楽しきかな楽天生活

楽しきかな楽天生活

2007年06月03日
XML
テーマ: ☆奈良☆(195)
カテゴリ: 奈良なおハナシ


国領さんからお聞きする、富本先生の姿も思い浮かべつつ、
その作品を間近に感じられるなんて、実に贅沢。

ここで国領さんが語って下さったことは、
ほとんどどこの本にも、伝記にも残ってないことだと思う。

国領さんは、富本先生の晩年の頃のお弟子さんで、
息子というよりは孫のような存在。
その国領さんが語る富本先生ってのは、
本当に好々爺そのもの。
人間国宝なんて仰々しい存在には感じられません。

そんなエピソードを一つ。
自分で焼いたものを、たびたび人に贈っていた富本先生。
もらった人も、押入れの奥にしまっておいたけど、
富本先生が人間国宝となったら、
押入れの奥から引っ張り出してきて、
箱書きをしてほしいともって来る人が増えた。
「これ、箱書きしてどないするの?
売るんやろ?だったら手間賃として五千円置いていき」
といい、箱書きのたびに五千円請求したそうな(笑)

それは、お金欲しさではなく、あくまでも
手間賃としてのことであり、
そのたびごとに、国領さんは墨をすり、
箱書きのための用意をしたそうです。
ある時は、十人ほどが箱書きにやってきて、
(手元に残ったお金を見て富本先生が)
「国領くん、今日はようけ儲かったなあ」
と笑われたとのこと。
儲かったって…(笑)

そういうお金には無頓着だったけど、
こういうところは子供のように純粋だったんだなと。

そして、やはり気になる人間国宝と勲章の話。
富本先生はそういうことは全然頓着せず、
もらった後でも全然そういう話をしてくださらなかったので、
国領さんがのちに尋ねたところ。
「自分が勲章をもらったことは、
一つのことをきちんとやっていれば、
陶芸の人でも、勲章がもらえるんだということが
世の中に知ってもらえてよかった」
というような趣旨のことのみをお答えになったということ。

婆ちゃまに反対され、職人が軽んじられてきていた時代から、
一つのことを続けていれば、職人が表彰される時代になった。
それが、世の中に知ってもらえたのが良かった。
ただ、それだけ。

自分が取れてよかったとか、
自分の精進さが認められたとか、
そういうことは一切いわず、
ただ職人の立場が認められたことが、
一番うれしかったというような想い。

その証拠に、勲章見せてくださいっていっても、
「はて?どこへやったかな?」
くらいのお返事だったとか(笑)
部屋の床の間に飾っておくようなこともなく、
もらった事実はうれしかったけど、
それをひけらかすようなことは一切なかったとのこと。

そういう話が聞けて、お人柄が偲ばれるのでした。




さて次は、東京時代から京都時代の作品をあつめた、
別の蔵の展示室へ移動します。

そこでも新たなる感動がありました。
正面のガラスケースの中には、
自分のお子様に与えるために作ったままごとせっと。
小さいながらも、陶器でできた、ミニチュアなのだけど、
プラスチックなどない時代の、本物のままごとセット。

rakuten070603-14.jpg
お子様に与えた手作りのままごとセット

今でも、あるんですよ、玩具で、本物の陶器のままごとセット。
その裏面には、「子供にだって本物を与えたい」という趣旨の
ことが書かれていて、それは富本先生の主張と一緒のようです。

子供にも本物の陶器を与えれば、大事に扱う。
大切に扱わないと、壊れてしまうということを、
壊してしまった時に学べるから。

子供用だからプラスチックでいいということではなく、
子供だからこそ本物のよいものを与えてやるのが親の務め。
そんなことが書かれていたのを思い出しました。

そして、その上には、家族用のご飯茶碗が並べてありました。

これが実に感動的なのです!
名前入りです>めいめいの。
奥様の名前が入ったものや、
もちろんご自分用のものもあります。

rakuten070603-15.jpg
憲吉用(!)

今はおみやげ物やさんで「お父さん」とか「ぼくの」とか
入った湯飲みや、箸なども見かけますが、
この時代に、家族のために、家族専用の茶碗を焼く父親!
なんて素敵なことなんでしょうか!

しかも、自分用の茶碗には
「憲吉 愛用 」と書かれたものまであります。
茶碗を焼いている時点ではまだ、愛用ではないわけだけど。
それでも、自分が気に入った茶碗が出来たので、愛用と入れて
愛用しようと心に決めたのかな?などと話も弾みます。

rakuten070603-16.jpg
憲吉愛用!

そんな富本先生ですが、生涯の中で使用した落款が、
とてもお洒落なのでした。

豪農の長男という立場に生まれたものの、
戦後の財閥解体と、小作農開放で、生家は勢いを失い、
そんなとき、田畑を取り上げられたときには、
「富本」の「富む」の字から、田んぼの『田』の字を
取り去った字を落款として使っていた時期があるのだとか(笑)

まさに、田んぼがなくなった状態だから、
富むとは言いがたいわけで。
そこに、実際の生活は苦しかったでしょうが、
田を取られてしまったよという洒落が表れていて笑いました。

rakuten070603-18.jpg
洒落っけのある落款

あと、清水に逗留して、長々といたときは、
富のウ冠が、富士山の山頂の形になっていたりと…。

(余談ながら、某オークションで出品されていた、
本物とされる作品にもこの落款が押されていました。
1930年代の頃のものとされていたので、
あの出品ブツは本物だろうな…などと、
いっぱしの鑑定家気取りになれたのも有意義でした)

rakuten070603-19.jpg
富士山にちなむ落款


(その3へ続く)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007年06月19日 17時03分42秒
コメントを書く
[奈良なおハナシ] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Calendar

Archives

2025年11月
2025年10月
2025年09月
2025年08月
2025年07月
2025年06月
2025年05月
2025年04月
2025年03月
2025年02月

Comments

名無し@ Re:マレブル旅行記★その6(ブルネイ入国の巻)(01/20) ランクルじゃなくてパジェロですね。 グリルに…
カルホ @ Re:クアラルンプール空港!(01/24) ソムリエA(笑)さん ほら、KLIAはなんか…
ソムリエA(笑)@ クアラルンプール空港! ねえねえ、クアラルンプール空港、最近ど…
カルホ @ Re:遠路お運びありがとうございました。(01/24) 学友さん その節は大変お世話になりました…

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: