◆ラテン旦那と大和撫子妻◆

Nicoleとの戦い 1




次女 Nicole が、おかしいなって思い始めたのは、
1歳半を過ぎた頃からでした。

まず、言葉が殆ど出て来ない。 

名前を呼んでも知らん顔をしている。

言葉が出てこないのは解っていても、

なんとなく意思の疎通みたいなものが、無かったんです。



周りの友達に相談するといつも、


“大丈夫だよ~。未だ早いし解らないわよ。
しゃべる時期が来たら、ちゃんとしゃべるように成るもんよ。”

って、言われ続けて来ました。

そうよね、そういうものよね。って思いながらも、母親の感とでも言うのか、

心のどこかでは腑に落ちないで居ました。


Nicole の問題は、只言葉が遅いだけでなく、
物凄いかんしゃく持ちだったんです。 

自分の思い通りにならないと、
“んー、んー、んー”って唸りながら、引っ繰り返ったり、

物を投げたりして,大暴れをするんです。



一度マンハッタンのバスの中で、その大かんしゃくが爆発して、

私は子供達と後部座席に座っていたのですが、
他のお客さん全員が、運転手の方へと移動してしまうほどの
大ひんしゅくを買ったこともありました。



そんなひどいかんしゃくを起こしても私は、


きっと言葉が話せないから、イライラしてかんしゃくを起こしてしまうんだわ。

って彼女を不憫に思い、暴れた時に押さえ付けたりはしたものの、

Nicoleに叩かれようが、蹴りを入れられようが、

彼女の怒りを受け止めて上げられるのは私しか居ないんだから.
と、ぼろぼろになりながらも唯耐えに耐えるという、

今思えば、間違った愛情で対処をしていたのでした。


それが自分で自分の首を絞めていたとは、夢にも思わずにね。。。。



父が危篤で日本に里帰りをした時に、

私の母親、親戚達から


“ちょっと変なんじゃないか?”

“呼んでもこっちを見ないし、話もしないし、
耳でも聞こえないんじゃないか?”

って次々に指摘を受け、益々不安が募っていきました。


ところがアメリカに帰って来るや否や、

第3の妊娠とロングアイランドへの引越しが決まり、

その問題はとりあえず保留になってしまいました。





*********************






引越しが済み、隣近所の人達と交流を持ち始めた頃、
お向かいのお婆ちゃんがこう言うんです。


“Nicoleは何歳なの?”

“2歳4ヶ月です。”

“ちょっと言葉が遅いんじゃないの?

家のDanny(同居している彼女の孫)も言葉が遅かったから、

コミュニティーサービスに相談したのよ。
すると言葉の遅い子の為に学校があって、

そこへの授業料、送り迎え、ランチ代、何から何まで、

ニューヨーク州が負担してくれるっていう事を教えてもらってね、

早速連絡を取って担当者に孫をEvaluate(サービスが必要かどうか評価する)
をしてもらったのよ。

Dannyは必要アリと診断を下されてその学校へ通い、
その恩恵を被って、今はこの通り何の問題も無く生活しているのよ。

貴方も是非、そこに連絡を取るべきよ!」


と、まるで私を説得するかのように、話してくれました。
言い終るや否や、お婆さんは家の中へ入って行き、
紙に電話番号を書いて持って来てくれました。



そしてその2,3日後、
学校の校庭までジェンと二コールを連れて散歩に行った時、

一人の白人女性が、明らかにAdopt(養子)と解るアジア系の子供2人を連れて、
先に来ていました。


彼女の名はLinda。 Lindaは私にニコニコして近寄って来て、

まるで私の心の中を読んだかのように、


「この子達は韓国から来たのよ。」
と言いながら、私の隣に座った。

そして色々と子供の話しをしていると、Lindaまでもが


「下の子(2歳)は言葉が遅いと思うのよ。
この間小児科医に相談したんだけど、全然埒が明かなくって、
専門家に相談しようかって思っているの。」

と、初対面の私にフランクに、事細かに話し始めたのです。



偶然だ~。。。って思いながら、Nicoleの事と州からのサービスの事を話すと、

彼女も“絶対直ぐに連絡を取るべきだ!”って真剣に言ってくれたのです。

彼女も彼女の子供の事で連絡を取ると言っていた。





家に帰って直ぐに旦那に相談をし、
専門の機関へ連絡をするつもりで居た所、

これまた偶然が重なったんです。




長男を妊娠中だった私は検診をする為に、

初めて引越し先の新しい産婦人科のオフィスへと行きました。


受付で書類に書き込みを済ませ、順番を待っていた時、

何気に受付の小窓の脇に目をやると、

綺麗に彩りされたパンフレットが目に留まりました。


一枚取って見てみると、何とそれは


州から認可を受けている3歳前の子供達を対象にした、


スペシャルエデュケーションのパンフレットだったのです!



家に帰って速攻で電話をしました。


電話に出た人は、Nicoleの年と状況を聞いて、


「言葉の遅れや、ひどいかんしゃくなどの悪い生活態度は、

3歳前に必要な処置を取らないと、

普通レベルにまで Catch up (追いつく)するのに、
とても時間がかかる事になってしまいます。

そして、5歳を過ぎてから始めたのでは、Catch up するのは、
非常に難しくなってしまいます。


未だ貴方のお子さんを診た訳ではありませんが、早く手を打ちましょう。」

って言って下さり、


その後はとんとん拍子で事が進んだのでした。



とにかく、Nicole が本当に彼らからの助けが必要なのか、

もしそうならば、

どの程度なのかをEvaluate(判断)する為に、
ニューヨーク州から派遣された



児童心理学

スピーチ

生活態度



の3つの分野の専門のセラピストが、我家の門をくぐったのでした。


Part 2 に続く


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