約束さ永遠のミステリ~ 妄想と考察と日常の闇鍋

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2025年11月18日
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テーマ: 読書感想文(739)
カテゴリ: 読書感想
私は好きなものは最後に食べる派だが、この本はまさにメインディッシュである。
なにせ私は10代の頃から有栖川先生のファンなのだ。
エラリー・クイーンの『エジプト十字架の謎』を読んで以来、私はずっと論理系ミステリーに夢中になっている。
有栖川先生とクイーンの関係については、ぜひ調べてみてほしい。作風や名前の由来まで含めて、面白い発見がたくさんある。
今回感想を書くのは、有栖川有栖『有栖川有栖に捧げる七つの謎』。
予想をはるかに超える名編ばかりで、「ここまでやりますか!?」と叫びたくなる。
(Amazonより引用)
本作は、有栖川有栖デビュー35周年を記念して、7人の作家が“捧げた”トリビュート短編集だ。
“トリビュート”とは敬意を表するという意味(検索結果による)。
有栖川有栖をテーマに各作家が書き下ろしたもので、バリエーション豊かで読み応えがある。
火村&有栖シリーズ、山伏地蔵坊、江神二郎シリーズ、さらには『マジックミラー』のオマージュまで。
元ネタを知っているほど楽しめる構成で、35周年にふさわしい贅沢な一冊だ。
もちろん、有栖川作品を読んでいなくても、参加作家の力量が高く、十分に面白く読める。
以下、各話の簡単な感想を。
・縄、綱、ロープ
火村シリーズの完コピ二次創作のような完成度。
原作の中に紛れても違和感がないほどで、火村と有栖のやり取り、ラストのセリフ回しまで原作そのもの。
推理部分も非常に満足度が高い。
・クローズド・クローズ
火村と有栖が女子高に潜入する——もうその導入だけで面白い。
序盤で真野女史が登場するのも嬉しいファンサービス。
殺人事件は起きないが、女子高生たちの友情と葛藤が丁寧に描かれ、ラストはしっとりと情緒的。
タイトルは“服(clothes)”と“閉じる(close)”を掛けた言葉遊びだろう。
・火村英生に捧げる怪談
タイトルは『火村英生に捧げる犯罪』のもじりか。
短い怪談の謎を火村が理屈で解き明かしていくが、最後の話には本物の幽霊が出てくる。
ラストに登場する“心霊探偵”が有栖川作品のキャラと知り、後書きで驚いた。
・ブラックミラー
火村は登場するが、有栖は出ない。
随所に『マジックミラー』のネタが散りばめられている。
余呉湖の事件とは、あの作品のことだろう。編集者・片桐が両方に出るので、世界線が繋がっている可能性も。
この話の火村は、酒の影響もあってか少し言い回しがきつい。
相手が有栖でないと塩対応なのかもしれない。
・有栖川有栖嫌いの謎
有栖川有栖の“本”そのものが題材。紙の本でなければ成立しないトリックが光る。
トリビュート企画でこのネタは大丈夫なのかと心配になるほどだが、後書きの有栖川先生はむしろ楽しそうだった。
・山伏地蔵坊の狼狽
シリーズ未読だが、非常に魅力的な設定。
不思議な山伏が語るミステリというだけで惹かれる。
『ブラジル蝶の謎』へのオマージュもあり、蝶の標本に囲まれた死体の描写が幻想的。
・型取られた死体は語る
物騒なタイトルだが、実際には殺人は起こらない。
ミステリ同好会の先輩が仕掛けた、悪趣味な“いたずら”の顛末である。
注目すべきは動機の部分で、登場人物たちの感情の揺れが見どころ。
学生時代の有栖の最後のセリフが、不思議に爽やかな余韻を残す。
文庫サイズの短編集とは思えない充実ぶりで、気づけば一気に読了していた。
クオリティの高い同人アンソロジーのようでもあり、これが商業出版で読めるのは贅沢の極み。
正直、このレベルの同人誌がイベントで1000円なら即買いである。
(実際、これより薄くて高い同人誌はたくさん持って…ごほんごほん。)



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最終更新日  2025年11月18日 16時36分46秒
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