◆ラテン旦那と大和撫子妻◆

ナイアガラの涙

Nicoleは、セラピーと皆の努力の甲斐があって、
著しい成長を遂げました。

３歳になってからは、州からではなく学区からのセラピストの派遣、
という事で、もう一度Evaluation(評価)が必要になりました。

その結果、

これからはスピーチ・セラピーのみで、週２回という事になりました。

プリ・スクールに上がった時に、セラピストにこう言われました。

「取り合えず先生には、Nicoleがセラピーを受けているとか、
以前の話はしないでおいて下さい。
もし先生の方から何か指摘があった場合のみで、良いと思います。」

言われる通りに、先生方には一切何も伝えないで居ました。

結局３年間、問題も無く無事に卒業しました。

スピーチのセラピーも、半年後には必要無しと判断されて、
後は私が引き続き語彙を増やすように、
毎晩本を最低でも5～6冊は読んで聞かせました。

旦那にも説明をして、ついつい忙しかったりすると、
面倒臭くなって、忘れがちになってしまいますが、

なるべく文としての言葉を、しつこいように言い聞かせる。見本を示す。
という事を心掛けました。

公文教室も調べ上げて、週２回JenとNicole を英語の読み書きと、
算数を教える為に通わせました。

はっきり言って、
２人分の毎日の公文の宿題と、学校のお勉強や宿題を
新生児を抱えて、子供達と一緒にやるのはとても大変でしたが、
今までの苦労を思えば頑張れました。

そして幼稚園に上がり、
問題なく楽しく時間が流れ、卒業式を１ヵ月後に控えたある日。

学校の担任の先生から１通の手紙が来ました。

内容は、卒業式に全クラス一体でやるショーがあるのですが、
文字が読める子供２名を選ぶ事になり、

何とNicoleがその２名のうちの一人に抜擢された。
というものでした。

信じられない位嬉しかったのは、想像が付くと思います。(笑）

その日のディナーは、ささやかながら家族でお祝いをしました。

勿論私は以前にお世話になったセラピスト達にも、連絡をしました。

それはもう皆びっくりで、祝福してくれました。

“苦労が報われる。”ってこういう事を言うのかな。。。

ダディーに褒められてＫＩＳＳの嵐を受けている、
Ｎｉｃｏｌｅの笑顔を見つめながら、私は、そう一人呟いていました。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

五月の生暖かい風が吹く中、あちこちでは色とりどりの花が咲き乱れ、
まるで私達を祝ってくれているかのようでした。

Nicoleには、この日の為にプエルトリコのバ～バが買ってくれた、

素敵なオフホワイトのドレスを着せて、家族全員で卒業式へと向かいました。
会場では着飾った親御さん達で溢れています。

出来るだけ前の席を陣取って、カメラの用意をします。

そこに、普段カメラで撮影をするのは私なんですが、
珍しく家の旦那が、

「Michaelがぐずったりしたら台無しになっちゃうから、
今日は僕がビデオ撮影をするよ。」
って言い出したんです。

それじゃあ、私がMichaelを抱っこして、
手が空いていたらなるべく写真も撮るようにしよう。

って決めて、式が始まるのを待ちました。

幕が開いて式がスムーズに進行していきます。

卒業証書を一人ずつ受け取り、次はお待ちかねのショーの時間です。

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休憩時間の後幕が開くと、そこには舞台一杯に並んだ
可愛い笑顔を浮かべた生徒達がずらっと並んで立っていました。

真ん中の一番前にスポットライトを浴びた
Nicoleと、Emilyの二人が、誇らしげな顔をして立っています。

その姿が真っ先に目に飛び込んで来て、
もう私は嬉しいのと誇らしいので、涙と笑みが絶えませんでした。

昔の苦労なんてどっか行っちゃった。って感じで
嬉しくて嬉しくて、食い入るようにショーを観ていました。

すると、ショーの中程で、

やけに大人しい旦那の事が、ふと気になって
ただ黙々とビデオを撮っている旦那の方を何気に見てみました。

何とそこには、

カメラを構えて、ファインダーを覗いている旦那の横顔を、
涙が止めどなく、滝のように流れているんです。

私は一瞬目を疑いましたが、

彼はそれを拭おうともせずに、唯ひたすらビデオを撮り続けていました。

あんなに人目もはばからず、
涙を流している旦那を未だかつて見た事がありませんでした。

声を掛けようかと思ったけど、

そっとしておいて上げた方が良いと思い、声は掛けませんでした。

ショーが終わると、真っ赤な鼻をした彼が、

男泣きに泣いているのがちょっと恥ずかしいのか、伏目がちに

「トイレに行ってくる。」
とだけ言って、さっさと会場から出て行ってしまいました。

私にとって、

Nicoleの晴れ姿は、勿論一生忘れられませんが、

あの時の彼の、ナイアガラの滝の様な、

崇高で途切れる事のない涙が

私の脳裏に強烈に焼きついていて離れません。

そしてその思い出では、私の生涯の宝物となりました。

英語褒め言葉集へ続く

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