鈍行列車でいいのなら

鈍行列車でいいのなら

喜劇役者

喜劇役者

きょうも私は 舞台に立って
おどけた役を演じてみせる
あんたはいつも お客の一人
こんな私を 笑って見てる

きれいな服を着たお姫様や
素敵な役は回ってこない
あんたは 私の愚痴を聞きながら
「おまえにゃ 今の役が似合う」と笑う

せめて せめて あんたの前じゃ
きれいな女を演じてみたい
喜劇役者の私だけれど
あんたが好きで 大好きで


舞台の私と ほんとの私
どちらがどうだか わかりゃしない
だから友達は私のことを
真抜けた女と思ってるだけ

知ったかぶった顔で なぐさめてみたり
あんたは私に優しいけれど
心の中じゃ 真抜けたやつと思っているようで
気が気でならない

せめて せめて あんたの前じゃ
可愛い女を演じてみたい
喜劇役者の私だけれど
あんたが好きで 大好きで

++++++++++++++++++++++++++++++

中学時代、私が音楽と同じくらいに夢中になっていたのが
演劇部での活動でした。
残念ながら芝居の方は「下手の横好き」の域を出ず
(音楽も似たようなものだったかもしれないけど……)
高校途中で挫折してしまいますが、
実は中学3年の時
ただ1度だけ全校生徒の前で主役を張ったことがあります。
それも「どろぼう」の役で(-"-;)

芝居の名前は「どろぼう仙人」(作・津島昇作)。
登場人物はわずかに4人の短い芝居でした。

ちょっとドジでまぬけなどろぼうコンビの、
私はさらにまぬけな弟分。

どろぼうに失敗して、
「たちの悪い仙人がいる」とうわさのある山奥に
やっとこさ逃げてきた2人が野宿の支度をしていると
そこに幼い親孝行の兄妹がやってきます。
母親の病気を治す薬をもらうため
仙人を探しに来た兄妹に見つかってしまった2人のどろぼうは
よりによって仙人に間違えられてしまいます。

2人はとっさに
「こりゃ、子供たち、わしは仙人じゃ」
と仙人のふりをするのですが
「お薬をくださいますか」
と2人に頼まれ大弱り。
その場しのぎで
「近くの沼にいる金色のコイが薬なのだ」
と逃げを打ちますが、
まともに信じた兄妹が、そこで釣りを始めたのです。

良心の呵責を感じるどろぼうたち。
本当のことを言おうとした瞬間……
なんと本当に 金色のコイが釣れてしまった……!

腰を抜かしたのはどろぼう達の方。
「仙人さま、ありがとうございます!」
喜び勇んで帰って行く兄妹を見送りながら
私(弟分のどろぼう)は叫びます。

「おれ、おれ、仙人になるよ!」

……とまあ、こういう内容のコメディーなのですが、
どういうわけか、これが大受け。
翌日から私は学校じゅうで
「あっ、どろぼうさんだっ!」
(誰も「仙人さまだ」とは言ってくれなかった)
と指をさされるほどのアイドル(爆)になってしまったのです。

この時の経験をもとに書き起こしたのがこれ。
この歌に限らず 私はこのあとも
「舞台」や「役者」を題材にした詞を
いくつか書くことになります。
大根役者でもなんでも 舞台に対する愛情は強かったからね。

曲はこれも「ギターの弾き語りが似合う歌を」ということで
作りました。
当時書いた歌にはずいぶん
「あんたとあたい」だったり「おいら」だったり
そういう言葉を多用していました。
やはり当時の長渕剛やチャゲあすの影響が大きかったんだなあ。


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