いつの間にか二人ともそのまま眠ってしまったようだ。
朝日が差し込んできて、眩しさに起きてしまった。
隣にかぐや姫が横になってる。
はっとして起き上がってしまった。
胸に耳を当てて生きているか確かめる。
大丈夫。息をしている。
交わっても記憶が無いなんてことはないよな。
酒を飲んでたわけでもないのだから。
でも、自分の理性に自信がないから不安なのだ。
そのくせ、眠り姫に目覚めのキス。
舌を入れたら、かすかに反応した。
ぼんやり目を開けて、僕を見つめる。
まっすぐな瞳が眩しくて、僕が目をそらしてしまう。
「おはよう。」
無邪気な声は以前のままだ。
「おはよう。」
彼女に顔を向き直して答える。
昨夜のことは夢のようだが、本当だよな。
こうして同じベッドにいることがその証拠だけど。
彼女の裸体を思い出し、慌ててベッドから降りた。
「何か着たら」
そう言って、バスルームに駆け込んだ。
僕がここにいる間に何か着て貰わなくちゃな。
目の遣りどころに困るよ。
僕もそう冷静では居られないから。
「もういいかい?」
「まーだだよ。」
甘く間延びした声。
のんきだよなあ。
「もういいかい?」
「もういいよ。」
今度は大丈夫らしい。
安心して出て行くと、
まだネグリジェだ。
「早く服を着てくれよ」
「じゃあ服を選んで。」
甘えてるな。
といっても、彼女はあまり服を持ってないから、
選びようがない。
もっと買ってあげると言ったのだが、
遠慮してるのか要らないというのだ。
バーには貸衣装があるらしい。
まあ、そんな服を普段に着るわけにはいかないけど。
とにかく少ない服の中から、
ワインレッドのキャミソールと
黒のスカートを選んだ。
もう涼しくなってきたから、
白のレースのカーディガンも。
手渡してから、またバスルームへこもる。
まったくどっちが部屋の主か分からないよな。
やっと着替えたらしく、
僕の名を呼んでいる。
いつまでこうして呼んでくれるのかな。
十五夜といえば、もう明後日だ。
今日、明日しか彼女と過ごせないというのか。
残された日々をどう過ごそう。
仕事も休んでしまおうかと思ってるところへ
「はい、お弁当。」
と愛妻弁当?を手渡されてしまった。
「一体どうしたんだい?」
「せめてこれくらいはしてあげたいの。」
けなげだよな。
これでは仕事に行かない訳にはいかない。
「明日は休みを取ってくるよ。」
「嬉しい!」
手を叩いて喜んだものの、
「最後の日だものね。」
急にしんみりしてしまった。
僕はから元気を出して、
「何がしたい?
行きたいところとか考えておいてくれよ。」
と勢いよく言った。
そして、すぐにドアから外に出た。
涙が出そうになったからだ。
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