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4月11日 女川は曇り空。午後からは本格的な雨となりました。
女川町仮庁舎を訪問し、市議会議員としての行政調査。
企画課の防災部門、原子力対策部門、および教育委員会の皆さんと
大震災当時の状況についてヒアリングを行いました。
その概要は以下の通りです。
<企画課 防災係、原子力対策>
1.大震災前後における、原子力政策への町民意識の変化
(1)女川原子力発電所は全ての原子炉が設計通りに自動停止し、現在も安定した状態で安全に停止していること、また、津波災害時に住民の避難場所として開放されたこともあり、東北電力および女川原子力発電所に対する町民の信頼度に大きな変化は無い。
ただし、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故により、水産物や農産物の出荷に影響が出ており、原子力政策に対する不安はある。
(2)町外住民から、原子力発電所再稼働に反対する請願が女川町議会に提出されたが、反対多数により不採択となった。これは、大部分の町民の意識と同じと考えて差支えない。
2.既存防災マニュアルの問題点、新防災マニュアルの課題
(1)大震災直前に防災マニュアルが完成したが、津波被害により全て滅失した。町役場職員は、所属部課や事前に定められていた役割分担にかかわらず、被災現場の状況に応じて、必要な措置を柔軟に講じることが出来た。
マニュアル通りに対応していたら、組織縦割りの弊害や固定観念によって、効果的な対応ができなかったかもしれない。
(2)新防災計画は、まだ策定されていない。当面は、復興作業に注力せざるを得ない。
(3)平成22年2月28日のチリ沖地震による大津波警報で大きな被害が無かったこと、今回の大津波警報の想定高さが6メートル程度だったこと、警報が発令されてから津波の襲来まで時間があったこと等により、心のどこかに油断があったかもしれない。
今後は、大津波警報が発令されたら無条件に最大の警戒をする意識を高めなければならない。
3.他の自治体への協力依頼
(1)瓦礫処理が進まないことには、復興が捗らない。すでに東京都が瓦礫処理に協力しているが、さらなる広域処理への協力をお願いしたい。
(2)被災地ツアーを実施している自治体もあるが、女川町には受け入れる十分な宿泊施設がなく、現状では積極的な観光行政を推進できない。
<教育委員会 教育総務課>
1.地震発生当時における教職員・生徒児童の避難状況
(1)大震災発生時、既に下校した学校、授業中の学校があり、校内にいた児童生徒は、そのまま校内に待機させた。
保護者の一部が児童・生徒の引き取りに来たが、大津波警報が発令中であったので校内待機を勧めた。校内待機に同意しない保護者を説得中に大津波が襲来したので、結局は校内待機となって難を逃れた。すでに下校していた児童・生徒の4名が、津波の犠牲となった。
2.既存防災教育の効果、今後の防災教育・原子力教育の課題
(1)津波の歴史については、学校教育や各家庭での言い伝えにより、児童・生徒たちも十分に理解しており、大津波警報発令中は帰宅することなく、高台に建設されている学校内に待機できた。
(2)昨年10月に、教育振興基本計画に「防災・減災教育の推進」を追加した。 その概要は以下の通り。
「防災・減災教育の実施」
児童生徒に災害時の心構えや対処方法などを学ばせるために、学校と地域、行政とが連携した町をあげた避難訓練を実施。
専門家を講師として迎え、児童生徒に地震、津波等の自然災害への正しい知識や防災対応能力を身につけさせるための授業を実施。
「安全マップ作成」
地震や津波が登下校中や放課後などにも起こる可能性があることから、今回の津波による冠水地域や災害時の避難場所を明記した「女川町安全マップ」を作成、配布し、家庭や地域でも自助、共助の重要性を始めとした災害時の心構えや対処方法などを確認し、危機意識を高める。
防災の観点から、津波や災害に関する地域の言い伝えや土地の記憶などの歴史的資源を学ぶ機会を創る。
「原子力防災安全教育の推進」
福島第一原子力発電所の爆発事故を踏まえ、原子力発電所立地自治体として、子どもたちの発達段階に応じた、原子力の有効性と放射線の健康への影響などに関する、原子力に関する正しい知識を身に付けさせる。
毎年実施している原子力防災安全訓練により、万が一放射性物質による汚染が起きた時の対応能力を身に付けさせる。
【小生のコメント】
女川町においても、原子力発電所立地を受け入れるに際しては、他の自治体と同様、町を二分する論争があった。リスクを承知しながらも、高度経済成長期の国策である大量電気供給の大義、地元経済活性化のために、あえて原子力発電所を受け入れた。
受け入れに当たっては、最悪の地震被害を想定し、他の原子力発電所よりも高台に建設し、また高めの防波堤を設置するなど、標準よりも高い建設費を要したという。
今回の大震災に際しては、震源に最も近い原子力発電所であるにもかかわらず、爆発事故は起こらなかった。外部電源の一部が破損したものの、原子炉の冷却はマニュアル通り進み、また津波被害は一切なかった。
東北電力は日頃より地元住民との交流を重ね、女川町と良好な関係を維持していた。大震災に際しては、テロ対策のため公開しない発電所内に住民を誘導し、避難所として施設を提供した。町民の発電所に対する信頼感は、大震災前とそれほど変わらないようだ。
先日も、女川町外の住民から町議会に対し原発を再稼働させないことを求める請願が提出されたが、これは不採択となった。また、町内では再稼働反対を唱える運動も見られず、冷静に対応している模様。
各地の自治体では、脱原発や再稼働反対に関する動きがあるが、すべてのリスクを理解したうえで、冷静な対応をしている原発立地自治体の住民の気持ちを考慮する必要がありそうだ。
女川町では、他の被災地と同様、瓦礫処分の遅れが災害復興を妨げる大きな要因となっている。東京都は放射線の測定を実施し、安全を確認したうえで瓦礫処分に協力している。こうした動きが全国に広がることを期待したい。
復興に向けて最大限に努力する町役場職員、日常生活を取り戻そうと努力する仮設住宅の住民、経済立て直しのため前だけを見て頑張っている商店街のみなさん、人口流出が激しい中あえて故郷に残り町の伝統を守ろうとする若者たち・・・・の声を聞き、またその姿をつぶさに見て、小生にどんなお手伝いができるか真剣に考えた。
遠い地に離れた一市議会議員に過ぎない小生に、出来ることは少ない。しかし、幼少の頃を過ごした女川町を定期的に訪れ、町民の皆さんが希望することを丹念に聞いて、微力ながらその実現に向けて今後とも取り組んでいきたい。