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カルーア啓子さんサイド自由欄
(この見通しのいい草原を決戦場にというわけか。願ったり叶ったり、市街戦が一番嫌なパターンだった。街の外で待ち受けるなら、先ほどの森林で待ち受けるはずだが、そうしなかったのは、航空機の援護があるわけだな。)
日野は接近戦の援護は戦闘機の低空飛行以外にないと思っていた。上空の高いところからの爆撃は味方のいないところでしかできない。だから、携帯対空誘導弾で対処できると。
携帯対空誘導弾の操作隊には上空、特に右手前方、北東方向に注視するよう指示していた。
リベルテ国には戦闘機はあるが、それより高度な爆撃機はないことを日野は知らなかった。
リベルテ国の車両の位置がナナヨン戦車の射程距離内の位置まで進行すると、日野は隊を停止させ、スパン帝国とロマスク帝国はサラエの時と同じように配置し攻撃するように、アコリ少尉に指示して欲しいと川本に頼んだ。
「いいですよ、私は通訳ですから。」と笑いながら答えて、川本はオート3輪の隊のところへ去っていった。川本は分かっていたのだ。外交官の仕事ではないようにみえるが、スパン帝国とロマスク帝国と日本をつなぐために必要なことだと。
両軍は対峙したまま動かない。日野は敵が航空機の到着を待っていると察すると、ナナヨン戦車に砲撃を命じた。ドカーン、ドカーン、ドカーン。リベルテ国の戦車に命中する。
ドン、ドン、ドン。リベルテ国の戦車からの砲撃、届かないので前進してくる。同時に軽トラから兵たちが溢れるように出てきて突進してくる。
ドン、ドン、ドン。ドカーン、ドカーン、ドカーン。
スパン帝国とロマスク帝国は動かない。敵兵が近づくまで待っている。
ダダダダダ。ダダダダダ。オート3輪の陰から射撃、敵兵が倒れていく。
そのとき、ブオーン、ブオーンと大きな音を発してプロペラ機が5機、右手前方から低空飛行でやってくる。機関銃を撃ちながらの飛行で、リベルテ国の兵をも倒しながら、オート3輪を攻撃。
突然、空中でプロペラ機が爆発、ドカーン、ドカーン、ドカーン。携帯対空誘導弾の攻撃だった。
一瞬、全ての攻撃音が止まる。もっとも驚いたのは、間近でその攻撃を目撃したスパン帝国の兵たちであった。
(信じられない。飛んでいる飛行機を当てるなんて。我々はあの飛行機に攻撃されて、国を捨てざるを得なかったのに。)スパン帝国のネント少尉は、敵のリベルテ国よりも味方の二ホンに恐れを抱いた。
5機の戦闘機がすべて撃墜されると、オート3輪に向かって突進していたリベルテ国の兵たちは突進をやめ、逃げ出した。
それを見たアコリ少将は、ネントのように呆然としていたが、「追撃、全員、前進して追撃せよ。」と命じた。ダダダダダ。ダダダダダ。逃げる兵を追撃する。ダダダダダ。ダダダダダ。
それを見ていた日野は、(さすが、分かっていらっしゃる。あんなに多くの武装兵が街に逃げ込まれたら困ります。)そう、思った。
日本の戦闘車両も砲撃しながら前進する。装甲戦闘車や機動戦闘車は逃げる歩兵に追いつき、、ロマスク帝国の兵たちと共に、逃げる兵を小銃射撃する。ダダダダダ。ダダダダダ。ダダダダダ。ダダダダダ。
ナナヨン戦車はリベルテ国の戦車や軽トラを砲撃し、爆破していた。ほとんど走行不能にし、数台の軽トラが街に向かって逃げ帰っただけであった。
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草原の決戦が二ホンの圧勝に終わったが、被害がなかったわけではない。機関銃を撃ちながらの戦闘機の攻撃でロマスク帝国の兵に死傷者が出たし、携帯対空誘導弾の操作隊にも銃弾を受けた者がいた。幸い操作隊員は防弾チョッキを着用していて、致命傷はなく怪我だけで済んだが。
コガタと呼ばれるトラックには医療団がいて、負傷者の応急手当てをしている。重症者もいるので、スパン南基地に連絡をとり、トラック1台が重症者を載せて引き返すことになった。医療設備があるのは、3つの艦だけである。スパン南基地には医師が常駐しており、輸送艦しもきたが停泊している。状況によっては医療設備が充実しているいずもへの転送も考えられるが、それは医師の判断による。