テン・テン・ツク・ポン・テケ・テン・テン・テケ・ツク・ポン
え〜、まいど、ばかばかしいお笑いで恐縮でございます・・・
・・なんて高座に上がるたんびに同じことを言っております・・。
そちらのお客さん、そんなに飲んでると、
寄席の打ち出しまでにゃ、酔いつぶれてますよ・・。
え〜、江戸のむかしに「負わず借らずに子三人」とか「余らず過ぎず子三人」
・・とか云われてまして、子供は三人ぐらいが丁度よい、
・・なんて考えられていたんでしょうな。
・・かとおもうと・・「死なぬものなら子一人、減らぬものなら金百両」
なぞという言葉も残っていますが、これだと少子化社会になってしまいます。
ともかく、この頃ァ、子供はもちろん両親の子であるんですが、
同時に長家みんなの子供でもあり、
さらに町全体の子供でもありまして、みんなに見守られて育った。
こんにちでも赤ん坊が産まれるときァ、母子の生命の危険がともないますが、
江戸時代には、その危険度はもっと高うございました。
母親が赤子を残して命を落としたなんて話はよくあったことで、
残された亭主は、赤子の乳をだれかから分けてもらわなければならない。
これを「乳貰い」と云ったそうですが、こんなときてきぱきと母乳を確保してくれたのが、
同じ長家に住む女房たちでございました。
「親がなくとも子は育つ」とは、この乳貰いのことでございまして、
母親がいなくとも、赤子は周囲の人の世話でちゃんと育つという意味でございます。
え〜、一方「育てたように子は育つ」とか・・「親の背中を見て子は育つ」なぞとも云われておりますが
子供さんを見てますてぇと、その親御さんがだいたいどんなあんべえの人物かってのが、
・・想像できますナ。
八
「いゃ、まだ行ってねェ・・」
熊
「おれは、いま、行ってきたとこだ・・」
八
「どうかしたか?」
熊
「なんだか知らねェが、担任の先生がぼやくんだ・・・」
八
「なんて、ぼやいてるんだ ? 」
熊
「人間の子が欲しいってんだナ・・」
八
「なにを? その先生の子は、人間じゃあねェのか?」
熊
「そうじゃねェ、・・生徒のことだ」
八
「生徒は、人間じゃぁねェのか?」
熊
「うちのせがれは人間だ!」
八
「どうも、話が呑み込めねェな・・?」
隠居
「これこれ、二人ともどうした?」
熊
「へぇ、じつは、かくかく、あ〜でもねェ、しかじか、こ〜でもねェってわけなんですがね、
・・八のやろうが、ちっとも解からねェんで・・」
八
「あたぼーよ! そんな、闇夜にカラスが飛んでるような話が解かってたまるかってんだ!
ねぇご隠居、解りますかい? このやろうの云うこと・・」
隠居
「まぁ、まぁ、・・うむ、解るようでもあるが・・、いや、解らんな。
すまないが、その"こ〜でもねェ"ってところをもう一度云っておくれでないか」
熊
「へぇ、・・こ〜でもねェ・・」
隠居
「う〜む、読めた!! その先生の言いたいことはこうだナ。
・・学校に入学する前に、人間の子としての躾(しつ)けがされてない子が多くて
困る。 ・・そういうことだろう」
熊
「そう、そう、そういうことなんで・・へぇ」
八
「始めっから、そう言ゃあいいんだ・・」
熊
「べらぼーめ、始めっからそう云ってるんでェ!」
隠居
「おまえさん達も、いちおう人の親だが、・・躾けはうまくいってるのかな?」
八
「へぇ、いちおう、親なんですがね。
・・躾けってぇほどの大それた仕事は、してねェッす・・」
熊
「へぇ、あっしも、とりあえず親でげすが、
・・躾けとか、面倒臭いことはでぇ嫌いで・・」
隠居
「これこれ、あきれた手抜き親たちだねぇ。
それにしても、ひと昔前は、たいていの家に"家風"ってのがあってナ、
・・一家の権威ある年寄りが、きちんと管理していたもんだが・・」
八
「いまは"家風"を持ってる家は、ねェんですかい?」
熊
「引っ越しのどさくさで、何処かに落っことしたかも知らねェな・・?」
隠居
「 これこれ"家風"は物ではない。
その家の"おきて"と云うか、まあ、そのようなもんだ。
いまは、核家族時代になっちまって、年寄りと別居してる家庭が大半だからナ。
そういった"おきて"なんかも、うやむやになっちまったんだナ。
それと、出来ちゃった結婚が増えてることもあるな」
八
「へぇ、そりゃまあ、どうしてで・・?」
隠居
「出来ちゃったァ!? しょーがねェから結婚するか・・。
生まれたァ!? まあ、なんとかなるだろう・・ってとこじゃないかな」
熊
「あっしんとこと同じだ・・」
八
「行き当たりばったりだな。あっしんとこも、まあ、そうだけど」
隠居
「親となる心構えもなにも出来て無いうちに、赤ん坊のほうが先に生まれて来ちまう・・」
熊
「その心構えってのを教えてくれる師匠が、何処かに居ねェんで・・?」
隠居
「学校で教えりゃいいのかもしれないが、・・・そうでないと、
無免許で車(子供)を運転(養育)してるようなもんだナ」
八
「へぇ〜、あっしらは無免許で車(子供)を運転(養育)してたんだ・・!」
教師
「・・・(この無責任おやじめ ! ) そうでしたか、
・・じつは、私も教師には向いてないような気がして、
・・目下、学級崩壊させてまして・・」
八
「・・・(このインチキ教師め ! ) 先生も大変でしょうが、
・・自信を持ってやってくだせぇ」
教師
「地震ならありますけど・・」
八
「へぇ、・・?・・してその心は?」
教師
「はい、・・毎日揺れてます」