!いやぁぁぁぁっ!!」「君、どいて!」私は病院内から駆け付けたドクターに押し退けられ、その場に放心状態で座り込んだ。「ア……リ……」「先生!」生きてる!!先生が生きていた!!私は無我夢中で傍に這って行き、先生が震えながら力を振り絞って差し出す手を取った。「……銃…………を」「銃?」何を……先生は何を言おうとしているの?「……じゅ……を……と…………れ」「銃って?!男達の?」「……が…う。き、み……」私は握っていた先生の手を放した。先生の指は、明らかに爆風で飛ばされていた私のバッグを指していた。「……私の?」先生は優しく微笑むと、苦痛に顔を歪めた。「ドクター!ストレッチャーを持って参りました!!」「よし、じゃぁ、みんなでタイミングを合わせて1、2、3で乗せるぞ。いいか?1、2、……サンッ!」4~5人の病院関係者が先生をストレッチャーに乗せると、ドクターらしき人が「緊急手術をするから、1号棟手前のオペ室の準備を!」と指示した。「先生!」「……じ…」「そんな銃なんてどうでも良いわ!」「……め…だ。うっ……」「わっ、分かったわ」私は並走していたストレッチャーから離れると、吹き飛ばされていたバッグを拾い、再び先生のストレッチャーに追い付いた。「み、……よ……」「何?!先生??」先生は困った顔をして、微笑んだ。私は体を丸め、先生の口に耳を寄せながら、長い長い廊下をストレッチャーと一緒に走った。「ここからはオペ室ですからご遠慮下さい」看護婦の制止と共に、私はガラス張りの扉の前で止った。「君が無事で良かった」最後の最後まで、私の無事を私のことばかりを先生は……先生!先生!!「先生!!せんせぇぇぇーーーーーーーーーーーー!!」先生の微笑みを残して、手術室へ繋がる幾重もの扉が開き、そしてゆっくりと閉められていった。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.04.13
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よくよく見ると男達は私達と同じ10代~20代前半位の年齢のようだった。先生はコンクリートに跪き、両手を頭の後ろで組まされていた。男は先生に銃を向けたままジャケットから鍵を取り出すと、今度は胸ポケットから財布を奪い、自分のGパンに捩じ込んだ。「これもよこしな」私の横にいた男は私からバッグを奪うと、やはり銃を向けたまま車の運転席に回り込んだ。「大収穫だな。車はフル装備だし、金もたんまり頂き、と。で、こいつらどうするよ?」「顔を見られてるんだ。どうもこうもねぇだろう」男達が顔を見合わせたその瞬間、先生の素早い拳が一人の男のミゾオチにめり込み、男の体はどさっと地面に倒れた。「走れ!!逃げるんだ!アリシア!!」「……っのやろぉ!」「先生!!!」私は急いで身を屈めると先生の指差す車の陰に走り込み、先生も転がるように発砲されながらも車体後方の陰に逃げ込んだ。男が銃を構え、車の後ろに近付いて来た時、騒ぎを聞きつけた人々が病棟から駐車場へと訝しそうな顔をしながら出てきた。「くそっ!おい!起きろよ!逃げるぞ!」」男は足早に車の運転席のドア付近に駆け戻ると、倒れていた男のお腹を蹴って抱き上げ、助手席に乗せた。先生は頬に発砲された際に受けたのか頬についた小さなかすり傷を拭い、車の影を利用しながら私の方へと近づいて来た。「単なる物取りだったみたいだ。良かった」「全然良くなんかないわ!傷が……」「大丈夫だよ。男だし。それに傷も浅い。それより君の方こそ大丈夫?」「ええ……」大丈夫と言おうとしたその瞬間、カラカラと回る聞き覚えのあるエンジン音に私達の背筋が凍った。「いけない!!降りるんだ!!」先生が慌てて声を張り上げたにも拘わらず、男達は先生に発砲しエンジンを掛け続けた。先生は「くそっ!」と呟くと、私を包むように覆い被さった。ドォーーーーーーーーーン!爆音と共に建物の窓ガラスは割れ、周辺の車は飛び、男達を乗せた先生の車は炎に包まれていた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.04.11
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1週間程前、交通事故に遭った子猫を助けてオロオロしている大学生に道路端で出会いました。急いで動物病院に連れて行き、先生に診て貰いましたが、「今夜が峠だろう」とおっしゃる「今夜」を超すことも出来ないまま、子猫の容体はみるみる急変し、亡くなってしまいました。その日、子猫を一緒に助けてくれた大学生の男の子と一緒にボロボロ泣きながら子猫のお葬式を出しました。その男の子は20歳だと言っていました。車の往来の激しい道路を渡り、横たわる子猫をそれこそ命懸けで助けてくれました。そして、今朝、知人が自らの命を絶ちました。まだ20歳でした。どうしてそんなことになってしまったのか、今は分かりません。だけど、残されたご両親のことを、思うとやるせない……そんな思いで家に帰っている途中で、交通事故を目撃してしまいました。車に轢かれたのは近くで働く20歳の男の子でした。私は唯一の目撃者ということで、さっきまで警察の聴取に応じました。男の子は一命を取り止めました。命を助けようとする人命を自ら断ってしまった人命を落としそうになってしまった人この1週間で命についてこんなに考えたことはなかったのではないかと思うくらい、命について考えました。命は意識することなく気付けばずっと続くけど、本当に呆気無いくらい失いやすいものなんだと思いました。私が出会った、そしてこれから出会う全ての大切な人たちの命が大切に大切に続いて行きますように。みんなが幸せで健康に1日1日を生きていってくれますように。
2007.04.10
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先生はポケットに手を入れると、鍵の束を取り出した。「分かった。行こう。車を駐車場に入れてある」「連れてってくれるの?」「君は無茶ばかりするからね」先生は私の手を取ると、廊下へと続く扉を開けた。「昨日……」「え?!」「……いや。何でもない」先生は長い睫毛を伏せて、バツが悪そうに視線を逸らせた。「気になるわ。言い掛けるなんて」「ごめん。でも訊くと余計ヘコみそう……」私は先生の前に回り込み、彼の瞳を見つめた。「気になる。凄く」先生は再び私から目を逸らし、その掌で鍵をジャラジャラと鳴らした。「……昨日の夜、君は僕を誰と間違えたの?」投げ掛けられた先生の言葉に動揺を隠すことが出来ないまま、私は青褪めていた。「せ……ん……せい。私……」「いいよ。それでも君に触れることができた」優しく悲しそうな先生の微笑みに胸が痛くなる……私は俯き、先生に手を引かれるように駐車場へと向かった。「君がヘコんでどうするの?ほら、スマイル!」一生懸命笑いながら駐車場の扉を開ける先生の笑顔が眩しくて、余計にヘコんだ。「ここからだと屋敷まで30分くらいかな」先生は相変わらずの微笑みを私に向けてくれた。私も頑張って先生にニコ~と微笑みを返し、車にお互いが乗り込もうとしたその時、突然二人人の男が現れ、先生のコメカミにピストルを当てた。「黙って手を挙げろ!」「先生!」「おっと、お前もだ!両手を挙げるんだ!!」私もコメカミにひんやりとした冷たいものを感じ、横目でピストルが突き付けられているのを感じ、両手を挙げた。「アリシア!」「動くな!動いたら撃つぞ!!」「先生!」この男達は一体何者なの?閑散とした人ひとりいない駐車場で、私達は両手を頭の後ろで組むよう命じられ、そして言われるままにその場に膝まづいた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.04.09
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私とジョージはあれからドイツへと向かった。そして、あの日、私達の旅は終わった。全てを知り、全てを思い出した今、私に出来ること……それは……「アリシア!無茶だ!そんな体で……」駆け出す私の前に立ちはだかる先生の腕の下を潜ろうと身を屈めた。「待つんだ!アリシア!」「離して!」「そんな体で君はなんで無茶ばかりするんだ?!」私は振り向くと、私を抱きすくめる先生の足を踏んだ。「いっ……つぅ~!」「ごめんなさい、先生。でも、行かなきゃ、ジョージが……」それでも先生は足をさすっていた手を放し、再び走り出した私の手を捕らえた。「待って!ジョージがどうしたの?落ち着いて話して」「……私、会ったことがあるの。1度だけドイツで」「会ったって誰に?」「……リン・イーレイ」「リン・イーレイって、まさかさっきの?」私は頷くと、両手で顔を覆った。「ドイツで、私、彼に会ってたんだわ」「ジョージも一緒に?」「ええ……。あの時、彼は言ったの。『来てしまったね。ジョージ』って」私はあの時の薄気味の悪い彼の笑い顔に背筋が凍った。「ジョージは言ったわ。『盛大に船を沈めて、クライアントのプレジデント(アメリカ合衆国大統領)は喜んだか?』って。それを聞いても、彼……笑ってた」「まさか……アリシア……」私は振り返ると涙を拭い、頷いた。「そう……ジョージの船を沈めたのは、ニコラス・マイヤーズ大統領。そして、裏でその資金を提供し、実行部隊を募り、操ったのは……アルバート・マッカーシー」「そんな……」先生は私の腕を掴むと、「信じられない」と呟いた。「じゃぁ!エドワード・マッカーシーも関係があるのでは?」「違う!エドはそんな人じゃないわ!」「なぜそう言いきれるの!?」アルバート・マッカーシーはエドのお兄様にあたる方……エドがこの件に絡んでいると疑う先生の考え方が正しいのかもしれない。だけど、私の心の奥底にある声がその考えを否定していた。「なぜって……エドは悪い人じゃないわ」先生の問い掛けに私はそう答えるのが精一杯だった。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.04.08
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先生の頬を打った瞬間、私はこの3か月間、先生と夫婦として過ごしていたことを思い出した。だけど、記憶を取り戻した今、こんな風に先生と肌を重ねてしまったなんて……それも、ジョージと間違えて……服を着ながら、時折合う優しい先生の眼差しに胸が痛み、瞳を伏せた。「アリシア。あの……」コンコン先生が言い掛けたその時、扉をノックする音に私達は顔を見合わせた。先生はそれでも何か言いたげで、じっと私を見ていたけれど、2度目のノックに諦めたように、ドアの方に歩いて行き、扉を開けた。「失礼致します。マッカーシー様のご依頼で、採寸に伺いました」「採寸?」「ええ。2週間後に執り行われますケイト・マッカーシー様とグレアム・マッカーシー様の御婚礼にご出席される際のドレスを仕立てて欲しいとのご用命でしたが」私はコメカミに指を当てると、頭をフル回転させ、「結婚?ケイトの?」とぶつぶつと呟きながら、頭の中の記憶を呼び戻そうとした。ケイトとスイスで再会して、それから……そう!先生と暮らして、エドワードと再会して、それから、えぇっと……「2週間後の式には是非来て欲しいとケイトから昨日電話がありました」私は昨夜、冷たく言い残して去ったエドの背中を思い出していた。そうだったわ。エドと一緒にケイトとグレアムの結婚式に参列することになっていたんだわ。再び着ていた服を脱ぎ、仕立て屋数名に採寸されながら、ふと視線を感じ、私は辺りを見回した。先生?!私はあまりの恥ずかしさに声が出ないまま、真っ赤になって口をパクパクさせた。だけど、先生は壁に寄り掛かったまま、眩しそうに眼を細め、じっと私を見つめていた。先生はただそのまま壁に背を持たせ掛け、腕を組んだまま立ちすくんでいた。先生……そんなに見ないで……お願いだから……もう私を見ないで……先生の熱い眼差しを受けながら、私は瞳を伏せた。スイスから戻って、記憶を失って、そして今までのこと、先生に感謝してる。スイスから戻って……?私は突然襲ってきた痛みに頭を押さえた。待って。スイスから戻って?ううん。違う。私は、スイスに行って……それから……それから、直ぐにボストンに帰って来たの?私は更に痛みが増す頭を押さえながら、その場に屈み込んだ。「どうしたの?アリシア?!」先生は寄り掛かっていた壁から急いで体を起こすと、私の元に駆け寄り、私を抱き締めてくれていた。「違う……。違うわ」「違うって何が?」「私……スイスに行ってそれから……それから……」ああ。なぜ、こんな大事なことを今まで思い出せなかったの。私は抱き止めてくれた先生の腕を掴むと、「エドワードに会わなくちゃ!お願い!!今すぐにエドに会わせて!!」と叫んでいた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.04.05
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何がどうなっているのか分からない……私……確かジョージと一緒にスイスに…………待って。スイスに行ってから……それから……パニックになりそうな頭を振り、稲光で不気味に光る部屋に灯りを灯そうと背後にあるスタンドの紐らしきものに手を伸ばした。「あっ!アリシア!!だめだ!!」「え?!」突然発せられた先生の大声に驚き、私は紐に掛けた手を思い切り引っ張ってしまった。と、同時にバランスを崩して体が前のめりになってしまっていた。『どうされました?』「きゃ-!お、落ち……」「アリシア!」ベットから転がり落ちる寸前のところで、先生に肩を掴まれ、その胸に抱き締められた。「ふー。危なかった」「……先生」その時、廊下がバタバタと俄かに騒々しくなり、先生はギョッとしながら、散乱した服をかき集め始めた。「とにかく急いで服を着て!」「一体、何が……」「君は今、ナースコールの紐を引いちゃったんだ。だから……あ!」先生は急いでズボンを履き、裾を踏んだらしくつんのめって床に倒れた。「先生!」「いいから!これ着て!」「これ?先生のTシャツだわ」「あ!ごめん。こっち」「きゃーーー!エッチ!!」バッチーーーーーーーーーーーーン!!!ブラジャーを掴む先生の頬を思いっ切りぶっ叩いてしまったその時、扉が開き、婦長らしき人が駆け込んで来た。「どうされました?!」「いえ……。そのぉ……。かっ……」「か?」「蚊が飛んでて……、だから、妻が僕をぶって。その……」「落ち着いてお話頂けますか?」先生はコホンとひとつ咳をすると、私の方をちらっと見て、気まずそうに頭を掻いた。「すみません。間違えて呼んでしまったんです」「……そうですか」ナースは屈んで先生に何かを手渡すとにっこりと微笑んだ。「お気持ちは分かりますが、奥様が体調が戻られるまではお控え下さい。特に個室とは言え、病院ですから。では」スタスタと部屋を出て行くナースの後ろ姿にほっとしながら、「良かった。セーフ」と先生は微笑み、「でも、これ何だろう」と首を傾げると掌の中のモノを広げた。「せっ、先生のバカァーーーーーー!」バッチーーーーーーーーーーーーン!!!私の2発目のパンチが炸裂し、先生の手の中にある私のショーツはヒラ~ンとベッドの上に散っていった。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.31
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土埃を巻き上げ、上下に機体を揺らしながら空へと消えて行くヘリコプターを、私はホテルの部屋の窓から見届けた。澄み切っていたはずの空は黒々とした雲に覆われ、やがて幾筋もの雨が窓を打った。私は窓に当てていた手を放し、バッグを肩に掛けると、ジョージが手配してくれた部屋へと移動した。私は部屋の鍵を開けるとそのままベッドに倒れこんだ。眠りたい……今は眠りたい……ただ、それだけ……ケイトが悲しみの内にグレアムと結ばれたこともジョージの船の沈没が大統領の命令だったって言うことも起きればきっと全てが夢……うとうと仕掛けた頃、部屋の扉が開き、ベッドの脇に両手を置く気配に気付き、私は体を起こし彼の首に腕を巻きつけた。「お帰りなさい」「……ただいま」「嫌な夢を見たわ」「どんな夢?」「……ううん。何でもないの。ただ……ただ……凄く悲しい夢……」「そう」私は彼の首に巻いた手を頬に滑らせ、そっとキスをした。(私はあなたが羨ましいわ。アリシア。思うままに愛し合えるあなたが)ケイトの言葉が耳に木霊し、私は抱きしめ返してくれた彼の胸に顔を埋めた。愛し合うことしか出来ない。未来も、約束も、何もない私達が出来るのはそれが精一杯だから……だから、愛し合うだけ。「……抱いて」「え?!」思わず口を衝いて出た大胆な言葉に、一瞬、顔が熱くなった。なんてこと言っちゃったのかしら……慌てて言葉を取り消そうとした私の唇にキスをしながら、彼は小さな声で「嬉しい」と囁いた。戸惑う彼の唇が私の唇に重なり、私は彼を抱きしめる手に力を込めた。好きな人と抱き合う悦びを、束の間の幸せを、私達はお互いの肌の温もりの中に求めていた。窓の外を激しく打つ雨音も、轟く雷鳴も、ジョージの腕の中だったら怖くなんかない……重なる二つの影がゆらゆらと陽炎のように壁を伝い、やがて一つに重なった。「アリシア、上に」「恥ずかしい」「二人で愛し合わなきゃ、意味無いよ」いつか先生と見たアマンダのことを思い出して、頑張ってみたけど、それでも恥ずかしくて、胸元を両腕で隠し、力無く彼の胸に倒れ込んだ。「……出来ないわ」クスリと笑う彼の喉元に顔を埋め、突き上げる衝動を、こみ上げる大きな波を、彼の腕の中で迎えた。小さく弾む息を押さえながら、私はある違和感に気付いた。なぜ、ホテルの一室にこんな臭いが立ち込めるの?この臭いは……そう……まるで病院の……エタノールのよう……ぼぉっとする意識の中で私は頭を振り、シーツを引き寄せた。「大丈夫?」優しく響くその声のする方を見て、私は驚きに体が強張った。黒髪に、深い闇のように黒い瞳が、心配そうに私を見つめていた。「先生!」どうして先生がここにいるの?!私が今まで抱かれていたのはジョージじゃなかったの?!シーツを抱き締めると後ずさる背が壁に突き当たり、私はただ驚きに言葉を失ってしまっていた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.30
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鍵を回し、私が部屋に入ろうとした時、ほぼ同時にケイトが廊下を駆けて来た。「アリシア!早く中へ!」「ケイト?!」ケイトは廊下を用心深く見渡すと、素早く私を部屋へと押し込んだ。「10分だけ、グレアムに時間を頂きましたの。ですから、直ぐに行かなくては」「ケイト。あの時は、ごめんなさい。ジョージが……」「……いつからですの?」「え?」「いつから、ジョージ様とあのような仲に……」「ケイト……」言葉に詰まる私の唇にケイトはそっと人差し指を当てると、首を振った。「いいえ。宜しいですわ。もう過ぎたことですわね。それにもう私には……」「ケイト?」私は以前とは違うケイトの様子に気付き、彼女の伏せた瞳を見ようと首を傾けた。「……昨夜、このホテルでグレアムに抱かれましたの。あんなものなんですのね」ケイトは疲れ切った表情で椅子の肘掛けに手を伸ばすと、そのまま咽び泣いていた。「受け入れるだけ。そして苦痛な時間が通り過ぎるのをじっと待っているだけ。ただ、それだけのことですわ」「ケイト……」違う……そんな愛し合い方、間違ってる。そんな……哀しい……出掛けた言葉を私は喉の奥に押し込んだ。そんなことケイトは知っている。それでも、ケイトはその道を選んだのだと……彼女の疲れ果てた瞳の奥に潜む決心がそう私に伝えていた。「親に言われるまま、身売りでもするように殿方に抱かれる私を軽蔑して下さっても宜しくてよ」私は首を振り、震える腕でケイトを抱き締めた。「……私のために泣いて下さるの?」私はケイトを抱きしめる腕に力を込めた。「私はあなたが羨ましいわ。アリシア。思うままに愛し合えるあなたが」「ケイト……」「ジョージ様を愛していらっしゃるのね」「……ええ」「そして、エドワード叔父様のことも」私はケイトの言葉に驚き、今にも心臓が飛び出そうな口を両手で塞いだ。「見ていれば分かりますわ。微笑ましい夫婦でいらっしゃいましたもの。傍から見ましても信頼し合って、愛し合っているのが分かりましたわ」「ケイト。私……」ケイトはそっと微笑むと、背筋を伸ばし、先程までの弱弱しさが嘘のように毅然とした瞳を上げ、ドアに向かって歩き出した。「結婚式には出席して下さるわね?」ドアノブに手を掛け、出て行こうとするケイトの手が微かに震えていた。そして、肩で大きく息をすると、最後にケイトは振り向いて私に告白した。「ジョージ様が、言っていたことは本当ですわ」「ジョージが言っていたことって?」「ジョージ様にお伝え下さるかしら。船を沈めるよう命令なさったのは、ニコラス・マイヤーズ大統領だと言うことを」 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.29
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結局はジョージの用意してくれた車で私は一人、ホテルに向かった。車に身を沈めると私はさっきの名前を呪文のように口ずさんでいた。「TORU FUJIEDA……」やがて車はホテルの玄関に横付けされた。今まで泊って来た小さなペンション風のホテルとは違い、大きくて近代的なホテルが目の前に現れたので、私は驚きつつも、建物を見上げた。NYの摩天楼のように高く聳え立つ建物の上を、ヘリコプターが旋回し、ホテルから出てくる人々が空を見上げていた。「珍しいですね。こんなところをヘリが飛ぶなんて」運転手も車から降り、空を見上げた。しばらくするとエントランスホールの方からざわざわとしたざわめきが起こり、人垣が二手に分かれた。そして、その人垣の奥から出てきた二つの陰に私は息を呑んだ。「ケイト!」ケイトは直ぐに私に気づいたようで、車の横に立っている私の方をチラリと見ると、瞳を伏せてその後にいる陰の方を恐る恐る振り向いていた。……グレアム?!私は慌てて車の陰に回り込むと、姿を隠した。どうしてあの二人がここに?車の陰に身を潜ませながら、グレアムに見つからないことを必死で願っていた。お願い……ケイト……どうか、見逃して。胸で十字を切り、手を合わせ指を組んだ。「マッカーシー様でございますか?」振り向くと私の背後に帽子を目深に被った紳士が立っていた。「こちらをケイト様よりお預かりして参りました」私は男から差し出された封筒を手に取り、中を開けてみた。「……鍵?」“Room Number1076”と刻印された鍵を掌に乗せ、私は男のいた方を振り返った。だけど、もう男の姿は既に無く、私は震える手で鍵を握り締めた。これはケイトからこの部屋に来いということなのかしら…………行ってはいけないのかもしれない。だけど、あんな風にケイトに憎しみを抱かれたまま別れるなんて嫌!私は鍵をバッグに忍ばせると、深く深く深呼吸し、ホテルのエントランスをくぐり抜けた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.28
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「ジョージ様がお望みの顧客リストの件でございますが……」支配人のケストナーがパソコンを打ちながらファイルを開き、画面を指でなぞった。「もう長年お取り引きのない方々は、この方々でございます」ジョージはじっと画面を見据えると眉根を寄せて、「エーファ……」と小さく口ずさみ、慌ててファイルを閉じた。「どうしたの?ジョージ?」「いや。なんでもない。次のファイルを見せてくれ」「では“F”から“J”までで宜しいでしょうか?」ジョージは軽く頷き、次から次へとファイルに目を通して行った。やがて、長く掛かりそうだからと私のためにホテルを手配し、運転手を呼び寄せた。「一緒にいたいわ」「甘えん坊」ファイルに目を落としながら、ジョージはクスリと笑った。「あともう少し支配人と話があるから先に帰ってろよ」「あと少しなら待ちたいわ」「邪魔」私がぷぅーっと頬を膨らませて見せても、ジョージは嬉しそうに笑うだけ……「シャワーでも浴びてベッドで待ってれば?」ふくれっ面のままの私の手を引き、ジョージがいたずらっぽい目で、頬にキスをしながら耳打ちした。私は拳を握るとジョージのミゾオチにパンチを入れ、真っ赤な顔を両手で隠した。その瞬間、笑うジョージの眼があるファイルの一点を凝視し、そのまますぅーっと笑みが引いた。「TORU FUJIEDA……?フジエダ??」「藤枝?藤枝ってまさか先生のこと?」「いや、違うな。あいつはTETSUYA(哲也)だったろ?」「ええ……」じゃぁ……、誰なの?この人は?私は「FUJIEDA」のネームをじっと見つめた。そして、この「TORU FUJIEDA(藤枝徹)」の名前を見ながら私は不思議な感覚に囚われていた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.26
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タクシーは古びた赤レンガ造りの4階建て位の建物の前で止った。ジョージはポケットからタクシー代とチップを払うと、もたもたしている私の腰に手を回し強引にタクシーから引き出した。「ここが銀行?!」「そう。ここの3階」「3階だけ?」「……みたいだな」ジョージは地図と銀行の所在地の書かれた書類に目を落とすと、「間違いない」と建物を見上げた。小さなエントランスホールには確かに屈強そうな体格の良いガードマンが2人程立っていたけれど、その外観は本当に銀行なのかと疑うくらい普通の民家のような……ううん、むしろ質素なお家と言ったような佇まいだった。「ようこそ、お待ち致しておりましたジョージ様」声のする方を見ると、かなり背の高い白髪の紳士が階段から降りて来た。大きい!この人、凄く大きいわ!私はポカーンと口を空けて大男を見上げた。ジョージだって背が高いけれど、この老人はそのジョージよりも頭ひとつは背が高くて、私は眼を見張った。「初めまして。私、支配人のリヒャルト・ケストナーと申します」前かがみになりながら差し出された手に私の手はすっぽりと包まれてしまった。「昨日はすまなかった。行くと連絡をしておきながら来れなくて」「よろしいんですよ。ジョージ様。あなた様は当銀行のオーナー様であらせられますから」「とにかく、すまなかった」神妙な面持ちで握手を交わしたジョージに、この銀行は来訪者の受け付けは1か月前でないと受け付けないのであり、その他の変更は一切聞き入れない規則になっていることを聞いた。「プライベート・バンクだからな」「プライベート・バンク?!」3階の扉がすぅっと開くと私は更にポカンと口を開けた。何も無いわ。机とソファと……テーブル。それからローチェスト。殺風景なフロアには3人の男性が大きな椅子に腰掛けて優雅に万年筆を握り、書類の上を滑らせていた。奥の個室に通されソファに腰を下ろすと、支配人は穏やかな口調で私に話しかけてきた。「アリシア様は、プライベート・バンクは初めてのようですね」「え?!ええ……。おじい様やマッカーシーの持っているような銀行とはあまりにも掛け離れていて、正直、驚きました」「はっはっは。正直なお方ですね。ですが、当行でお預かりしております資産はその両行に匹敵するかと」「……まさか!」「そんなとこだろうな」ジョージはニヤリとほくそ笑むと、煙草に手を伸ばした。コホン!と咳払いする私の顔を見るなり、バツが悪そうに窓際に立ち窓を開け、煙を燻らせた。「この銀行は、有名なプライベート・バンク、ピクテやダリエ・ヘンチと負けないくらいの歴史ある銀行なんだ。しかも、単なるにわか成金なんかからは金を預かったりしない。だよな」ジョージの方を見ていたケストナーの目が鋭く光った。「さようでございます。私どものお客様は歴史もございますれば、そのご経歴もきちんとした審査を通過された方でないとお受付致しません」「ドルにして最低金額は1,000万ドル(1970年代当時にして24億ドル)はないと口座は開けない」「1,000万ドル……」その途方もない金額を聞いただけで私は軽い眩暈を覚えた。でも、どうしておじい様はこの銀行をジョージに託されたのかしら……楽しそうに支配人と歓談するジョージと目が合い、私はにこっと微笑みを返した。ジョージはふっと微笑むと、「ばぁか」と小さく口パクした。幸せで、とても温かい時間が流れていた……私はこの時、これが私達に降り掛かる悲劇への序曲だと言うことを知るべくもなかった。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.19
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なぜあの時、「先生」って言ってしまったの?銀行に向かう車の中で、ジョージはずっと黙ったまま……あれから私は慌ててジョージに説明をした。ジョージのお葬式から1年経って先生と再会したこと。先生が事故の究明のために手助けしてくれたこと。そして、リチャード・ヴォーンが私達の目の前で爆殺されたこと……ジョージはタクシーの中でじっと前を見つめたまま、何も言わなくて……だから私は段々不安になっていった。ようやく仲直りしたのに……なのに……泣きたくなる気持ちを堪えて、シートの上に置かれたジョージの手にそっと触れた。だけど、ジョージの冷たい手はそのままピクリとも動かなくて、私はつらくなって手を膝に戻した。もう、本当におしまいだわ。美しいアルプスの山々も、長閑な田園風景も、全てが今の私には耐え難い苦痛なものにしか見えなかった。私はバッグを手にすると運転手に話し掛けた。「止めて下さい!ハ、ハルテン・ズゥイー・ビッテ!」ジョージが驚いて、「どうした?」と顔を上げ、初めて私の目を見てくれた。「ここで降りるわ。私、空港に戻る」「何、言ってんだよ?いきなり……」「先生のことは謝るわ。だけど、このままジョージと一緒にいるのは辛いから……」「そのことは過去のことだって言っただろう。オレの中でもとっくに整理が……」「嘘!」「嘘じゃないって」ジョージは下り掛けた私の腕を掴むと、車に引き戻した。「う、嘘じゃないなら、どうしてそんな風に難しい顔で私を拒否するの?」「拒否したつもりは一度もない」「だけど、ずっと無口だわ」ジョージは深い溜息を吐くと、私の手を強く握り返した。「お前をそんな危ない目に合せてたんだと思うと、呑気にヤク漬けになってた自分が情けなくてさ……」「そんなっ……そんなことない!だって仕方なかったんだもの!」「……だけど、これからはオレが守るから」「ジョージ……」「傍に居ろよ」照れくさそうにそれだけ言うと、ジョージはまただんまりになって車外に目をやった。私、傍に居てもいいの?本当に?私はジョージの隣に腰を下ろすと、彼の肩におでこをコツンと当てた。ジョージは私の肩に手を回すと、そのままずっと優しく頭を撫でていてくれたのだった。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.13
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トイレから出てみると、既にジョージはジョージは片手をポケットに突っ込み、壁に寄り掛かっていた。だけど、私を見つけるなりツカツカと歩み寄って来て、強引に手首を掴んで歩き始めた。「痛い!痛いわ!ジョージ!!」ジョージはびくっと肩を動かすと、真っ赤になって振り向いた。「悪い。また逃げ出すんじゃないかと……」「逃げないわ。もう……」ジョージは髪をクシャクシャっと掻き上げると「悪かったな」と呟いた。「……さっき。なんて叫んでたの?」「何が?」「『アリシア!!』って言ったその後……」「ああ~。えぇ~っと。……あ……」「『あ』?それから?」私は心なしか早足になるジョージの歩速に合わせて小走りになって彼の後を追った。ジョージは顔を天に向けると、耳まで真っ赤になりながら更に速度を上げて歩き始めた。「……あほ」「ひどい!」私は拳を振り上げて、ジョージの背中を打とうとした。途端にジョージは不機嫌そうにむくれながら、私の耳に口を近づけるとそっと囁いた。「『愛してる。行くなよ』だ」ジョージを打とうとした私の手は、力を失い、そのまますっぽりとジョージの手に握りしめられた。頬が熱くて涙が零れそうになった。目を擦り擦りジョージの後をついて行きながら、ふとスタンドにある英文で書かれた新聞の見出しが目に止り、恐怖に体が凍りついた。「どうした?」「まさか……そんなこと……」黒塗りの大きな文字で書かれた新聞の記事に私は後ずさった。――――――――シカゴ・トリビューン紙のラルフ・デューイ爆死「どうしたんだよ?」訝しがるジョージの胸に飛び込むと、「先生……!」と思わず呟いていた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.12
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下り掛けたエスカレーターの途中で、背後から聞こえてくるどよめきに思わず足を止めて振り向いた。ジョージを捕まえていたはずのガードマン数人の姿は既に見えず、ジョージがエスカレーターのベルトに手を掛け、ものすごい勢いで駆け下りて来る……だ、だめよ!私は追って来るジョージに気を捕られながら走りだした。「アリシア!前!」ジョージの声に前を向いた途端、エスカレーターが途切れ、体がつんのめった。「危ない!」ジョージは私の手を掴むとクルンと体勢を変え、私を抱きかかえるようにフロアに倒れこんだ。「はぁ……。間一髪」「ジョージ……」ジョージは私を抱いたまま起き上がると、その胸に抱き締めた。「バカ野郎!何、勝手に出てってんだよ!」「だって……ジョージはもう私の顔、見たくないと……」「何、言ってんだよ」「私、先生と……」返す言葉は、ばちっと頬を打つように挟んだジョージの両手で阻まれた。「過去なんだろ?」「え?」「もう奴とは終わってるんだろう?」「せん…」言い掛けている間にも、ジョージは顔をちょっと傾けてキスをしようと迫って来た。…………臭い。お酒臭いわ!私はジョージの唇を両手で防いだ。ジョージはむっとして、私の両手を掴んで除けた。「何、拒否ってんの?」「うっ!」「何だよ。『うっ!』って……」「吐きそう……」(←注:つわり)「待てっっっ!吐くなら、トイ……うっ!」「ジョージ?」私を抱えながらジョージも真っ青だった。「どうしたの?」「やばい。オレも……吐きそう……」(←注:二日酔い)「だっ、だめーーーーーーーーーーーーーー!」真っ青になりながら私を抱きかかえ走るジョージの口を押さえ(ついでに自分の口も押え)、「ジョージの、バカ」と涙目で彼をチロンと睨んだ。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.10
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一睡もしないまま夜が明けてしまった。私はベッドで膝を抱えて、ただ夜明けを待った。やがて太陽が窓から差し込む頃、私はバッグを肩に掛け、ホテルを後にした。結局、ジョージは帰って来なかった。もうジョージは二度と私を許してなんかくれない……侮蔑に満ちたあの碧い瞳は、もう二度と私に優しく微笑み掛けてくれることはない……私は頬を伝う涙をぐいっと拭うと、手を翳し、太陽の輝きに目を細めた。屋敷を出たあの時から決心していたはずなのに。独りでアイルランドに戻ろうって……。なのに、思いがけずジョージに出会って、別れを告げられないままずるずるとこんなところまで来てしまうなんて……。私はタクシーに乗り込み、チューリッヒ国際空港へと行く先を告げた。元の位置に戻っただけ。エドから離れて、先生を忘れて、ジョージと別れて……ただそれに、ジョージに軽蔑されるというオプションが付いただけ。「Sie sehen blaß aus.(顔色が悪いですね)」タクシーの運転手の言葉に、「ごめんなさい。ドイツ語は分からないわ」と首を振って、だるい体をシートの体を持たせ掛けた。空港に到着しタクシーから降りると、山から吹き込んで来た冷風に身を震わせ、腕を抱えた。アイルランドに戻ろう。そして、まず真っ先に病院に行って、検査をしてもらって、それから……私は空港でチケットを手に入れ、エスカレーターに手を掛けた。それから、母さんと父さんのお墓に行って、シャムロックを供えよう。そして、4人で暮らしたあの家を……「アリシア!」突然耳に届いた声に驚き顔を上げ、辺りを見回した。「空耳……?」私はふっと苦笑いすると、肩から落ち掛けているバッグをしっかりと肩に掛けた。「アリシア!!……」もう一度聞こえてくる声に、慌てて後ろを振り返った。見上げるとエスカレーターの後ろから係員に腕を掴まれたジョージが何かを叫んでいた。「ジョージ!」私は進むエスカレーターの流れに逆らって戻り掛けて、止めた。ダメ!戻っちゃ、ダメ……私は、ジョージから顔を背けると急いで階段を駆け下りて行った。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.08
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春ですね~。でも、風邪引いてます。そうそう。この3月25日で当ブログも1周年を迎えようとしています。更新、滞ってます。すみません。それでも温かく読みに来て下さって有難うございます。主人公のみんなもスタート当初のティーンエイジャーの無謀さが影を潜めて筆者としても少し淋しいです。なるべくコミカルな部分を大切に(と言うよりシリアスは苦手です)第2章を書ききりたいと思います。絵も更新したいと叫びつつ、なかなか出来ないので今日見た梅??をアップします。一服の清涼剤になりますように。
2007.03.07
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先生と何か話したの?ベッドの壁際に追い詰められながら、私はジョージから顔を背けた。シラを切ったって……まさか……別荘でのこと?動揺する心臓は今にも破裂しそうにバクバクと鼓動を打ち、冷汗が額を伝った。不意に私の頬に触れたジョージの掌が冷たくて、私はびくっと体を強張らせた。「本当なのか?」「何を……」「寝た?あいつと」「あ……」心の準備もないままに投げ掛けられたジョージの言葉に、私は動揺を隠せないまま彼と目が合ってしまった。「そう言うこと、か」ジョージはスツールに置いてあったジャケットを掴むと、扉に向って歩き出した。「待って!」慌ててベッドから飛び降りた私を見つめるジョージの瞳は、今まで見たこともないくらい冷ややかで私はたちまちその場に凍りついてしまった。「お盛んだな。マッカーシー夫人。愛人まで作っていたとはね」「先生は愛人なんかじゃないわ」「それは失礼。じゃ、愛人はオレの方か」パァァァァン!!思わず振り上げた手で私はジョージの頬を思い切り打っていた。ジョージは打たれた頬を手の甲で押さえながら私を一瞥すると、そのまま勢いに任せて扉を荒々しく閉め、部屋を出て行ってしまったのだった。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.06
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どれくらい眠っていたのか分らない。西日が差し込む部屋の向こう側から流暢なドイツ語が聞こえてきて私はぼんやりとその声のする方を見ていた。「ジョージ?」声の主は奥の扉からヒョイと顔を覗かせると、「ああ。起きたのか」と私に声を掛け、慌ただしく電話を切った。「具合は?」「うん。もう大丈夫」ジョージはベッドに腰掛けると私のおでこにおでこをコツンと当てた。「熱は……ない、か」「寝たら大分良くなったわ」「ルームサービス、7時に取ったからちゃんと食えよ」「……食欲ない」「食え!」ジョージは私の鼻頭を指で弾くと、ジロリと睨んだ。「明日も具合が悪いようだったら、オレ一人で銀行に行くから」「私も行くわ!」「だ、め、だ!別に行ったからって面白いことがある訳じゃないし」私は首を振ると、ベッドのシーツを握りしめた。「遊びに行く訳じゃないことくらい知ってるわ。子供じゃないんですもの。ただ……」「『ただ』なんだよ?」「…………ジョージの傍にいたい」ジョージは途端に真っ赤な顔になって、慌ててそんな顔を見られまいとするかのように片手で顔を覆った。「ったく。何、子供みたいなこと言って……」「でも、いたい」我儘だって分かってる。ジョージを困らせるって……ううん。むしろ足手纏いだって分かってる……それでも、せめてこのスイスにいる時だけでも、ジョージの傍にいたい。ジョージは起き上がろうとする私を抱きすくめると、ポスンとベッドに倒れこんだ。「ジョ、ジョージ?!」私の唇にキスをすると、そのまま、私の肩に顔を埋めて抱きしめる手に力を込めた。「くそっ!」「ジョージ?」「あいつ……」「あいつって?」ジョージは私の言葉に一瞬、体をこわばらせた。「いや。いい。オレひとりの問題だから」「ジョージひとりの問題?何が……」そう尋ねている間にもジョージの手は私のブラジャーのホックをはずし始めていた。「ジョージ?!」「もう気持ち悪くないか?」「ない……けど。ルームサービスが来るわ」「2時間後にな」「でも……」そんなに抱かれたらやっぱり赤ちゃんに悪いのかもしれない。そう思うと自然とジョージの両胸に手を当て押し戻していた。それでもジョージは強引に私の手首を掴み、ベッドに抑え込もうとしていた。乱暴なジョージの行動に慄き、私はとっさに彼の頬を打っていた。「ご、ごめん……」私は我に返り、ジョージの頬に手をあてた。ジョージは私の手を振りほどくと、私に背を向け、顔を手で覆っていた。「抱いても……抱いても……実感がない。本当にお前はオレのものなのか?」「何を……」「あいつ、シラを切り通しやがった」「あい……つ?」「藤枝」突然、ジョージの口から発せられた先生の名前に私はただただ動揺していた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.03.02
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チューリッヒ国際空港に降り立ち、私達は石畳の街を一緒に歩いた。広い草原に山肌を移動する雲の影……つい昨日まではNYの喧騒の中にいたとは信じられない長閑な田園風景の広がる街を、ジョージと手を繋いで歩いた。タクシーに乗り込むと、ジョージは地図を運転手に渡し、銀行の場所を指し示した。「Wir wollen dazu hier gehen.(ここに行きたいんだけど)」「Es ist sehr lang.(随分、遠いですぜ)」「Gehen Sie zu dort bitte.(構わないよ)」タクシーの運転手は、肩を竦めると車を緩やかにスタートさせた。「ジョージ、ドイツ語出来るの?」「え?ああ。ちょっとだけな」「いつ、教わったの?」「……別に教わったんじゃない。リンと一緒にいた医者がドイツ語ばかり喋るから自然と簡単な会話は覚えた」それからジョージは車窓から遠い目で空を見上げた。失踪していた時期のことをジョージは今でも滅多には話してはくれない……空白の時間が私達の沈黙の中を重々しく通り過ぎて行った。途中、道が悪くなりガタガタと車体が揺れ、朝から何も食べていなかった私は空腹も手伝ってつわりを催した。「ごめ……。ジョージ……車、止めて……」「どうした?」「吐き……そう」「Halten Sie hier!(止めてくれ!)」私はジョージに抱えられるように車から降り、その場にしゃがみ込んだ。「大丈夫か?」「……うん。車に酔ったみたい……」「車酔い?」「疲れてるからかも」ジョージはじっと私を見つめた。今の言い訳で通じたかしら……ジョージに気付かれまいと私は努めて彼の瞳を見つめ返した。「ボストンからずっと移動移動だもんな。今日は銀行は止めて途中のホテルで休もう」「大丈夫。行けるわ」ジョージは私の頬を手の甲でポンポンと優しく叩くと、「ホテルを探そう」と肩を抱いた。私は肩に置かれたジョージの手に自分の頬を寄せた。「どうしたんだよ?」優しくほほ笑むジョージに「なんでもない」とだけ答えて、明日もこの幸せが続くことをそっと心の中で祈っていた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.02.26
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私は空港へ向うタクシーの中で、おじい様の机の中にあった写真の話をした。ジョージは私の話に熱心に耳を傾けながら、時折、考え込んだ。「そうか……。じゃぁ、あの銃……ワルサーPPKの『A・H』は『アドルフ・ヒトラー』だとして、問題はなぜアルバート・マッカーシーがそれを持っていたのか。そして、なぜ、オレに手渡したのか、だな」「アルバート・マッカーシーって、ケイトの……」「そう。父親だ」「だからあの時、ケイトがあの銃の意味を知っているはずだって言っていたのね」「そう……。それにリンが言うには、あの銃はオレがオレだと言う事の証だって。それに『ガーディアンとして選ばれた者』だって、さ。ったく、訳分かんねぇ……」「リンって?」「リン・イーレイ。士官学校の教官」私は初めて聞く名前に頭を傾げた。「なぜ、士官学校の先生がそこで出てくるの?」「変なヤツでさ。あいつは謎だ」「答えになってないわ」頬を膨らまし拳を振り上げた私の攻撃を、ジョージはクスクスと笑いながらヒョイっと交わした。「船を沈めた張本人さ。で、オレを助けてくれた命の恩人」私は益々頭が混乱しそうになってきた。「良い人なのか、悪い人なのか分らないわ」「悪いヤツだろう?あいつのせいで何人もの人間が死んだんだから……」私は、ジョージを失ったあの日々を思い出し、膝の上に置いた手が小刻みに震えた。もう二度とジョージを失いたくない!ジョージは私の膝の上の手をすっぽりと包むと、肩を抱き寄せた。ああ……ジョージは今、こうして生きている……私の唇に重ねられた彼の温かい唇も、肩を抱く力強い腕も……私の胸の動悸を包む手も……スカートをたくし上げ、膝から侵入する手も…………………手も??も???はっとして我に還った瞬間、バックミラー越しにタクシーの運転手と目が合った。バッチーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!「いってぇ!!」「ジョージのバカ!エッチ!!」タクシーの運転手は驚き、後ろを振り向いた。「前!前!前を!!」私とジョージは、迫りくる対向車のトラックを指差した。運転手は慌ててハンドルを切り、無事交わすと、ふーっと安堵のため息を吐いた。「もう一度、死ぬところだった……」シートに体を沈め笑うジョージのみぞおちに、私は思い切りパンチをお見舞いした。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.02.20
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翌朝、先日と同じように支配人の恭しいお辞儀に見送られ、私達はホテルを後にした。ホテルの前に横付けにされている車に乗り込もうとして、あることに気付いた。「ジョージ!お会計は?!」「いらないだろう」「でも……」ジョージは私を車に押し込むと、ドアを閉めた。「オレのホテルだから大丈夫だよ」「へぇ~……えっ?!!!『オレ』のって!ジョージの?!」ジョージは笑うと、私の頭をくしゃくしゃっと撫でた。「こないだお前とマッカーシーのパーティーに行っただろう?あの時、おじい様の遺産相続の手続きのために行ったってわけ。最初は相続はキャッシュだけって話だったんだけどさ、どうしても一部事業を引き継いで欲しいって遺言にあって……。で、あのホテルと銀行を押し付けられた」「銀行?!」「これから連れてく予定なんだけど……。その前に、他の銀行に立ち寄んないとまずいな」「お金だったら私、少し持ってるわ」「そういう用で立ち寄る訳じゃない……」それだけ言うと急にジョージは無口になって難しい顔で車外を見つめた。やがて車は銀行へ到着した。ジョージは頭取を呼び、そして私達は重厚な2重の扉になっているエレベーターに乗り込むと地下へと下りて行った。「どこへ行くの?」「地下金庫」「何か預けてるの?」「これから預ける」「預けるって……」「アンダーソン様、こちらへ」話している途中で、エレベーターは地下へと到着し、私達は大きな車のハンドルの着いた扉の前に立った。警備員がハンドルを回し、私達は扉の向こう側に入っていった。頭取とジョージが一つのボックスの前に立つと2人で鍵を差し込み、扉を開けた。「それでは、10分後に。外でお待ち致しております」「5分で十分です」「では、5分後に」頭取は腕時計をちらりと見ると私達を置いて外へと出た。ジョージは頭取が出て行くのを確認するとアタッシュケースを開け、中から銃を取り出した。「ジョージ!?それ……」ジョージが取り出した銃は先日ケイトに向けられた物と同じ銃だった。「おもちゃだよ。でもこれがあると飛行機に乗る前に検査で引っ掛かるからな」「飛行機って、どこに行くつもりなの?」「スイス」「スイス?!なんで?!」「なんでって……オレの銀行があるから」私は一瞬スイスと聞いて、何故だか不安に駆られた。そして、ジョージが銃を手にし、ボックスの中に入れようとした瞬間、戦慄が走った。「ジョージ!このイニシャルは?」「ああ、これ?A・H?それが、オレも分からない。てっきり、『アリシア・ヘイワーズ』だと思ったんだけど……」その瞬間、私の頭の中でおじい様の書斎にあった写真がフラッシュバックした。「どうした?アリシア?」「まさか……」私は思い浮かんだその人の名を発する恐ろしさに膝が震えた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.02.16
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「何を怯えてる?」私の頭に頬を寄せ語りかけるジョージの声が頭の中から響いてきた。「何も……怯えてなんか……」「自分で気付いてないのか?お前ってば、分かり易過ぎ。なんか隠してる時ほど、あんな風にはしゃぐしな」「はしゃいでなんかいないわ」「強情だよな。さて、と。口を割らせるかな」ジョージは、喉の奥をくっと鳴らし、足を引っ掛けると私をベッドの上に倒し、押さえつけた。そして私の指に自らの指を絡めると、私の頭の上に固定した。「ボストンから南下して……そしてニューヘイブンに降り立って……」ジョージの長く冷たい指先がすぅっと降りてきたかと思うと、肘を優しく撫で、キスをした。ゾクゾクとした感触がお腹の下から湧き上がり、私は恥かしい想いに顔を背けた。「それから、更に南下して……NY……」肘から滑り降りてくる指は脇を捉え、くすぐったさに身を捩ろうとしても、ジョージの強い力の前には身動きが取れなかった。「さぁ。ここからが、告白タイムだ。で、お前はどこに行くつもりだったんだよ」「ボストンに……」「嘘つけ!」「きゃーーー!」脇に添えられたジョージの手がモゾモゾと脇を擽り、私は身を捩らせた。「パスポート持ってなんで家を出る必要があるんだよ」「ひどいわ!見たのね!」「ふーん。パスポート、持ってるのか。やっぱりな」私はジョージの誘導尋問に引っ掛かった事に動揺し、努めてジョージを睨みつけた。「大方、こうやって……海を横断して……」ジョージの掌が脇から徐々に胸の膨らみを這い、最後にその頂を包み込んだ。「あの丘へ行くつもりだったんだろう?」ジョージの言うあの丘……私達が育ったアイルランドのあの……丘……掌で頂を愛撫する彼の手から逃れるように体を横に背けた。「あいつとは……あいつには離婚届も出しているし、元々、本当の夫婦じゃないしな。それでやすやすと捨てられた訳だ」「本当の夫婦だったわ!」抵抗する私のスカートを押し開き、強引に指を忍ばせるジョージの思い掛けない行動に動揺し、慌ててその手を退けようとした。「こんなにも男の体を覚えていないのに?」「あっ……」「ほら。やっぱり、きつい」「ジョージ……もう……やめ……」声が震えて泣きそうになる……「これじゃ、オレの方が拷問だな。続きはお前の体に告白させる……」ジョージはシャツを脱ぎ捨て私の涙をそっと唇で吸うと、「本当に朝まで泣かせて……やるかな?」と微笑んだ。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.02.13
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先程の書店から1マイルも歩くか歩かないかの距離にそのホテルはあった。品の良い調度品と言い、洗練された従業員のさり気ない接客と言い、このホテルがNYでも老舗のホテルとして各界著名人の密かな人気を集めているのが分かったような気がした。ジョージが一歩ホテルに足を踏み入れるなり、他のお客様の接客をしていた支配人がジョージに目を留め、笑みを湛えながら歩み寄ってきた。「これはこれはジョージ様。お久し振りでございます」私は斜め右隣のジョージの方をちらっと見上げ、ヒソヒソ声で話し掛けた。「知ってるの?ジョージ」ジョージは、「まぁ……な」と口の端をちょっと上げ微笑むと支配人と握手した。「久し振りです。今回も一泊だけですが……。部屋は空いていますか?」「喜んでお空け致しますよ。クリス!ちょっと来てくれないか?!」支配人はやはり他のお客様の接客をしている男性を呼び付けると、軽く顎を杓った。それから数分もしないうちに私達はエレベーターに乗り込み、「ごゆっくりおくつろぎ下さい」と頭を垂れる支配人の言葉に見送られて、ホテルの最上階で降りた。エレベーターホールを降りると扉は突き当たりに一つしかなく、その重厚な扉の先には広いリビングと各部屋に繋がる幾つかの扉が見えた。「……随分と広いのね」「スィートルームだからな。このホテルは……」「わぁ!!凄いこっちのベッド!!ふかふかのぽかぽかだわ!!」「……聞けよ。人の話を!」ジョージは、コートをソファの上に無造作に脱ぎ捨てると、肘掛に肘杖を付き、呆れ顔で笑っていた。私はと言うと、ふかふかベッドのトランポリンで座りながらジャンプをしていた。「全然、貧乏性が抜けないのな。世界有数の資産を有するマッカーシー財閥の奥様とは思えないよな……」「ねぇ!ジョージ!!これ羽根布団だわ!!」「……おーい。今夜使うんだから、乱暴に扱うなよ」リビングの方から冗談っぽく笑うジョージの言葉に固まって、スゴスゴとベッドから這い下りた。「ジョージのベッド……。クシャクシャにしちゃってごめんなさい」「オレの、じゃなくて、オレ達の」ソファの縁に両手を掛け、ジョージは天上を仰ぎ見ていた目でじっと私を見つめ、やがてゆっくりと立ち上がると歩み寄り、私をその胸に抱きすくめた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.02.12
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世間では春ですね~。ソロソロ。「FG2」の更新をしたいなぁと思いつつ……春だなぁ~。どこかで、イラストを更新しようと思っています。彼らも既にこの絵の当時から4年が経過。いい大人になってきている訳で。それと私も海外に行きたくなってきました。ボストン、NY等等。観光ガイド片手に彼らを大陸移動させて行くのはちと厳しい。夏までに海外に行くぞ!おーーーーー\(≧▽≦)/てな訳で、まずはいんぐりっしゅのお勉強なのね。目指せ!TOEIC850点!!(因みに現在600点。道は険しい……)そして、悲願のハーバード留学だぁ!(←あ!( ̄ロ ̄;)イッチャッタ……)お金、貯めないと。オツムも鍛えないと。夢はおっきく。願えば、叶う?!はず\(≧▽≦)/
2007.02.12
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私は大きな広告の下に平積みされた『Forbes』を手に取り、パラパラと捲った。『世界の億万長者』のランキングにエドワードの写真と記事が掲載されていた。ヘイワーズの資産を継いだ事。合併に伴い、マッカーシー財閥が抱える事業とのシナジー効果が絶大であった事。そして、何よりエドワードのカリスマ性が事業成功の牽引力となっている事……等々が4ページに亘って特集を組まれていた。私は、記事に書かれているエドワードの言葉を追った。「マッカーシー氏:確かに我が社はエクセレント・カンパニーとしてのブランド力の確立は出来ており評価は高いかもしれません。ですが、今後、10年20年と永続的に企業を継続されていくには、ビジョンを明確に打ち出し、マーケットシェアを……」見開きに載っているエドワードは、足を組み、肘掛に両手を置き、ちょっぴり微笑む顔がジョージの顔に重なり、胸が痛んだ。「記者:マッカーシー様の奥様は18歳とのことで16歳もお若いそうですが、大変仲睦まじいご夫婦だと拝聴致しました」「マッカーシー氏:そうですね。彼女は私にとって生涯掛け替えの無い女性ですから」エドの言葉にじんわりと涙が溢れた。雑誌を両手で掴み、顔を埋めると小さな声で囁いた。「ごめんなさい。エドワード……」「マッカーシーがどうしたって?」ジョージの声に顔を上げ、急いで涙を拭いた。ジョージは雑誌広告と平積みになった本の表紙になっているエドをコツンと叩くと私を睨んだ。「泣くくらいなら何で離婚届なんか出したんだよ」「……なんで離婚届って」「バトラーが破棄した。マッカーシーは見ていない。お前が屋敷から遠く離れてここにいる。これだけの条件説が与えられていて謎が解けない程、オレは鈍感じゃないつもりだけどな」「ジョージ……」「なぜ、屋敷を出た」私はお腹をそっとバッグで隠すと、俯いた。恐い……もし、このお腹にジョージとの赤ちゃんがいるなんて知ったらジョージはなんて言うかしら?困った顔して堕ろせって言うの?それとも喜んでくれるの?ううん……喜んでくれるなんて、あり得ないわ。この子は世間から祝福されない子供かもしれない……それなのに産みたいなんて間違っているのかもしれない……でも、それをジョージの口から聞かされるなんて嫌!私は血の気が引いて冷たくなった唇をきつく結んだ。「分かった。今、言いたくなければ言うな」「ジョージ……」「こうなったら、今夜は我慢比べだな」「今夜?」「朝まで時間はたっぷりあることだし」ニヒルに微笑を浮かべ、アイルランド民謡の「Believe me」の口笛を吹き歩くジョージの後を、少し警戒しながら手を引かれて本屋を後にした。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪
2007.02.07
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