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七月のある夏の暑い日のこと。水道水に手を浸していて涼んでいた僕は、キシンクの隙間から数匹の小さな蟻が現れ、おやつにと大切に取っておいた僕の桃を食べるのを目撃した。その日から蟻は甘い匂いになった。そしてその匂い故に、彼らはもっと大きな蟲の餌食となった。大きな蟲は、甘い匂いこそしなかったものの、小さな猫の餌食となった。猫は僕に飼われていたが、僕の餌食にはならなかった。でも、どこかの車の餌食になってしまった。僕はパパとママに飼われていた訳ではなかったが、僕は高校を卒業するまで、目に見えない鎖と目に見えないプライドに締め付けられていた。それは僕の就職と共に切れるものだと思われたが、実際には僕が結婚した後まで形を変えて続いた。なにも僕は、すべての頂点に立ちたかった訳ではない。しかし還暦旅行でパパとママが乗った電車が転覆し、瓦礫の中の二人の遺体を見た時、僕はなんぴとも侵すことのできないピラミッドの頂上に立ったような感覚に襲われた。それはあまりいい気持ちではなかった。まるで不用意に積み重ねられたレンガの壁の上でダンスをするほどの危うさを秘めており、僕はその日のうちから超人的なバランス感覚を強いられた。そしてそれは一〇年間続いた。永遠に続けられるようなことでも、所詮はこの世界のこと。哀れな王様は、何の前触れもなく、心臓の病気でぽっくり逝ってしまった。つまりこの僕の三十数年に及ぶ人生は、蟻のようでも大きな蟲のようでも、また猫のようでもあった訳だ。僕は、パパとママの息子でありながら、彼らのようにはなれなかった。それはなんて素敵なことなのだろう。なんてことはない。それだけのことだ
2007/05/30
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