昼寝おばさんのひとりごと(浅草物語)

昼寝おばさんのひとりごと(浅草物語)

2012.05.06
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カテゴリ: 津波
「遺体」震災、津波の果てに

   読みました。

以前から読みたいと思いながら躊躇していた本です。

けれどいつかは読まなければならないと思っていた本です。

タイトルから内容が容易に推測出来るように、

津波の恐ろしさがどんなものであったか、人が直視したくない現実がこの一冊に詰まっています。

膨大な数の遺体に携わった方々を遺体安置所で丁寧に追った壮絶なルポルタージュ。

こんな本は読みたくないと言う人がいるかも知れない、それはそれでいいと思います。

ただ私は、あの日あの場にいた者として、本当の現実を心に刻んでおきたいのです。



遺体など写っていない。

本当はおびただしい数の遺体が横たわっていたはずなのに。

私は震災の翌朝、避難のために津波が引いた街を自衛隊に誘導されながら自分の足で歩いたのです。

異臭を放つヘドロの足元、無残な姿の車の中にある人影、瓦礫とヘドロにまみれた遺体らしき物…

あの時点では生存者の救助が最優先でした。

(それでも度重なる大きな余震のために、救助の車両も何度か引き返えしたりして、私が救助されたのは日が暮れてからでした)

だからこの本を読むと、あの日の臭いや、空気の感覚や、地面の感触が、蘇るのです。

あの場にいた人間しか知らない現実を心に刻んでおきたい、生涯忘れないように…

この本を読んで、あの震災で遺体と真摯に向き合った多くの人々の存在を知りました。

海上で遺体を回収する保安員、瓦礫に埋もれた遺体を探し搬送する自衛隊員、安置所へ運ぶ職員、

死因を検索する医師、歯形の記録を取る歯科医、葬儀社スタッフ、消防団員・・・



時間が経つにつれ発見される遺体の状態は段々と酷くなる。

そんな遺体に向き合うことは想像を絶する大変な作業。


だけどそんな現実に同じように向き合う事になってしまった普通の人々の存在。

それは愛する家族を失い必死に探す人々。

ご遺族になった人たちはこんなに残酷な現実を、見つかるまで毎日突きつけられていたのです。



だから私も目をそむけず現実をしっかり見なければいけない責任がある

そんな決意をさせてくれる本でした。

我が町の広報にはいまだに「身元不明者のリスト」が載ってます。

その中でこんな記述があります。

「胴体腹部前面」 「左足のみ」 「骨数本」

そんな姿で発見されているのです。

あの震災の日まで同じ街に住んでいた人間が…



著者があとがきにこう書いています。

「復興とは家屋や道路や防波堤を修復して済む話ではない。

人間がそこで起きた悲劇を受け入れ、

それを一生涯十字架のように背負って生きていく決意を固めてはじめて進むものなのだ。」


重い読後感が残る本でした。





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最終更新日  2012.05.06 20:26:59
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