楽しきかな楽天生活

楽しきかな楽天生活

2007年06月03日
XML
テーマ: ☆奈良☆(195)
カテゴリ: 奈良なおハナシ


国領さんという陶芸家の方と
「富本憲吉記念館」 へおでかけ。

国領寿人さん は、富本憲吉のお弟子さんで、
富本先生の人となりをよくご存知の方です。

何故そんな凄い方とご縁が出来たかといえば、
かすみさんが京都で六波羅蜜寺を探している時に、
道を尋ねたのが、国領さんの奥様だったということで。
おお、なんという偶然!
お話をしている中で、
ご主人が富本憲吉のお弟子さんだった方と判り、
お宅へ伺ってお話するうちに
「では、奈良の富本憲吉記念館へご一緒しませんか?」
ということになったそうで。
今日がその日なのでした。

しかし、恥ずかしながらワタクシ、富本憲吉に関する予備知識がなく、
絢爛豪華な壷 作ってたよなあ…てな認識しかありませんでした。
そんなわたしでもOK?と思ったら、
やはり本日同行するなぎさんに
「大丈夫大丈夫、富本憲吉の壷は素敵だよ」と云われ。
ま、ここはひとつ、人生何事も勉強だ!ということで、
門外漢の私もお邪魔することにしました。

行きはJR法隆寺まで行き、そこからタクシーで。
地図を見たら、歩いて歩けない距離ではないけど、
村の中の細い路をくねくねと歩いていくようなので、
路に迷っても困ると思い素直にタクシーにしました。

rakuten070603-01.jpg
JR法隆寺駅

法隆寺駅もしばらく行かなかったら、きれいになってました。
タクシーに乗り込んで運転手さん行き先を告げると、
「珍しいね~たまに行く人いるけどね」とのこと。
細い路をバンバン飛ばし、すぐ到着。
さすがはタクシー。乗って正解でした。

rakuten070603-02.jpg
表門の看板

タクシーで着いたところへ、かすみさんと再会。
盛り上がっていたところへ、ほどなくなぎさんも到着。

本日ご案内いただく国領さんと奥様はすでにこられていて、
ご挨拶もそこそこに早速中へ入ってみることにしました。

rakuten070603-03.jpg
受付の建物前から門方面を望む

ここは富本憲吉の生家を整備して、記念館にしたとのこと。
ご家族の皆様はみなこの家を離れてしまっているので、
管理は別の方がしているとのことでした。

rakuten070603-04.jpg
庭にはザクロの木

富本先生はザクロがお好きとのことで、
その作品にもザクロが多用されているとのことでした。
国領さんがこの場にお持ちになっていたの作品集にも、
ザクロを使用した作品が載っていまして。
こりゃ、本格的なご説明がいただけるのだと今更ながらに
自分の場違いさが…(汗)
ここで焦っても、もう遅いですが。
かすみさんと、なぎさんの後ろから、
邪魔しない程度にお話を聞かせていただこうと。

受付の建物前には、見慣れない羊が二頭向き合っていて。
くるりんと巻かれた角を見ると、
どうやら東洋系の羊さんではないようです。
はて、あなたはどこから来たの?

rakuten070603-06.jpg
エキゾチックな羊さん

rakuten070603-05.jpg
彼らはどこから来たんでしょ

受付の建物をくぐって、展示室へ。
展示室は、旧来の蔵を改造改築して展示室にしているとのこと。

ここにも、本州っぽくない石人が「展示室はこちら」と案内をしていて、
なんだかエキゾチックな感じもします。

rakuten070603-07.jpg
九州の石人を思わせる石像

(ちょっと調べてみたら、 この石人 は、
ここの館長さんのコレクションだそうです)

rakuten070603-08.jpg
蔵作りの展示室へ

rakuten070603-09.jpg
竹もみごとです

蔵の中に入るというのは、会津の蔵屋敷や、
喜多方のレストランなどでも体験済みですが、
美術品が並んでいる蔵というのはわくわくするものです。
まさに『お宝が並んでいる蔵』って感じで。

で。
中へ入って、まず驚いたことは。
「あれ?こういう作風でしたっけ?」ということ。

私の中のイメージとしてはあくまでも、
金糸銀糸に絢爛豪華なイメージだったもので。
羊歯を模様化した壷とか、多色の発色のよい花瓶とか。

まず、この蔵の中のものは富本憲吉の奈良在住の時代
(奈良時代)と呼ばれる区分の中で、
富本先生の初期の時代の作品が並んでいる
蔵だったもんですから、私の勝手なイメージと離れすぎです。

それでも、順当に「白磁の壷」や
「朝鮮風味が効いた蓋つきの壷」などが並ぶ
一階の展示品には納得することしきりだったのですが。

しかし、二階に行って見たら…おおおお。
これは、なんだろう?
今までのイメージがガラガラと崩壊です。

モダンなポット。
喫茶店で出てきたら素敵であろう珈琲カップ。
今までの、羊歯の赤地に金銀…のイメージが完全に崩壊しました。

こんなシンプルなものを作った人だったの?と。
確かに一階の壷も、白磁や、定番中の定番の壷もありましたが、
あれはあれで「美術品としての壷」として定番だと思います。

しかし、ここにあるのは生活用品としての食器の数々。
珈琲を淹れ、それを注ぐカップ。
ビールをついだらおいしいだろうなという陶器のグラス。
こんなものも作っていたなんて。

と思うこと自体、私の認識のほうが間違っていたようです。

富本先生は、 民芸 にこそ力を注いだ人であり、
生活用品にこそ力を注いだ人だったのだと聞かされ、
それこそ、皿を焼いては吟味し、壊し、作品に厳しく、
他の人間とも付き合わず、陶芸の道一本以外は知らず、
酒も飲まず、友と語らず、
陶芸一筋みたいな人が「人間国宝」になるんだろうという、
それは私の誤った先入観でした。

国領さんがおっしゃるには
「富本先生は本当に普段の生活を大切にされた。
そのために、お茶碗や皿を大切にされた。
本当に日々の何気ない生活を大切にすることが
一番だった」という言葉に、
目から鱗が落ちたというか、
初めて接した『凄い話』でした。

そういうお話を聞いた後で、ここにあるものを見回してみれば、
確かに普段の生活に使っていたであろうものばかり。
ビールジョッキや、珈琲カップ。
しかし、思えばこの陶器を焼いていた時代はまだ大正の始め頃。

その頃に、いっちゃなんだが、この大和の、国中(くんなか)の
どまんなかの田舎の片隅に、こういうものを作っている人が
いたってことは凄いことなんではないだろうか。

まさに、大和はクニのまほろばの時代からずっと続いてきた
日本の一番古い部分を引きずっているはずの場所で。
こんな西洋文化を持ち込んできた人が住んでいて、
生活して、創作をしてきたなんてのも信じられない。

rakuten070603-10.jpg
このモダンさはなんだろう

rakuten070603-11.jpg
この珈琲カップの形のよさ!

このカップは、1933年に安堵にて作ったもので、
なんと、東京国立近代美術館蔵にも
ポットとミルク容器、シュガーポットが所蔵されているのでした。
〔fig.6参照〕
その、同じ作風のカップが、ここにあることの凄さ!

この当時の留学なんてものは、天国の次に遠いところで(笑)
親戚中の非難ごうごうの中、
留学を許したのはおばあちゃんだったそうです。
江戸の昔は、西洋のことは長崎に勉強に行ったもんだが、
今は時代が変わって、新しいことを勉強するには西洋に
留学するのもよかろうと、おばあちゃんの
一声で可能になったんだとか。

なんとまあ、凄いばあちゃんだったんだろうと。
たぶんおばあちゃん自身は、この地から出ていたことなど
なかっただろうに、日本の、大和の、国中の田舎にいて、
そこから、豪農の、跡継ぎの、長男(ある意味三重苦だ)を、
まだ飛行機なんかなかった頃に、船旅で、声の届かない異国へ
出すことを了承するなんてのも、なかなか出来ないことだと思う。

しかし、そのおばあちゃんをしても、
「陶芸」はなかなか許してもらえない時代だったんだとか。
今は「職人」といえば「その道一筋」とか「職人かたぎ」とか
いいイメージがあるけど、当時の人からしたら、
土をこねる人>焼いたものに絵をつける人、だったから。

土をさらって、こねて、手を汚して、作る人は、
絵付けをする人よりも下に見られていたという事実。
外国に行くことは許せても、
「職人」になることは許してもらえなかった時代。
そんな時に、豪農の跡継ぎ長男は留学することは歓迎されても、
「職人になる」ことだけは、あの豪快なお婆さまですら
「それだけはやめてくれ」と懇願されたんだとかで。

そんな時代に、富本先生は陶芸を志したのでした。

rakuten070603-12.jpg
絵の具刷りも自作で作ったそうです

rakuten070603-13.jpg
葡萄柄が中国より先のシルクロードを感じさせます

そういう話を聞いたうえで、これらの作品を眺めていると、
いかにそういう生活の中でこれらが作られたかを
うかがい知ることもできようものです。

この葡萄のみずみずしさは、まさに、インドを旅して来た、
シルクロードの船隊譲りの記憶のような気がするし、
この蔓の巻き具合を見ていると、
薬師寺の薬師如来の台座の文様を思い浮かべます。

この階段を上がってきた時までは、
正直いってあまり感動がなかった私ですが、
階段を下りる頃には「これ欲しい!」と思えるものに出会えて
本当にうれしかったです>身近に感じられた証拠だから。

人間国宝の作品だから欲しいんじゃなくて、
(第一そんなもの、自分の身分からして
買えっこないと思い込んでいるから)
作品自体が気に入って欲しいと思える。

私の生活に、あの金銀の壷は不要だけど、
あのコーヒーカップがあったらいいなあと思えることに
ちょっとした幸せを感じられて。

(2へ続く)






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007年06月19日 17時03分09秒
コメントを書く
[奈良なおハナシ] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Calendar

Archives

2025年11月
2025年10月
2025年09月
2025年08月
2025年07月
2025年06月
2025年05月
2025年04月
2025年03月
2025年02月

Comments

名無し@ Re:マレブル旅行記★その6(ブルネイ入国の巻)(01/20) ランクルじゃなくてパジェロですね。 グリルに…
カルホ @ Re:クアラルンプール空港!(01/24) ソムリエA(笑)さん ほら、KLIAはなんか…
ソムリエA(笑)@ クアラルンプール空港! ねえねえ、クアラルンプール空港、最近ど…
カルホ @ Re:遠路お運びありがとうございました。(01/24) 学友さん その節は大変お世話になりました…

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: