Brog Of Ropesu

Brog Of Ropesu

2011年11月27日
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カテゴリ: 些末な日常






~研究所突入より少し前~






「知ってた?貴女、学生時代はモッテモテだったのよ?」










「え、それはねーさんじゃ……」









「”将を射んと欲すれば先ず馬を射よ”……私は貴女に近づくための……いわば踏み台ってところね。だからお誘いが多かっただけの事よ。

ホント……昔からいつもそうだった。

考えてもみなさい。姉妹の中で一番美人でおっぱいも大きい貴女がモテないワケないでしょう?」










「でも、私はこの容姿のせいでイジメられて……それで今でも人前に顔を晒せなくて……」










「思春期の男の子なんて、そんなモンよ。好きな娘の気を惹きたくて、強引で無茶なアプローチをしちゃうだけ。













「え、うそ……そんな。どんな時でもねーさんは私の味方だったじゃないですか!」












「ふふ……そんなに焦らないでよ。”だった”って言ったでしょう? 過去の話。今はソフィーも貴女も大切な妹よ。

有事には、あれだけ弁が立つのに……ホントに自分の事には盲目なのね。今まで”交渉のルズリハ”に言い包められた輩がこの光景を見たら、悔やんでも悔やみきれないんじゃないかしら?

……ねぇ、ロザリィ?覚えてる?私って昔はすっごい根暗だったじゃない?」











「……うん。ねーさんは文学少女って言葉がぴったりの大人しい子だったよね。でも、急に今みたいな性格と姿になったから私も当時は驚いたよー」











「……私ね。学生時代に好きな人がいたの。

その人は、明るくて元気な子が好きって事ある毎に言っていたから、すっごく努力したわ。
ビン底みたいな眼鏡はやめて、化粧も覚えて、他人と良く話すようにして……社交的になれたのは、あの人の御蔭だと……今でも思ってる」










「へー……ねーさんにそんな人が居たなんて初耳だなー。誰だろう?私も知ってる人かなぁ?」










「ええ、知っているわよ。あの人はロザリィ?貴女と交際したくて私に接触していただけだったんだから。

……でも、貴女は断った。



……凄く惨めだった。あの人の為に努力していた自分がとても滑稽だった。
幾ら私が頑張っても結局の所……あの人は最初からロザリィしか見てなかったんだから」











「……私は、そんなつもりじゃ」












「解っているわ。貴女に悪意が無い事くらい。いつも私を慕っていたしね。

……だからこそ、この悔しさの行き場が無かった。



両親も親類もみんな貴女だけ可愛がった。私もソフィーも”ルズリハ・サンダース”のオマケに過ぎなかった。幼い頃からずっとね」










「……そんな事、気付かなかった。ずっと腫れ物みたいに扱われていると思ってたもの……だから、いつも堂々としていて……私に道を示してくれたねーさんが憧れだった」









「夢を壊して悪いけれど、貴女の姉は俗物で嫉妬深い……ろくでもない姉だったって事よ。幻滅したかしら?」










「ううん。全然。寧ろ、尊敬したかな。ねーさんには敵わないなぁ……って。
私が、そんな環境だったら長女としての責任とか使命だとか全部かなぐり捨てて逃げちゃうモン。

うん……やっぱりねーさんは立派で私が誇りに思う最高の姉だよ」











「買い被り過ぎね。……ただ、いつも必死だっただけよ。

色々と思うところはあっても、やっぱり私は貴女達の姉だからね。常に妹たちをサポートできるよう頼られる存在じゃなきゃダメだから……

アンタ達が優秀すぎて常に死に物狂いだったのよ?油断してると、すぐ追い付いてくるし」












「うっそだー!ねーさんはいつも涼しい顔で全部こなしてたじゃない。御蔭でいつも劣等感ばっかりだったのは私の方だよ」










「そう見せていただけよ。白鳥は優雅に泳ぎつつも、水を掻く姿は見せちゃ台無しだからね」










「うふふ、私ダメダメだなぁ……誰の心でも読めるつもりだったけれど……一番身近な人のが読めてなかったなんてさ。

姉さんには……やっぱり敵わないよ」











「ふふん。お姉ちゃんはいつだって偉大なのよ」











「こうして話していると、つい最近の事も遠い遠い昔の事みたいだね。

どんな時だって効率重視のねーさんが、こんな場面で思い出話なんて非生産的な事するなんて、意外だったしね」









「確かに論理はいつだって必要よ。……けどね、無駄な事もするし、割り切れないのが人間なの。

効率化の行き着く先は……感情や意志すらも部品に組み込まれたディストピアでしかないもの」










「じゃあ、このお仕事が終わったらさ、みんなで旅行でも行こうよ。ねーさんが前から行きたいって言ってたドンカスターになんか行ったりして……」









「たまにはいいわね。そうね。冷凍庫でトロットロにしたウォッカでも飲みたいわ」










「じゃあ、ねーさんの好きなアレ用意するよ。……ほら、何だっけ?物騒な名前の……何回も凍らせて作るヤツ」










「タクティカル・ニュークリアペンギン!でかしたわロザリィ!いよいよ任務終了が待ち遠しくなってきたわね」









「じゃあ、おつまみはみんなで食べられるすっごくおっきなアップルパイを焼くね。 最初の乾杯はホワイト・ラムのオレンジ割りでいい?」









「Non!そのカクテルはナンセンスよ。そうね……ギムレットなんかどうかしら?」











「……ん。ねーさん。もうそろそろ会議が始まりそうだから一旦通信を切るね」











「じゃあ、”さいご”に……今夜は月が綺麗よ。ロザリィ」









「ねぇ、ねーさん?……私ね。ねーさんが私のねーさんで本当に幸せだったよ!」







~~
~~~~










兵士「もう、良いのか?……では、こちらへ」











(今までありがとうねーさん。もう大丈夫。ねーさんから貰った強さと勇気があれば一人でも……どんな困難でも……超えていける。だからもう……こんな仮面になんか頼らなくても大丈夫)










「ええ。案内をお願いできますか?」






兵士「御意のままに」









(ソフィーちゃんから貰ったこの僅かな時間……無駄にせず必ず使い切ってみせるから……)








兵士「今なら、まだ間に合います。……逃げるつもりはないのですか? 相手は話の通じる相手ではありません。私の減給で済むならば――」










「それ以上は言ってはなりません。……何でも力で解決しては言葉が何の為にあるのか解らなくしまいます。

マザーグースに於いて、コマドリは”言葉”。即ち命に等しい大切なモノなんです。

言葉は私を守る盾であると同時に、己が意志を貫く武器でもあるから」









(だから、これが剣の一つも持てない私の……唯一できる戦い方)








兵士「私の立場で言う台詞ではありませんが……どうか、ご武運を」







キィ……












「……さぁ、交渉のテーブルにつきましょう。共和国代表、連邦の有力者方……並びに列強国の皆々様方。

これから先は私、ルズリハ・サンダースが英雄の代表です」








(さぁ、私の戦いの始まりだ。……時間が許す限り。私にはもう、時間は無いから―)








続く





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最終更新日  2011年11月27日 21時23分49秒
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