ある日の出来事〜It Happened One day

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2025.07.07
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カテゴリ: 通勤



朝の通勤ラッシュ。いつものように電車がホームに滑り込むと、乗車口の前で人々が静かに押し合いへし合いしていた。

彼女もその中にいた。スーツ姿に身を包み、視線は空ろ。眠気と戦うような目つきで立っている。

電車の扉が開いた。その瞬間だった。

背後から、不意に強く押された。バランスを崩しそうになる私の肩をすり抜けて、一人のOLが空いた席にまっすぐ歩み寄って座った。

そこは――どう考えても、私が座るべきだった場所だ。

順番は明らかだった。押しのけられたことで、一歩遅れた私は、立ったまま彼女を見下ろすかたちになった。

その女性は、まるで自分でもわかっているかのように、少しうつむき、どこか申し訳なさそうに目を伏せていた。けれども、そのまま何も言わずに座っている。

なら、なぜ押しのけた?

心の中に、小さな怒りが湧き上がる。胸の奥で燻るように、じりじりと私を責める。

「私も横入りじゃないか」と、一言だけでも言えばよかったのか。いや、もっと強く、「今のはないだろう」と告げるべきだったのか。

しかし、私は何も言わなかった。ただ、立ったまま、揺れる車内の天井を見上げていた。

沈黙と揺れの中で、自分の声の出し方を忘れてしまったように。

今日も、悶々とする通勤電車の朝が、静かに始まっていた。






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最終更新日  2025.07.07 08:06:49
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