小説 続き


第2章 思い出は何時の日も雨

「おはよーございまーっすっ!!」 

昨日降った雨の所為で今日の朝はじめじめし過ぎていた。
にも関わらず,相変わらず元気だけはいい。

「ん?あれ?今日はなんだか物足りないっスね」
「今日は何があったのか菊丸と不二が休みなんだよ」
「え?マジっスか!?」

みんな,どうせ2人のことだから2人だけで何かをやっているに違いない。
そう思っている。
いつもいつも夏は暑苦しいくらいラヴラヴの2人のことだから当たり前だ。

「桃城先輩,菊丸先輩取られちゃいましたもんね」

いつものヤル気のない面影。

「くそ。何言ってんだ阿呆」
「どうせ阿呆ですよ~」

仲のいい越前と桃城を,大石は半分呆れて,面影心配そうに見ていた。
勿論,心配しているのは菊丸と不二のこと。

「今日は不二と菊丸が休みか・・・」

いきなり何処かで声がした。
不気味な声。

「ちょっと情報集めに行ってくる。先生には休みだと伝えておいてくれ」
「いや。駄目だ。サボるな」

乾を冷たく見た。
そんな大石の態度にも微動だにせず,相変わらず不気味な笑みを浮かべている。
強いのか,単に考えない質なのかは知らないが,無神経過ぎる。
もう少し大石の役を際立ててあげてはどうだろうか?
まあ乾の事だからそんな事は絶対しないだろうけど・・・

「本当にどうしたんだろうね。菊丸が休むなんてさ・・・」
「不二はいいのか?」
「不二は偶に眠くて休むときがあるだろうあの低血圧さだから」
「しかし・・・」
「さあ練習しよう。朝の練習時間は短いんだから」
「大石・・・・・・?」

乾は初めて不気味な笑みを止め,悩んだように顔を顰めた。
まあ,あまり深く考えてはいないだろうけど・・・


『あ 菊丸?今日どうしたの?』
『ううん。別になんでもないよ。ちょっと気分悪かっただけ』
『菊丸のくせに?らしくないな』
『ゴメン・・・』
『・・・・何か悩み事があったんだろ?』
『分かる?』
『分かってるよ。話してみなよ。聞いてやるからさ』
『え?イイよ。関係ないことだし・・・それに』
『不二も関わってるんだろ?』
『・・・え?・・・・・・何で?』
『違うの?』
『そうだけど・・・・』
『楽天家のオマエが悩む理由って言ったら不二ぐらいだろ』
『・・・・大石』
『何?』
『あのさ。もしも・・・・』

菊丸の視点の状況説明は電話越しに大石に伝えられる。
内心,絶望感で溢れていた菊丸の心を優しく癒やすように大石は穏やかに話した。

『オレが思うにはさ・・・不二は悪くないと思う。菊丸も悪くない。誰も悪くないよ。ただ,菊丸が,自分がもし裏切られたらイヤだと心の底で思ってしまったらいけないんだ』
『え?どう言うこと?』
『菊丸は,イヤでも何でも,不二から事情を聞くべきなんだよ。もしかしたら,誤解かもしれない。何かの間違いかもしれない。又,本当かもしれない・・・・
でも,聞いてみなくちゃいけないんだ。
もしも,誤解だったら,菊丸は不二を傷つけてしまったことになるよ?』
『・・・・・・・・・・・・・・』
『話し合ってみなよ?』
『・・・・・うん。そうだよね。有り難う・・・・大石。助かった』
『力になれたのかな?良かった。ガンバレよ』
『うん!!』

大石の励ましで,勇気付いたけど,実際は不二に事情を聞けるほど強くはなかった。

「・・・負けるかあ!ファイトだぞ!英二!」
自分で自分を励ます。
その姿はちょっと寂しいかも・・・

『大石です』
『ああ 大石。こんばんわ』
『こんばんわ』
『何?』
『今日部活休んだだろ?心配だからかけてみた』
『ゴメン ちょっとね』
『また眠かったから部活ごと学校休んだとかじゃないだろうね?』
『今日は違うよ。今日は』
『うん 何となく分かってる。でさあ何かあったの?』
『まあね。こっちの事情』
『菊丸も来てなかったよ?2人で何かやってるものかと思ってるんだけど』
『う~ん。今日は違うね』
『じゃあ何?』
『昨日悩みすぎて,今日の朝すっごい頭痛がした』
『・・・・・・何に悩んでた?』
『こっちの事情v』

ピッ パッ パッ ピッ ポッ
最後の1ケタ。
1ケタ

「・・・・・震えるな指」

最後の1ケタ。「7」を押そうとするその親指は震えている。
止まらない。
麻痺したみたいに感覚が薄れてくようなカンジがする。

「こんなんで負けるかあ!」

ツルルルルル ツルルルルル
受話器の奥で柔らかい音。


♪~
「ちょいゴメン」

この着メロは菊丸家専用のメロディー。

「英二から?」
『周助です』
『周助?英二だよ』
『何?』
『・・・・・・・・・・・・・』
『・・・・?』
『何でもない』
『え?英二?』
ガチャ

菊丸には,不二が冷たい反応をしたのが気になった。
平凡だった頃はもっと暖かくて,もっと優しく話してくれたのに・・・

『何?』

そんな人だったけ?
不二・・・

『誰から?』
『ううん。間違い』
『そう。じゃあ。明日は必ず来いよ』
『分かってる』
『じゃあね』
『うん』

切れた





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