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216年 孫劉決裂
劉備軍が中原を曹操軍から奪還していた頃。
許昌を訪れた劉備は、献帝の言葉に驚きを隠せませんでした。
献帝は、自ら劉備へと禅譲を申し出たのです。
献帝は自らの無力を嘆き、この乱れた世を自分に代わって治めて欲しいと切り出したのでした。
それが献帝の本音ではありません。
しかし、乱世に終止符を打ち、世を平定するだけの力を献帝は持ち合わせていませんでした。
有力な武将の力を利用して漢王朝を復興しようという理想も、現実には成りえなかったのです。
献帝は考えた後、漢王朝復興を同じく劉姓を持ち、この戦乱を生き残った劉備に託そうと決めました。
劉備はしばらく逡巡した後、この禅譲を受け入れ、諸葛亮の薦めに従い、泰山の儀を執り行います。
216年、3月。
漢皇帝に上った劉備は五虎将軍に徐州攻略を指示します。
董和の進言を受け入れ、成人を迎えたばかりの関羽の娘・関銀ペイを官渡の守備隊長に抜擢し、趙雲とともに対曹操軍の最前線である黄河の守備を固める一方、馬超、張飛、董白ら三万騎と攻城部隊が北海へ向けて侵攻。同時に、関羽を総大将とする三万五千の大軍が小ハイから下ヒへと攻め上ります。
対する曹操軍は各地で抵抗を試みますが、既に昨年末の小ハイの攻防にてその主力部隊を失っており、次第にその力を失っていきます。
下ヒ、そして北海が陥落したまさにその時。劉備軍を驚かせる報告が入ります。
『ここに、劉備との同盟を断つ』
許昌を訪れた孫権軍の使者・諸葛キンの口上。
それは、孫権からの同盟破棄を意味する物でした。
さらにこの時、寿春の孫権軍七万が、手薄となっていた小ハイへと一斉に攻めかかります。
この時、もっとも事態に即応したのが張飛でした。
彼は身一つで小ハイへと戻ると、騎馬一万騎を率いて、孫権軍七万に対して猛攻を仕掛けます。
さらに関羽、華姫が下ヒから二万五千の軍勢を率いて、それを側面から支援。
張飛は攻城部隊を小ハイにとりつかせまいと縦横に駆け回り、関羽は乱戦の中で孫権軍の武将三人を一人で打ち破り、孫翔の首を刎ねます。
しかし、所詮は多勢に無勢。
奮戦も空しく、小ハイは陥落し、守将の呉イは、生き残った三千の兵をまとめて陳留へと撤退していきます。
関羽、張飛らも孫権軍の追撃を避けながら、下ヒへと撤収していきました。
そんな膠着状態の中、許昌を曹操が直接、訪れるという事件が発生します。
先の戦の折、劉備軍に捕らえられた曹操の正妻を返却して欲しいというのです。
この期に曹操を捕らえ、首を刎ねるべきだと一人の武将が進言しますが、劉備は応じませんでした。
『私が呂布に徐州を奪われた時、曹操は私を迎え入れることはあっても、捕らえて首を刎ねようとはしなかった。また、私が叛旗を翻して破れ、関羽と妻達が虜となった時も、賓客として遇し、決して無下に扱おうとはしなかった。騙し討ちすることなどない。私と曹操は、戦場にて敵味方として決着を決めるべきであろう』
そう言って、劉備は妻を連れて去り行く曹操と決着をつけることを誓い合うのでした。
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