ハリハリ資料室・第一分室

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2005年01月15日
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 さて,帽子男,見た目どおりの御仁でした。不器用そうな職員氏,異常なほど待たせた挙句に,冷蔵庫ほどもある馬鹿でかい荷物を抱えて登場。ああ,デカすぎてかえって目につかなかったか,正規の場所とは違うところに収納されていたか,おおかたそんな理由で遅くなったんだね,と見ていると,冷蔵庫みたいな箱を抱えて走ってきた職員氏,自分の椅子にぶつかって,ガッタン! 派手に荷物を落としてしまった。

 さて,たとえば,食器の入ったケースを台の上に落として大きな音を立ててしまった,なんてとき,O戸屋なんかでは,たとえそれが客の目の前でも何でもないパントリーの中で,食器を割ったわけでも何でもなくても,それでもその場にいる全店員が,すかさず「失礼いたしました!」と口々に,でもはっきりと謝罪する。スタッフの失敗は店の責任であり,店の過失は店員全員の過失なのだ。大きな音に驚かされて,ちょっと眉根を寄せた神経質な客も,そこで気持ちよくクールダウンして,なかったことにできる。要はタイミングなのだが,そこがわからないのが元親方日の丸の悲しいところで,職員氏,さっきから見ていると,謝罪の言葉はわりに乱発する人のはずなのに,こういう肝腎なときに限ってとっさに出てこない。詳細は忘れたけど,「あ,落としちゃった,大きいですね,これ。汗かいちゃった」とか何とか,どうでもいいことをゴニョゴニョ言ったのが,失敗をごまかそうとしているような不愉快な印象を与えたような気がする。さあ,どうでるか,帽子男。
「いや,落としたよな,今,オレの荷物」
「あ,はあ,すみません」
「すみませんじゃすまねえんだよ。人をさんざん待たせといて,どうすんだよ」
「すす,すみません」
「壊れたかもしれねえっつってんだよ。え,あんた,どうしてくれんだよ」
 うわー,まるでコントか安ドラマか田舎芝居である。
「誠に申し訳ありません。じゃあ,開けてみますか」

「ええ,ですから,壊れてるかどうか……」
「な・ん・で,開けなきゃ,い・け・な・いんです,かぁあア?」
「はあ,すみません」
「だから,すみませんじゃすまねえっつってんだろうが。どうすんだよ,壊れてたら」
「はあ,それはもう,ば,賠償を,きちんと」
「ほーお,賠償してくれんのね。ここに言いに来ていいの,壊されたって」
「ええ,まあ」
「○○さんに壊されましたっつってよお」
「ええ,ハイ」
「どこに言ってけばいいんだよ,それを」
「それはもう,窓口の者に言っていただければ」

 その後のやりとりはよく見えなかったが,彼はどうやら,職員氏に名刺を出させ,そこに自宅の電話番号を書かせたらしかった。そして荷物をかかえて,カウンターに向かったときと同じ,ゆったりとした足取りで出ていった。
 どうやら,単なる短気な兄ちゃんではなく,そういう系統のお仕事も守備範囲に入れていらっしゃる,一応は本物のソレもんの人だったらしい。自宅の電話番号を取っていくあたり,さすがに押さえるところを押さえている。
 それはそれとして,文句の一つも言ってやらにゃ,と意気込んでいた僕は,これですっかり毒気を抜かれてしまった。

 もうあまり詳細に書くのも阿呆らしいので,手短に済ますが,帽子男に怒鳴りつけられた風采の上がらない職員氏は,実に熱心に僕の話を聞いてくれた。
 「それはうちの荷物ですか」と言われた時点で,僕が簡単には渡さないぞという姿勢を見せると,無理に引き取ろうとはせず,「今日は持って帰られますか,すみませんが,とりあえずコピーを取らせていただけませんか」と言ってこちらに判断を委ねたのは,--僕が持っているのは結局他人の荷物なのだからちょっとどうかとは思ったが,--おかげで,かえって素直に引き渡す気になった。

 で,とにかく,せめて,郵便事故の証明書のようなものだけでもいただけないか,というこちらの話に対しては,この話は早番の課長・課長補佐にもしっかり通して,できるだけ早いうちに,課長補佐から送り主さんに電話をさせて,送り返された荷物をまた郵便局にもってきてもらい,大至急お手許にお届けする,と約束してくれた。そういう明解な約束をいただいた上は,これ以上文句を言いつのれば言った分だけ,僕は--さっきのチンピラ君と同様に--ただの理不尽なクレーマーになり果ててしまう。あいにくさっき携帯電話の電池が切れてしまって,自分の電話番号も先方の番号もわからないので,昼前にあらためて電話して番号を伝える旨を話して,話を終わらせた--が,うーん,せっかくだから,やっぱりやっぱり,あと一言二言,言っておきたいぞ。
 「では,そういうことで,よろしくお願いしますね。いや,この荷物の差出人と受取人の方もね,荷物が行方不明になっちゃって,きっとお困りだろうと思ったからですね,僕は今日実は,終電逃してしまったんだけど,ここに書いてあるこの住所の職場から,ここまでずーっと歩いて来たんですよ,この荷物持って」あー,我ながらなんとクレーマーらしい恩着せ台詞だろう。終電逃したのは,ただただ僕が間抜けだったというだけで,たまたま今夜当番に立ってしまった目の前のこの人はもちろん,郵便局にも何の責任もない。
「うん,実はね,ほんとに困ってたんだよ,これ,行方不明になっちゃってね,どこに行ったんだーって。いや,持ってきてくれて,ほんとに助かりました」それそれ,おじさん,そうやって,クレーマー相手なのにすぐに敬語くずしちゃったりするところ,そういうところが素人さんなのよ。『社長を出せ!』って本,知ってます?
 まあとにかく,僕はすっかり溜飲を下げて,郵便局を後にした。さすがに,僕は結局,目の前で誰かに平身低頭,謝らせたかっただけなのかなあ,と思うと,どうにもすっきりしなかったが,とにかく取った行動に間違いはなかったということで,自分を納得させるしかなかった。
 怒りは冷めていたが,眼鏡なしの近眼乱視目玉のおかげで,帰りもずいぶんサッサカ家までたどり着くことができた。

 さて,翌日,職員氏に名前を教えられた,早番の課長補佐氏に電話。
「ああ,はい,○○ですが。……ええ,たいへんご迷惑をおかけいたしました」と切り口上を返したなり,あとは黙ってこちらの出方を窺っている。うーん,昨日のおじさんの恐縮ぶりとは,またずいぶん感じが違うな。黙り合っていても仕方ないから,こちらから話を進めることにする。
「で,えーと,昨夜の××さん,でしたっけ,あの人から一通りのお話は?」
「ええ,うかがってます。荷物はもうこちらの手許にありまして,すぐにお送りするようになってますので。お送り先は,転送を希望されていた職場の方でよろしいですか? △△区▲▲……」
「あー,ええ,そちらでお願いします」
「わかりました。では,早急にお送りしますので」
「よろしくお願いいたします」
「では,失礼いたします」
 ずいぶん淡々とした人で,なんだか事務的なやりとりになってしまった。それにしても,「もう手許にある」って,どういうことだろう? 昨日のおばさんの話では,もう先方に送り返してしまった後だということだったと思ったが。もしかして,僕が電話番号を伝える前に,送り主さんに連絡がついて,早くも郵便局に荷物を持ってきてもらうことができたのだろうか? ……こんなに早く?

 後でわかったことだが,荷物は送り主さんのところには一度も戻っておらず,この2日後に,課長補佐氏の言葉通り,荷物は無事,「速達転送」扱いで,僕の仕事場に届けられた。月並みな表現だが,やれやれと胸をなでおろした。これなら,あの間違えて僕のところに届けられた荷物も,今ごろは本来の受け取り手のところに届いていることだろう。
 思うに,先のおばさん担当者が言っていた「もう送り返されてしまった」というのは,渋谷郵便局から先方の地域の郵便局に戻ってしまったということで,まだご自宅に戻されるところまでは行っていなかったのだろう。……だったらそう言えよ! って言うか,ちゃんとそこまで調べろよ! 調べた上で,再転送なり何なりの手続きを(少なくともそういうシステムがちゃんと存在することは今回明らかになったのだから)取ってよ! 今回の事故で,一番とんでもないのは転送票を貼り間違えた職員だが,その次に仕事がダメダメだったのは,どう考えてもあのオバサンである。僅差で,電話を最初に取った,あのセントラル・サービス嬢が続く。彼女がまともな取次ぎをしていたとしても,おばさんがまともに動いてくれたとは思えないけれど。

 それはそうと,例の帽子男は,あの後どういうアクションを取ったのだろう? 夜番のおっちゃんには本当に同情を禁じえないが,「郵便局ダメダメじゃん」という感想そのものは,結局くつがえることがなかったいぬかわである。





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最終更新日  2005年01月19日 23時44分56秒
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