Oct 29, 2006
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カテゴリ: 生きるということ


聞き慣れた声がしたかと思えば、右の瞼をベロンと捲られた。反射的に左目も開いて焦点を合わせると、スーツ姿のSがムッツリした顔で覗き込んでいた。

「おかえり」

のっそり起き上がりながらそう言えば、呆れた顔でタバコに火を付けながらSは言った。

「…生霊か?」

「心配するな。実体だ。コーヒー飲む?」

「そうか、そいつは良かったって、オマエの家は、向こうだっ!2軒先のご近所さんだっ!」



実家に帰っておりますた。突然ですが。

本当は来月帰る予定でしたが、多分…来月は…帰れる状況ではないので…。それに、友人との約束もなくなって、気づいたら高速バスに飛び乗ってますた。




Sの言葉を無視して私はボリボリ頭を掻きながら言う。

「…こっちではそんなの放送されてなかったぞって、人の話聞いてる?」

「金曜ロードショー放送されないの?ありえないね、ホントありえないね。つうか、会社の呑み会もありえないんだけど。この時期に呑み会なんて、ありえないんだけど。ホント微妙だったよ、昨日の呑み会。お互いイライラピリピリしてっけど、言いたいこと言って険悪になったらサイアクやん?これからって時なのにさ、全て終わって、あの頃は~なんて笑い話にするなら分かるけど、あの頃が今なんだよっ。何の意味あんの?この呑み会?」

「…俺に聞くな。帰れよ。何でフツーに俺のベットで寝てんの、ねえ?昨日まで県外で呑んでいたオマエが何で、当たり前にココで寝てんの?」

「どーでも良いけど、スーツ着替えれば?課長島耕作気取りデスカ?あ、あれもう、取締役くらいになってんだっけ!?マンガ貸して」

「…コーヒー飲むか?お~い!母ちゃん、コーヒー!!このバカにぶっかけてやってくれ!」



幼馴染みというものは、酷い関係です、ハイ。

これが昨日、土曜日の出来事です。

何とか、コーヒーぶっ掛けられずに生きてました。





日曜の今日は。

朝っぱらから押しかけて、海が見たいと叫び続けた私の腕を取ったSと一緒に、車で約1時間かけて海に行ってきました。



「山で言えよ、そのセリフ」

「んじゃあ、きゃっほー!」


うちの父に連れられて行ったという、天体望遠鏡があるところにも連れてってくれますた。

って、何でうちの父と一緒にこんなところに行ってんの!?

すっげーヘンピな場所でしたが、秋晴れの日曜と言うだけあって、沢山のカップルがおりますた。そう、フツーはカップルで来るんだよ…。




オイっ!と突っ込みたくなる解説でしたが、あまりにもイキイキおにーさんが喋りまくるので、何気に納得しながら望遠鏡を覗き込んだけど…。

「ホント、何もみえねえ…」

「た、太陽ですっ!」

私のぼやきに、おにーさんはすかさず突っ込んでくれました。


「何か、あった?」

海を見渡せる場所にポツリ置かれたベンチに座り、海風に髪の毛をグシャグシャにされながらイチゴ牛乳のパックを飲んでいると、Sが言った。

「前髪が邪魔で何も見えねえ…」

そう言う私の腕から髪ゴムを取ると、前髪を結んでくれた。…まるでダイゴローのようだ。


「別に何もないよ。ごくフツー。異常なしっ」

Sの方を見向きもせず、邪魔する髪もなくなって、真っ青な海を見つめながら私は言った。

Sは私の隣に腰掛けると、カチカチとライターを鳴らしてタバコに火をつけた。


「ただね、ちょっと確認したかったの。異常になる前に」

Sが私を見たのが目の端に見えた。

「いつか此処に帰るのかなって。此処が私の帰る場所なのかなって」

「何だ、それ?」

「何年も同じこと繰り返しているとね、分かってくるのよ。もうじき私は私が分からなくなっちまうって。私は私なんだけど、そう、頭では分かってんだけど、心が分からなくなってしまうんよ。そうなる前に、ちゃんとこの目で確かめて、心が迷子にならないように、シッカリ確認したかったんよ。でもねぇ。此処が帰る場所だと思ったんだけど、実際来てみると…本当にそうなのかな~って今、思ってる」

「何、バカなこと言ってんだ」

ふ~っと吐き出したタバコの匂い。懐かしい匂いだけど、いつからSはタバコを吸っているんだろう。それすらも曖昧だ。

「あっちでも私は私だ。あそこは本当に戦場で、苦しいこと、悲しいこと、納得いかないこと、そんなことばっかりで、辛いけど、でもそれでもシャンと前を向いて歩いている、そんな自分が嫌いではないし、良くやってると褒めてあげたい。そして、そうやって頑張れているのは、沢山の大切な友達がいるからだと言う事も分かっている。でも…。一生をあっちで終わらせるなんて考えると全然ピンとこなくて…。あそこは、今も昔も、そしてこれからも仮の居場所だ。しっかり立っているように見えて、私は根無し草なんだよ。大切な友達は沢山いるけれど、でも…」

珍しく早口で一気にまくし立てた私をSはじっと見ている。

「でも、結局は私は1人だ。寂しいってことに気づいたんだ。ならば、私の居場所はドコなのか?実家のある、血の繋がった家族のいる、この場所なのか?そんなこと、いつの間にか考えてて、そしたら…来ていた」

「んで?分かったのか?」

「…余計分からなくなってしまった。私は何人だ?」

真顔でそう言った私のオデコをパチンと叩いて、Sは笑った。

「ダイゴローだ」

むっとした私に、ニカッと笑う。

「この○○県で過ごしたオマエも、あっちの○○県で頑張っているオマエも全部ひっくるめて、今のオマエだ。それで良いじゃないか?何をそんなに不安がってんだ?何をそんなにシロクロつけないといけないんだ?昔から変わらないなあ、そーゆーところ」

Sはタバコを近くの灰皿にもみ消した。

「欲張って良いじゃねえか。どうせ、オマエは、オマエ以上でもなく、オマエ以下でもないんだから。俺は反対に羨ましいよ?そうして、色んな場所で、色んな面を持っているオマエが。戦いに疲れたら此処に帰ってくれば良い。戦いたくなったら行けば良い。それだけだ。そして、どこでどんな生き方をしても、オマエはオマエだ」

Sは真っ直ぐ、私を見て言った。

「スナイダーズ家の人間だ」



とっぷり暮れて、真っ暗な高速バスの窓をジッと見つめていたら、不意にバスは減速して、高速を降りた。

次の瞬間には、見慣れた明るい街のネオンが眩しかった。


戻ってきた。あっちに。


目を瞑っていても分かる改札口を通り、電車に乗り込む。席は空いていたけど、癖で入り口に立っていた。

明日の朝も…。

この駅に来るんだ。満員電車から押し出されるんだ。

私は目を閉じ、スイッチを切り替えた。



「今日はええ天気やなぁ。空が真っ青や~」

のんびり、車の窓からそんなことを言っていた「世間知らずの田舎娘」の私から、


「なんば寝ぼけたことおっしゃっとんしゃー?テメーの尻くらい、テメーで拭けっつうの!」

ビールを飲みながらそんな愚痴を友人に言う「戦うオッサン」の私に…。



両方をバランスよく保つには、あまりにも未熟で…。

だからこそ、自分が一体何なのか、ついつい分からなくなってしまって壊れてしまいそうになるけれど…、


「オマエはオマエだ」

そう、ハッキリと言ってくれる人がいる。それだけで私はまた、歩き出すことができる。


「私は私だ」

ちゃんと自分でそう、分かっているけれど、でもやっぱり、人の言葉として聞くとズッシリ重みがあります。


何だかうまく言えないけど…。結局は、良く分からないままだけど…。

でも多分、これは、一生をかけて見つけることなんだろうなとも思う。


自分は一体、何者で、そして、どこから来て、どこへ向かうのか。

結局は、どこで終わるのか…。そしてその時、どう思うのか。


「ああ、スナイダーズで良かった」

そう思えたら良いと今の私はそう思う。



※追伸。

ごめんなさい。コメントにお返事すらも出来ない…です。

眠い~。

何か、最近生きるだけで精一杯のスナイダーズです。コンチキショー!

明日…必ず!


いつもありがとう!みっつぃ~姉さん。愛してます。























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Last updated  Oct 30, 2006 12:38:56 AM
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