それゆけ!派遣社員! ~研究所編~

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裏情報1





急ぎの書類の処理をするだけで

午前の時間は、あっという間に終わってしまった。


時計を見ると11時45分だった。

山中さんは当然もういない。


「失礼しまーす。」

坂本さんが、笑顔で入ってきた。


「ねぇ、売店でお弁当買って、私の席で食べない?」

「あ。 はい。」


12時のチャイムは鳴っていないが、昨日のこともあり

言われるがまま、お財布を取り出した。


(でも、いいのかなぁ。 派遣なのに…。)


私は時間には厳しい方だ。

今までも12時前に休憩をとったことはない。


チャイム前から、席を外すことに対して、

私は強い抵抗を感じていた…。


しかし、廊下に出てみると大勢の人達が歩いていた。

もちろん派遣らしい人達も…。

私は驚いてしまった。


「ここって、派遣の人も12時のチャイムを

 気にしなくていいんですか…?」

そう聞いてみると


「そうねー。 

 研究者の場合は、実験の都合でお昼を1時に食べる人もいれば

 逆に、早めに食べて12時前から実験室に入っちゃう人もいる…。

 だから、ここの昼休みは、各自が管理しているって感じかな。

 それに12時過ぎに行ったら人気メニューがなくなっちゃうから 

 派遣の人達も、チャイムが鳴ってから食堂に行く人は

 ほとんどいないかも。」

と、坂本さんが答えた。


(派遣の人まで、OKなんて…。 自由なところなんだなぁ…。)

私は、信じられない思いだった。


売店に行くと、すでに大勢の人でいっぱいだった。

私達は、人ごみをかき分けながらお弁当を買った。


「ふぅ。 すごい人でしたね。 いつもあんな感じですか?」


「そうねー。 12時過ぎたらお弁当は買えないから

 最低でも10分前には来ないとね。」


みんなが時間を守らないのでは、自分だけ時間を守ったとしても

お昼を食べ損ねてしまいそうだ。

時間の件については、もう気にしないようにしようと思った。


二人で雑談しながら、坂本さんのいる部屋に向かう。

その途中、私の研究チームのドアの前で坂本さんが立ち止まった。


「どうしたんですか?」

「ねぇ、座席表を持って来てもらってもいい?」

「あ。 いいですよ。」


私は、何に使うんだろうと思いながらも

座席表を持って、廊下に出た。


「何に使うんですか?」


「いろいろなことを、磯野さんに教えておかないとね ♪」

坂本さんは、意味ありげに答えた。


彼女の席のすぐ近くに、小さい丸テーブルがあった。


そこに2つ椅子を並べている間

坂本さんは、お茶を入れてくれた。


そして 「ここは、私が管理してるからおかわりOKよ!」

と、笑いながらテーブルに置いた。


「あっ、そういえば、さっき高沢さんにお茶コーナーのことについて

 いろいろ注意されちゃいました。」


「もう会っちゃったんだぁ。 彼女、感じ悪かったでしょう?」


「はい。」


私達は、高沢さんのことを話しながらお弁当を食べ始めた。


「前任の原田さんもね、床にふきんが落ちてたから

 洗ったんだって。 そしたらものすごい勢いで

 怒られたって言ってたわよ。」


「じゃぁ、ホントに触らない方がいいんですねー。」


「そうそう。 絶対に触っちゃダメだからね。」


お弁当を食べ終わると、坂本さんが

「座席表、コピーしてもいい?」と聞いてきた。


「はい。 どうぞ。」


そして、坂本さんはなぜか座席表を2部コピーして戻ってきた。


「どうして2部なんですか?」


「1部は、まともな情報。 まだ○×研究チームのこと

 把握していないでしょう?」


「はい…。」


確かに私は、山中さんが自分の上司…ということ以外、

ほとんど何も知らなかった。


「そして、もう1部は裏情報用。 危険人物を教えてあげる。」


「高沢さんの他にも、まだいるんですか?」

私は驚いてしまった。


「高沢さんは、まだいい方よ。」そう言いながら、

坂本さんは、蛍光ペン数本を手にとった。


「それじゃぁ、説明していくね。」


「はい…。」


(高沢さんは、まだいい方なんだぁ…。

 危険人物って…。 どう危険なんだろう…。)


私は、聞きたいような、聞きたくないような

複雑な気持ちだった…。





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