出羽の国、エミシの国 ブログ

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2016年09月04日
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 浪士組 壬生村 に分宿した。夕刻、浪士組の全員が 新徳寺 の本堂に集められた。この時、(黒幕に徹していた?)八郎が前面へと出る。
(以下は、俣野時中(鶴岡市)氏の伝える内容だが、大川周明「清河八郎」と徳田武「清河八郎伝」の2人の作家が訳した2つの著書から引用した。)

 八郎は自ら正座について、「この集まりは浪士だけのもので、取扱・取締役という幕府の役人には関係のないことだ。」と前置きして次のように滔々(とうとう)と語った。

「“今回、我々一同は幕府のお召しに応じて上洛したが、幕府からは も受けていないのだから、決して 将軍家を護衛 するのが主旨ではない。
尊皇攘夷の先鋒 たらんが為である、依って一同の素志を天聴に達するため(平素から抱いている志を天皇に届けるため)、 学習院(御所) 上書 致したいが、無論異存のあるはずはなかろう”」 (八郎伝/ 徳田武)。

 そして、「堂々と予(かね)て起草して置いた左の 上書 を読み上げた・・・」(「清河八郎」/大川周明)

 その様子は、「八郎の威勢というのは鬼人の如く、実に非常なるのもの(普通ではない差し迫った状態)で、誰も恐怖して物を云うことが出来なかった」、「出しぬけに“主立(おもだ)つものを呼んで、御所に建言するが、異論はない筈であるが・・・”、と満座を睨(にら)み廻したる権幕おどろくばかり・・・」だったという。

 上書の読上げ後、浪士組全員へ上書への 同意者 署名 を求めた。
・・・「ところが 異論 がない」。

幕府が攘夷の皇命を遵守すべきこと 」、「 浪士組を何処へでも派遣すべきこと 」の2点に要約されるという。(清河八郎伝/ 徳田武)

 突然の出来事とその緊迫した雰囲気にのまれ浪士組の多くが同意書の是非にすぐに判断がつかなかったからなのか、 攘夷 という目的がもとから浪士組の結成にあったものなので特に反対する理由がなかったからなのかは判らない、この時点では特に異論はでなかった。
(その後、江戸に帰るという直前になって、将軍の護衛と幕府に対する姿勢(態度)についての問題で約1割の離脱者(後の新撰組)がでることになる。)

同意書 だが、形式はあくまで個人の自主的な(同意の)署名としているところが興味深い。この「 天皇への上書 」についてあらかじめ聞かされていたのはごく一部の人だけだったと言われている。

 その結果、1人を除き浪士組の全員の署名を集めることができた。
(署名をしなかった1人(池田徳太郎)については、後に解説したい。)


  話は変わるが、高校生の時、京都への修学旅行で 新徳寺 へいった。80年代の古い話になる。グループに新撰組の土方が好きな軽いノリの子がいて自由行動で選んだ。当時、八郎たちが集まった寺を 壬生寺 と考えていて(確か当時の本にはそう書いてあった)、タクシーに相乗りし壬生寺まで行くことにした。タクシーの運転手さんに「壬生寺まで・・・」と告げると、運転手さんが珍しい場所に行くものだと不思議に思われたのか、「新撰組?それなら新徳寺だよ。」と教えてくれた。おかげで、無事 新徳寺を訪れる事ができた。「間違って行く人が多いんだよ。」とも言われていた。今思えば、直接壬生寺に行き、あやうく勘違いしたまま浪士組がいた場所に行ったつもりになるところだった。当時の運転手さんに「教えてくれてありがとう!」とお礼を申し上げたい。

 高校生だった当時の新徳寺の印象は、有名な京都の神社、仏閣や、田舎の境内が広い寺とも違い、多くの浪士が集まった歴史的な場所にしては境内は決して広い感じのものではなかったこと(決して狭いわけではないが)、お茶の会合など開いてそうな雰囲気で京の町の住宅街にひっそりとたたずんでいる印象のお寺だったことだ。当時、お堂の扉は開いていなく中は見られなかったと思う。特に清河八郎とか浪士組とか新撰組とかの観光のアピールもないのは、檀家さんが京都の一般の人たちのお寺なのかもしれない(残念ながら現在は非公開となっているようだ)。八郎が来ていたと思えば特別な場所だった。

(敬称略)

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 ※"清川口戦争/戊辰戦争編"はこちらの本でまとめてご覧になれます。
👉 出羽庄内 幕末のジレンマ(2)(清川口戦争/戊辰戦争編) Kindle版





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最終更新日  2020年05月10日 13時23分58秒
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