─ 灼熱 ─

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2006年04月28日
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ロシアとウクライナの「ガス紛争」が価格合意したのは1月4日で、両国を代表していたのがガスプロムとナフトガスだった。このとき最終的に合意した内容は、ガスプロムがウクライナ向けに230ドルで同社とオーストリアの銀行(Raiffeisen Bank)が設立した合弁会社「ロスウクルエネルゴ(RosUkrEnergo)」に販売し、この合弁会社がナフトガスを通してウクライナに95ドルで天然ガスを供給するというものだった。ロスウクルエネルゴは、ガスプロムから230ドルで購入したガスを中央アジアから購入する低価格のガスと“価格を混ぜる”ことでウクライナに95ドルでガスを供給している。

ロシア・オーストリアの合弁会社ロスウクルエネルゴという謎の会社はスイス籍になっており、ガスプロムの出資比率は50%、残り50%をオーストリアのライファイセン銀行(傘下のライファイセン・インヴェストメント)が所有した。

ロスウクルエネルゴの所有構造などが不明瞭だとして調査をしろと発言していた「ガスの女王」ティモシェンコや、実際にウクライナ議会が調査をしても、一向にそのライファイセン・インヴェストメントが保有する利権50%の“本当の所有者”が誰なのか具体的な名前が出てくることは無かった。つまり利権構造が不透明なままでしかも議会が調べても何も出てこないあるいは明らかにされないのだから、ここで生み出される莫大な利益がプーチン大統領の周辺やユーシェンコ大統領の周辺に「こっそり」流れているんじゃないのかという疑念が膨らんでいた。そもそもこの会社がスイスにあることからして実態が不明で怪しい。

ライファイセン・インヴェストメントが 「ウクライナ側の本当の利権者を代理しているだけである」 と明言していることはあまり知られてない(ライファイセン銀行は、たしか昨年夏ころにウクライナ第2位の銀行バンク・アバルを買収してる)。つまりロスウクルエネルゴの半分を所有しているのは複数のウクライナの「投資家」なのである。ロスウクルエネルゴに落とされる利益の半分をガスプロムが手にし、残り半分をこのウクライナの投資家が手に入れる。このカネがどこにどのように流れているのかまったく分からない。だが05年の同社の純利益は5億ドルを超えているのである。

ロスウクルエネルゴがスイスに設立されたのは04年7月22日で、翌週7月28日にライファイセン・インヴェストメントの最高経営責任者 Wolfgang Putschek は、 「ウクライナの個人投資家を代理しているだけである」 ことを明言した( 関係記事 )。昨年、このロスウクルエネルゴがウクライナ警察によって捜査されていた。この捜査を主導していたのがティモシェンコ首相である。しかしこの捜査が8月、突然ユーシェンコ大統領によって打ち切られ、警察のトップは更迭された。そして9月には、ティモシェンコも首相を解任されてしまった。ようするに国家事業である天然ガス事業から「詐欺的に」生み出されるカネの流れは深い闇に覆われているのである。

さて、先週の4月21日、このスイスに登録されているロスウクルエネルゴ社にとうとう米国からメスが入ることが明らかになった。調査するのは米国司法省。







これもクリックで記事に飛ぶ
上の2枚の写真に写ってる人物はロスウクルエネルゴの幹部
Oleg Palchikov と Konstantin Chuychenko





4月21日に明らかになったこの調査がいつから開始されていたのかとか、なぜ米国が調査に乗り出したのかといった思惑は置いとくとして、調査を実施していたのは監査法人プライスウォーターハウスクーパーズだったらしい。そしてとうとうライファイセン・インヴェストメントが代理している受益者「ウクライナの投資家」2人の名前が26日、ロシアの日刊紙「Izvestia」によって伝えられた( 記事 )。

プライスウォーターハウスクーパーズが監査したのは、2004年7月22日から2005年12月31日までの財務内容だというので、これはスイスにロスウクルエネルゴが設立されたその日から昨年末までを調べた結果である。

米司法省(プライスウォーターハウスクーパーズ)による調査で判明したライファイセンが代理している利権50%の所有者は、 ドミトリー・フィルタシ (Dmytro Firtash)と イワン・フルシン (Ivan Fursin)という人物、この2人であるという。

ドミトリー・フィルタシがライファイセン・インヴェストメントのシェア90%を所有しており、イワン・フルシンが残りの10%を所有しているとのこと。この2人はウクライナの実業家らしい。つまりこの2人がユーシェンコ大統領周辺と密接にそして深くつながっていると考えていいでしょう。これはプーチン周辺にもつながってるだろうね。

ロスウクルエネルゴの半分を握るとされる2人の名前が明らかになったとしても、この2人が“真の所有者”なのかは不明である。プーチン側がウクライナの政治家をコントロールするための資金をここで生み出してるのかもしれないし、ユーシェンコ周辺が資金の源になるようこの不透明な構造を生み出したのかもしれない。「ガスの女王」ティモシェンコはこの利権に噛みついたんだから、ティモシェンコが利権に加えてもらえなかったことは事実だろうと見えるよね。

判明した事実を米国がどこまで明らかにするのか分からない。もう少し時間が経てばいろいろ情報が漏れてくるんじゃないかと思うし、それを期待したい。



News Agency Names RosUkrEnergo Beneficiaries

April 26, 2006 -- The Russian news agency Interfax has named two Ukrainian citizens as the hidden beneficiaries of Raiffeisen Investment, which owns 50 percent of RosUkrEnergo, the gas trading firm that acts as a middleman for Turkmen and Russian gas deliveries to Ukraine.

Raiffeisen Investment is a division of the Austrian-based Raiffeisen Bank. Russia's gas monopoly Gazprom owns the other 50 percent of RosUkrEnergo.



The two men were named as Dmytro Firtash, a Ukrainian businessman who, according to Interfax, owns 90 percent of the shares in Raiffeisen Investment. According to "Izvestia," Firtash was linked to RosUkrEnergo's predecessor, Eural Trans Gas.

The second man named is Ivan Fursin, a Ukrainian who reportedly holds the remaining 10 percent of the shares. According to "Izvestia," Fursin has links to former Ukrainian President Leonid Kuchma's aide Serhiy Levochkin and is also the major shareholder of the Odesa-based Misto Bank and the Odessa film studio.

Firtash owns two cable TV stations in Ukraine as well as a basketball team, the manager of which was recently elected to parliament on the Our Ukraine party list, "Izvestia" reported.

The organized crime unit of the U.S. Justice Department reportedly began an investigation into RosUkrEnergo last week.

http://www.rferl.org/featuresarticle/



※ 4月26日、 ガスプロムの株式時価総額がとうとうBPを超えた。
ガスプロムの株式時価総額は2650億ドル(約30兆4600億円)。



露ガスプロムのセントリカ買収 「英政府は容認」 英国産業連盟会長
2006/4/27

訪日した英国産業連盟(CBI)のディグビー・ジョーンズ会長は二十六日までにフジサンケイ ビジネスアイと会見し、英政府が、露国営の天然ガス世界最大手、 ガスプロムによる英エネルギー最大手、セントリカの買収を容認する との見通しを示した。セントリカ買収をめぐっては、英政府が阻止に動いた場合、ガスプロムが欧州向けガス供給を削減する構えを見せ、緊張が高まっている。

同会長は「すでに英国は電力や水などのインフラ(生活基盤)をドイツやフランスに依存している。英政府は、セントリカ買収を通してガスプロムが英国市場に参入することも認可するだろう」と述べた。

この一方で、仮に買収が実現すれば、英国のエネルギー産業がロシア政府の影響を受けることになるとの見方を示した。

ガスプロムは現在欧州の天然ガス需要の約25%を供給しているが、買収を通して欧州市場での事業拡大を計画している。

セントリカは英国内で約千二百万世帯にガスを供給している大手で、英紙フィナンシャル・タイムズは英政府が法改正で買収を阻止する構えだと報じていた。これに対しガスプロムのミレル社長は十九日、「政治的な観点から当社の活動を束縛すべきではない」と述べ、買収に英政府が介入すれば対抗策として欧州へのガス輸出を削減することを示唆した。

http://www.business-i.jp/news/world-page/news/200604270006a.nwc



アルメニアのガスがロシアのコントロール下に
http://plaza.rakuten.co.jp/HEAT666/diary/200604100000/

【ガス紛争】ロシアとウクライナが価格合意
http://plaza.rakuten.co.jp/HEAT666/diary/200601050000/

ティモシェンコが当事者を刑事告発するよう発言
http://plaza.rakuten.co.jp/HEAT666/diary/200601060000/

ロシア対ウクライナ
http://plaza.rakuten.co.jp/HEAT666/diary/200512270000/

続・ウクライナ民主化の戦いのウソ
http://tanakanews.com/g0120ukraine.htm







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最終更新日  2006年04月29日 00時21分24秒
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