それゆけ!派遣社員! ~研究所編~

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次の日の朝、私は研究チームに入るなり

山中さんの席へと向かった。


「おはようございます。」


「おはよう。 愛ちゃん。」

山中さんは、あいかわらずさわやかな笑顔だった。


「あの…。 昨日の件でお話したいことがあります。」

私は固い表情のまま、山中さんに言った。


いつもとは違う私の様子に、山中さんも慌てて

「わかった。 会議室に行こう。」

と言ってくれた。


そして、自宅に吉沢健人からバラの花束が

届けられたことを告げた。


「本当に…?」

山中さんは驚きの表情を浮かべ

昨日と同じように腕組みをした。


「本当です。

 なぜ私の住所がわかったのか…。

 なぜ年齢を知っていたのか。 とても怖いんです…。」

と、正直に自分の気持ちを話した。


すると、山中さんは意外なことを言った。

「住所はね…、すぐにわかるんだよ。」


「えっ! どういうことですか?」

私は、少し強い口調で聞いた。


「実は、研究チーム内にホームページがあるんだけど

 そこに研究チーム内の人、磯野さんも含めて

 全員の住所と電話番号が載せてある。

 研究所は、危ない薬品も装置も使っているし

 緊急事態が発生しやすい職場でもあるからね…。

 もちろん、閲覧できるのはチーム内の人限定だけど。」


「私の住所や電話番号が載ってるなんて、聞いてません。」

私は、抗議するように言った。


「そうだね…。 それは僕が悪かった。

 今までずっと、関連会社の人や、派遣の人の分も

 一緒に載せるのが当たり前だったから

 僕もいつもと同じように、磯野さんのプロフィールを

 ホームページ作成者に渡したんだよ。

 でもまさか、こんなことになるとは…。

 本当に申し訳ない…。」


山中さんは、テーブルに手をついて私に頭を下げた。


「そのプロフィールって、派遣会社からのものですか?」

私は、怒りの感情を抑えて聞いた。


「うん。 君自身は見たことがないかもしれないけど。」


「そこには、生年月日も書いてあるんですか?」


「派遣会社からのプロフィールには、磯野さんの写真と住所、

 電話番号、今までの職歴、取得した資格、そして…

 生年月日も書いてある。」

と、山中さんは言った。


「そうですか…。」

私は、自分の手をぎゅっと握った。


吉沢健人は、ホームページで私の住所を知ったのだ。

そして年齢は、そのホームページを作成している人にでも

聞いたに違いない…。


うつむいたままの私に、山中さんは再び頭を下げた。

「本当に申し訳なかった…。」


私は、なんだか裏切られた気がした。

ホームページがあるなんて、一言も聞いていない。

ましてや、そこに自分の住所や電話番号が載るなんて…。


自分の知らないところで、自分の情報が漏れた…。

そのことが、とても辛く悲しかった。





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