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朴槿恵政権赤っ恥…　韓国日産の処分一時停止、日本企業狙い撃ち覆される

カテゴリ： Car/Bike/Tool

朴槿恵政権赤っ恥…　韓国日産の処分一時停止、日本企業狙い撃ち覆される

　ソウル行政裁判所は７日までに、日産自動車のディーゼルエンジンを搭載したスポーツ用多目的車（ＳＵＶ）「キャシュカイ」が排ガス規制を不正に逃れたとして、韓国環境省が韓国日産に科した販売停止やリコール（回収・無償修理）の処分の一時停止を決めた。（夕刊フジ）

　韓国日産は一貫して「不正は一切ない」と争う姿勢を見せてきたが、朴槿恵（パク・クネ）政権の日本企業狙い撃ちが、ひとまず司法の場で覆された形だ。

　決定は４日付。韓国日産が先月、処分取り消しを求める行政訴訟を起こしていたことに対するもので、行政裁は「販売停止などの処分により韓国日産が受ける回復困難な損害を避ける緊急の必要性」を認めた。一方、環境省が韓国日産に課した課徴金３億４０００万ウォン（約２９００万円）の返還は認めなかった。

　処分の一時停止期限は、今後予定される本訴訟の１審判決の日から１４日後までで、キャシュカイは販売可能となった。決定に対し環境省は６日、ソウル高裁に抗告する方針を示した。

　環境省は５月、キャシュカイに搭載された窒素酸化物（ＮＯｘ）の低減装置が一定の条件下では停止するよう設定されていたと指摘。６月に販売停止などを命じた。

　しかし、キャシュカイは韓国の規制でも認める欧州の排ガス規制「ユーロ６」の適合を得ており、不正を全面否定。韓国メディアでも、韓国環境省の措置を疑問視する声が出ている。

2016.6.18 01:00
【桜井紀雄が見る劇場型半島】
なぜ日産は韓国政府に狙い撃ちされたのか？　またもや朴槿恵政権への批判かわす「いけにえ」に…

韓国環境省が不正な排ガス規制逃れを指摘した日産自動車の「キャシュカイ」の欧州仕様車（同社提供）

　韓国環境省が日産自動車のディーゼル車に排ガス不正があったとしてリコール（回収・無償修理）を命じ、刑事告発した問題は、日本側からすると、非常に違和感がある。日産はなぜ狙い撃ちされたのか。一方、韓国メディアは、日本バッシングはなりを潜め、朴槿恵（パク・クネ）政権の環境政策の無策ぶりに批判の矛先を向けている。無理筋にもかかわらず、韓国政府が日本企業という「他者」に罪を転嫁しようとする姿勢は、産経新聞前ソウル支局長裁判と似た構図も浮かぶ。

１９車種中なぜ日産だけ？　韓国政府「故意性があった」

　違法ソフトを使ったフォルクスワーゲン（ＶＷ）の排ガス不正問題などを受け、韓国で販売されている最新のディーゼル車２０車種について、室内に加えて公道でも走行テストを実施した結果、ＢＭＷの１車種を除く１９車種で、大気を汚染する窒素酸化物（ＮＯｘ）の排出量が基準値を上回ったという。

　このうち、日産のスポーツタイプ多目的車（ＳＵＶ）の「キャシュカイ」に対しては、刑事告発する方針を示し、今月７日、韓国で販売した８２４台のリコールと課徴金３・４億ウォン（約３千万円）の支払いを命じた。さらに、大気環境保全法違反の疑いで、韓国日産と同社社長をソウル中央地検に告発した。

　なぜ、日産にだけここまで強硬な措置に出たのか？

　まず、他の車種が基準値の平均６倍程度だったのに対し、キャシュカイは約２０倍に上り、ＮＯｘ排出量が最も多かった点がある。

　ただ、１７倍に上ったルノーサムスンの車種は、自発的リコールを促す範囲にとどまっている。

　キャシュカイは、エンジンの吸気温度が３５度を超えると排ガスの低減装置が停止する設定になっている。環境省は、これを法律が禁じる排ガス関連部品の機能を「故意に」低下させる任意設定だとみなしたのだ。他の車種も４５度以上で停止したが、違法ではないとした。

　これに対し、日産側は当初から、３５度での停止設定は「エンジンルームが過熱するのを防ぐのが目的」だとし、「いかなる生産車両にも違法な機能を使ったことはない」と真っ向から反論していた。

　改善の余地はあるとして、リコールには応じるものの、違法性については、法的対抗措置を検討するなど、徹底抗戦の構えだ。

足下から違法性に疑義　日本に追い風？

　日本が絡む問題が持ち上がると、安易なバッシングに走ることが多い韓国メディアだが、今回は様相が違った。「ＶＷに次ぐ世界２例目の排ガス不正」疑惑として、新聞１面などで大きく報じたものの、おおむね不正を断定せず、事態の推移を静観する構えを見せている。

　検査の際には稼働する低減装置を、実際の走行では作動させないようにしたＶＷの悪質性とは、性質が大きく異なるためだ。

　韓国大手紙、中央日報は、キャシュカイが生産された英国の政府が「日産のシステムは不正でない」と判断した調査報告書の内容を報じた。３５度以上での装置の停止に関し、報告書は「車の安全のためだ」と認定したという。

　同紙は、任意設定を禁じた韓国の法律でも「安全な運行やエンジンの損傷を防ぐ目的の場合」は除外しているとも指摘。日産側は昨年１１月に車両認証を受ける際に、環境省にこのシステムに関する資料を提出しており、「環境省は認知した上で、合法と判断した」との証言も伝えている。

　わずか半年で判断を一変させた環境省に対して「事実なら、『日産が故意に排ガス不正をした』という環境省の主張は信憑（しんぴょう）性を失う」と疑問を呈した。

　メディアは、ディーゼル車優遇策をとり、消費者に購入をあおってきた韓国政府に向けては容赦ない非難を浴びせかけている。「クリーン・ディーゼル」の神話が崩れるなか、むしろ、ハイブリッド車（ＨＶ）で世界をリードするトヨタといった日本メーカーにとって、「追い風」になると予測するメディアも多い。

ＰＭ２・５、「殺人加湿器」事件…政権に逆風

　燃料費が安く抑えられることに加え、二酸化炭素（ＣＯ２）排出量が削減できる「クリーン車」として、韓国政府が自動車に課す環境改善負担金を免除するなど、優遇措置をとってきたためだ。

　この結果、新車登録台数では、ガソリン車を上回る状況が続き、今年に入って登録台数が８８０万台を超え、車両全体の４割以上を占めるまでになった。

　この「ディーゼル車天国」が昨年９月のＶＷの不正発覚をきっかけに急に陰り始めた。微小粒子状物質ＰＭ２・５による大気汚染に対する世論の逆風が決定打となる。

　ソウルなどでは、どんより空がかすむ状態が毎年春の「風物詩」ともなり、中国から流れてきたＰＭ２・５が「主犯」だといわれてきた。今年の春は汚染が深刻な日が続いたうえ、環境省と気象庁が予測を外す失態が相次ぎ、「政府は何をやっているんだ」と国民の不満が鬱積（うっせき）していた。

　そこに、環境省がＰＭ２・５の大半が韓国国内で発生したものであり、首都圏ではディーゼル車からの排出が最大の原因だとの分析を示した。韓国の空気の質は１８０カ国中、１７３位だとする米大学による不名誉な調査結果も発表された。

　追い打ちをかけたのが、殺菌剤入りの加湿器を使ったことで少なくとも９５人が死亡し、５月に殺菌剤メーカーの元社長らが逮捕された事件だ。室内でも屋外でも「息が吸えなくなる」と、韓国国民の「空気の安全」に対する不安と、政府の無策ぶりに対する不信感が最高潮に達していたのだ。

　日産の排ガス不正疑惑を受け、朝鮮日報は社説で、「国民は加湿器殺菌剤事件を受け、政府が責務を果たしていないと実感している」と後手後手に回った朴槿恵政権を批判した上で、法令を大幅に強化し、違反企業に厳しい制裁を科すなどし、「失った信頼を取り戻すべきだ」と主張した。

朴大統領の鶴の一声、環境省は追い詰められた末…

　そうでなくとも、４月に発生から２年を迎えた旅客船セウォル号沈没事故をめぐる政府への批判が尾を引いていた。加湿器殺菌剤事件でも「お茶の間のセウォル号事件」だと朴政権が非難の矢面に立たされていた。

　「国民の安全」に関する問題は、政権のアキレス腱（けん）となっていた。

　朴槿大統領は５月１０日にＰＭ２・５問題に関し、「国を挙げて特別に対策をまとめるべきだ」と関係省庁にハッパを掛けた。

　これを受け、政府は今月３日、ディーゼル車に対する排ガス規制を強化し、古いディーゼル車の首都圏への乗り入れを制限するといった対応策を発表した。代わりに、電気自動車（ＥＶ）など、エコカーを拡充させる計画だ。

　こうした一連の流れを無視して、降ってわいたような日産への刑事告発を理解することができない。

　所管省庁である環境省は是が非でも、ディーゼル車問題で毅然（きぜん）とした対応を取っていると国民に向け、アピールする必要性に迫られていたのだ。

最新のディーゼル車中、販売台数もさほど多くなく、唯一、法律違反にひっかけられそうな日産車が批判をかわすための、いわば“スケープゴート（いけにえ）”にされた疑いは拭えない。環境行政の無作為の責任を司法に丸投げした形だ。

産経前ソウル支局長裁判の構図が再燃？

　セウォル号事故当日の朴大統領の動静をめぐる疑惑を書いた産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が名誉毀損（きそん）で在宅起訴された問題でも見られた図式だ。

　日本の読者に向け、日本語で書かれたコラムにもかかわらず、反朴政権の色彩が強いインターネットメディアが政権への悪意がこもった解説を付けた上で、韓国語でネットに転載したことで拡散し、朴大統領非難の格好の材料に利用された。

　セウォル号事故当日という一刻一秒を争う重大なときを動静が不明な「空白の時間」だと批判されたうえ、朴大統領の立場からすれば、男性と会っていたかもしれないと「痛くもない腹を探られた」ことになる。側近の政府高官が「法的責任を問う」と息巻いたことで、周囲が忖度（そんたく）し、刑事裁判にまで発展した。

　本来、言論には反論で返すべきところを、セウォル号事故直後の政府の対応の是非という国論を二分させた朴政権のアキレス腱につながる問題だったため、政局に巻き込まれ、「たたきやすい日本の右派メディア」ということで、スケープゴートにされてしまった。

その結果、日韓外交の停滞を招いてもなお、引き返せず、検察が無理に組み立てた「犯行動機」は判決で否定され、無罪となった。

　今回の日産に対する刑事告発でも、仮に起訴に至れば、法律に関する欧米の常識を当てはめれば、同じ結論をたどる可能性が高い。朴政権と司法当局は不名誉を重ねるだけに終わりはしないだろうか。

　今回はそもそも、もろ手を挙げて「クリーン・ディーゼル」を推進してきた政府が責任も明確化せずに「ディーゼル悪玉論」に態度を豹変（ひょうへん）させことが事態をこじらせた最大の原因なだけに、世論の受け止め方も冷たい。

　韓国経済新聞は社説で、ディーゼル車を後押ししてきた政府は「国民の前で過ちを認めて謝罪するのが順序だ」とした上で、その豹変ぶりを痛烈に批判した。

　「そうでなくても、政府に対する信頼が薄れているなか、手のひらを返すように政策を変えながら、いかなる説明もないというのはあり得ないことだ」

　日本側にとって、今回の問題は、韓国でビジネスを進める上で、突如、内政問題の渦中にほうり込まれ、刑事告発までされるリスクの大きさを見せつけた。（外信部記者）

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