Dec 11, 2005
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カテゴリ: 今日のできごと
「あと20歳若かったら、彼女にしてやったのにな」

これがマセガキ君の別れの言葉だった。


「あのさ、出てこれる?」
いつもは元気一杯のKが、気の抜けた弱弱しい声で言った。

「何?今日はおでんって言ってたでしょ?」
正確にはネギメインのおでんだけどね。…おでんにネギって入ってたっけ?

「ごめん…。行けそうにないんだ。その代わり奢るからさ、来て…」

プリプリしながらKが指定したファミレスに行く。
バス代も請求してやる。


Kがヒラヒラ手を振った。

「誰?あんたの子?」
Kの隣には小学2、3年と思われる男の子がちょこんと座っていた。

「ま、まさか!従弟だよっ」
ワタワタ慌てるKと私を交互に男の子は見つめていた。

「K。誰だよ?オマエの女?」
うわっ。小学生だと思って油断してたら凄い言葉使いだよ。

「うん。スナイダーズって言うんだ。宜しくな」
K…。あんたその子の舎弟ですか?

取り合えず、私は2人の向かいのソファーに座りコートを脱いだ。

今日は夕方から来るって言ってたから頑張っておでん(ネギメイン)を作ったのに、何だよコレはっ!?



主婦やってる友達とその子供と一緒にランチで来たことはあるけど、恋人と小学生のマセガキと3人っつうのは初体験だ。

それに。
ただでさえ私は子供が苦手。しかもこんなツワモノを相手にするなんて。

緊張した。

3人でファミレスのちゃちな料理を食べた。


「ごめんな~。こいつのオヤジが熱出して寝込んでさ、お守り頼まれたんだよ」
食料を求めて久々帰った実家にこのマセガキ君がいたそうな。

「昔から妙にコイツ俺に懐いてて…。用事あるって言ってんのについて来たんだよ」
ああ、そう。

その子の両親は離婚してて、人懐っこいKと良く遊んでいたらしい。

「ちょっと、トイレ」
席を立ったKを恨めしげに見送る。ガチンコですか!?

「なあ、何でKなんかと付き合ってんの?」
Kの姿が見えなくなると、マセガキ君は乗り出しながら言った。

「…何となく」
ふううん。と面白くなさそうに呟く。

無言。

早く帰って来いよっ!!トイレ長いよ!!女の子じゃないんだから化粧直しなんてないでしょーが!!

「Kと結婚すんの?」
「さあ?そこまでは考えてないよ。Kがどうこうって言う前に結婚願望が今んところないから」

「大人って、何でもかんでも曖昧なんだよな~」
悪かったわね。

「んじゃ、何で付き合ってんの?好きなんだろ?」
「アンタ、しつこいね」
近所のオバチャンみたいよ。

「大人には大人の考えがあるってことよ」

マセガキ君は目を細めた。
「俺のオヤジもそう言ってた。母ちゃんと別れた時。ふうん。そう。大人の事情ね」

ホント、ムカッ腹が立った。

「Kのことは好きだよ。だけど、好きだから結婚するってワケではないのよ。アンタ、もうちょっと女の子の気持ちを考えなさいよ。モテないよ、そんなだと」

マセガキ君はちょっとひるんだ。フンだ!いい気味だ。

その後は戻って来たKを含め、何事も無かったかのようにまた、時間は流れた。


「んじゃあ、腹もふくれたし、帰るか。オマエも学校だろ?家まで送るから」

車の鍵と財布を確認しながらKは言った。

やれやれ。とんだ厄日だ。ため息をつきながらふと食い散らかした席を見れば、小さなマフラーが。

マセガキ君のだ。

やれやれ。

マフラーを掴んで通路を歩いていると、マセガキ君にバッタリ会った。本人も忘れたことに気づいて戻って来たらしい。

「ほら」
私はぬっとマフラーを差し出す。マセガキ君は黙ってソレを受け取る。

モタモタ巻いているので
「ほら」
しゃがんでマフラーを巻いてやった。

「綺麗な色のマフラーだね。アンタに良く似合うよ」
そう。ホントに似合っていたから言った。

でも、マセガキ君は黙って視線を逸らす。何だよ?褒めてんのに。

「これ、誕生日に母ちゃんがくれたヤツなんだ」

「良いお母さんだね。私の母さんは、私にくれたものって金木犀の枝1本だよ?」

「でも。もういない」

「親が離婚しても、子供は子供でしょーが。何、遠慮してんのよ?大人の事情は大人だけが考えてれば良いんじゃない?」

マセガキ君は黙っている。Kが待っているだろうから、私はマセガキ君の手を握った。

「ほら。いこ。Kが待ちくたびれてんよ?」

照れくさそうに私の手を解こうとしたけど、私は構わず、グイグイ引っ張る。


「じゃあな、スナイダーズ」
先に私をマンションまで送り、Kたちは去っていった。

「スナイダーズ!!」
私が降りようとした時、マセガキ君が初めて私の名前を呼んだ。私は反射的に振り返る。

「あと20歳、若かったら、Kなんかじゃなくて俺と付き合ってやったのにな。惜しかったな」

「そうだね。アンタ、良い男になりそうだもん。惜しかったなあ」

「酷い…」
Kが泣きそうな顔をした。

その頬にキスをしてやった。Kは勿論、マセガキ君も驚いている。

「でも、アンタにKはやんない。私、欲張りだから」

マセガキ君はニッと笑った。

「オマエ、サイコー」


子供って、何考えてんのか、ヤッパリ分からない。

だけど。
すんなり思いや言葉が伝わるのは、子供の方だなって思った。

毎日必死で説明しても分かってくれない、馬鹿なお得意先の連中より何千倍も。

明日も頑張るべ!!





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Last updated  Dec 13, 2005 12:06:11 AM
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