細木数子かわら版

細木数子かわら版

2008.06.04
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カテゴリ: 小説
満足感に包まれている自称占い師です、こんばんは^^

応援いつもありがとうございます^^
トップ10に入ったら気合いの入った記事書きますね。
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最近文が書けない日々が続いていまして、1週間ぶりくらいに書くことが出来ました。
やっぱり切羽詰まって書きすぎたかな?と思います。
早く良い文書いてどこかに投稿したいと思ってました。
焦りはいけないものですねー。

今日は自己満足のための小説コーナー。

自分的には満足しています、ああこういうのもいいなと。
お口に合えば幸いです。
では、どうぞ。





ベーキングパウダー


 ボーリング場。午後七時。事件当日。私はその日、ただ一つのことに意識が向いていました。たった一つ、たった一つ、そのことを事件と呼ぶかは人それぞれかもしれないけれど普通の人は言わないに違いないのです。それでも私はそのことを起こるであろう事項の一つとして事件と捉えているのです。もしその事件次第では私の身が幾らか変化が起こるかもしれないと思えば、やはりそれは私にとっては重大な「事件」なのです。そのボールの向こう側、ただそれだけでした。
「氷川さん、靴のサイズは?」
「私?23インチ」
「23?やっぱり女の子は小さいなぁ」
男と女。その境目にある決定的な差なんて本当は何も無いんです。どちらもれっきとした人間、どちらが上でどちらが下だなんてそんな考えは馬鹿げている。だのに腕力の差だったり社会が見る権力の差だったり、自分一人ではどうしようもない問題に包まれてそうして男と女の間に生じるは歴然の差。そして恋。
 恋をしました。色んな人を見てきてあるいはこの人が最後の人になるのではなかろうかという人に出会いました。そしてこの人が駄目だったら千年の恋も冷めてもう二度と恋なんてしないと心にさえ誓いました。出会って少ししてお互い気が合うようになってきてやがてお付き合いすることになりました。彼から告白してきました。私はそれをしばらく慎重に考えて答えを出しました、もうこの人で最期だという覚悟の元に。付き合いは順調でした。とっても頼りになる人で夢に向かって進む彼を応援したい、助けたいという思いが日に日に強くなっていきました。
けれどそれは最初のほうだけで、徐々に中だるみというものも生じました。あるいは別れるのではないかという考えさえ浮かび、悪いのは自分だという自己嫌悪が始まりやがて彼を見れない時期もありました。紆余屈折して、最初の覚悟はどうした、そう考えるようになり、随分と彼について考える時間が増えました。


「氷川さん、見て、あの電気」
「あ、チカチカしてる」
「早く取り替えないと大変ね」
家の近くの電灯が今にも消えそうでした。

韓流ドラマのあの純愛さが羨ましい。

「皿に変な様子」、その様を見て、
描くはゆっくり五文字の頭文字。
膨らますは喜劇?悲劇?
韓国での言葉を私は喜劇しか知らない。
日本での言葉は平仮名でも片仮名でも知っている。

 ボーリング場。彼と私と共通の知人二人の計四人で向かった矛先を彼は知るはずもありませんでした。私は決めていました。彼が最後の投球でストライクを出せば上手くいく、彼に一生ついていって、きっとそれで悲劇は喜劇に吸い込まれ楽しい人生が待っていると。彼がもしストライクを出せなければ私たちはそれでおしまい、私は再び闇の中に入っていって悲劇はさらに悲劇の全貌を見せ始め膨らみ続けていくのだと。彼と出会ってもうすぐ二年、何かに賭けてみたくなったのです、これくらいの賭けに勝てないようなら私たちはそんなもの、ちょっとした縁の狭間で出会った二人に過ぎなかったのだと思えるのです。
 危機たる覚悟でした、でも私は彼を信じたかった、最後に残るは信じる心と先人の人が言っていたがほんとそう、底が欠ければ何だって存在しないように、そこが欠ければ私の恋は成り立たない。信じたい、そしてもっと彼の元で夢を見ていたい。私も信じたい、この人で間違いなかったと自分の目を、運命を信じたい。そしてそんな想いも彼になら伝わると信じたい。だから、頑張って。
 運命のボーリング。スタート。先頭は女友達の末永さん、次に男友達の早川君、そして彼、私の順。誰も知らない、あるいはそういった私の覚悟を彼以外の誰かに伝えて気持ちを落ち着かせるのもいいかと思ったけど、そんな軽いものでない。ちょっとしたゲーム感覚で試されたら私がたまらない。こうやって何気ないボーリングの結果で恋の今後を決められる彼もたまらないかもしれないけれど、とにかくこれは私の問題。

純愛。純粋。誠実。正義。愛。恋。彼。あなた。愛情。感情。
希望。明日。夢。あなた。私。運命。宿命。縁。赤い糸。
戯言。夢。空夢。空虚。あなた。幻。幻影。影。儚さ。
真実。信心。真心。心。あなた。私。一緒。希望。欲望。失望。疑問。
喜劇。悲劇。あなたと私。信心。

 初めて手を握ったあの日を覚えていますか。
あの日のドキドキから私はあるいは今でもそのときめきを忘れられずにいるのかもしれません。
あなたから来るメール、電話、本当に心がときめく。心がそう言っている。
2年間、いろいろあったけど、そんなことも今にして思えば良い思い出。
これからももっとあなたと素敵な幸せの先を見ていたい。

 思い思いに皆投げ始める。彼はボーリングが上手だけれど今日も調子は良いみたい。勢いのある声が響く。皆笑顔で拍手しながら迎える。この時間が止まればいい、もっともっと幾らでも今を永遠だと思いたい。だけど、そう、そんなことはない。そうだとしたら私たちはもっと大きな高みに進めない。現実は待ってはくれない。分かっていることなんだけど、どうしても私はそれを今まで否定してきたように思えてなりません。
 あなたのことを考え始めて、あるいはこの人といて、この人を想うことこそが私の探していた幸せでないかと思い始めてあなたのことばかり思っていました。人々の言う幸せの意味も何となく分かり始めました。けれど彼への思いが強くなればなるほど神経質になって、ちょっとした彼の失敗も許せない女になってしまいました。そんな悲しい狭さにうんざりして彼を思わなくなると自然と彼は普通の人に変わっていきそうになりました。私のお母さんが言っていた、信じるものは救われる、という言葉を思い出し、私は不器用だから一つのことに集中しなければ得れるものも得られなくなると思い、ただじっとゆっくりとあなたのことばかり考えていました。
 彼は社交的な人で明るい人でしたがそれでも真剣に私を想ってくれました。その想いの幅が伝わるようでその起伏が上のほうにあるときはとても幸せで、今死んでも構わないとさえ思えました。そんな感情の起伏の浮き沈みをこれからも続けていってあるいは下にいるときも、そうしてただあなただけを見ていられるかな。あなたの悪いところや格好悪いところを見つけてそれで私は私を保てるかな。そのいわば賭けの一環として私は今日試すに至っています。
 悪い女ですね。彼だって私に対して思っていることは幾らでもあるでしょうに。でも罵りあったり、相手を悪く思い始めたら危険信号、そうして私はあるいは彼を信じていないのかもしれない。本当には信じきれていないのかもしれない。私の番が回ってきても私は上の空、もともとボーリングは上手いほうじゃないからなおのことボールは大きく軌道を曲げて的を逸れていく。
本当に、ストライクを出さなければいけないのは、あるいは、「私」のほうかもしれない・・。
 半分ほど進んで彼は快調、ストライクを連続で悪くてもスペアで凌いでいる。私のほうはストライクはおろかスペアもままならず、ガーターもちらほら。そんな私を気にして彼が私にアドバイスをしてきて、彼の汗を見て。そんな彼を見て、何だか無性に自分が情けなく感じました、私は、彼ばかりに何かを求めて彼の夢だったり彼の喜劇だったり、彼ばかりに頼って当の自分は何もしてないじゃないかと思い始めました。
後半に行くにつれ私はただ何も考えず必死に投げ始めました。ここでストライクを取ったって本当に何てことはないかもしれないけれど、そんなことを今まで考えていた私が言うことも変ですが、それでもここでストライクを取ればあるいは何か変わるかもしれない、彼ばかりに頼らないで私も彼のために何か送ろう、何か与えよう、何か喜劇を膨らまそう。
 私にアドバイスを送ったせいか、前半スコアが良くて安心したせいか彼はだんだんとストライクから遠ざかっていきました。そんな彼を援護するように私はストライクまでは行かないまでもスペアが取れるようになってきました。そして最後の一投。
「喜多川君、どうしたの?」
私が彼に声を掛けました。
「いや、よく分からない」
汗をかいて随分疲れ切っているようでした。
「でも、氷川さんのために、君のために、最後は絶対ストライク」
突然そう言うと彼は汗を拭い、目を細め真剣な表情で目の前に広がる十のピンを前にしました。悲劇の群像、ボーリングピン。人には悲劇が十あるとしたらその悲劇の数を減らそうと無くそうと、無くして綺麗にして良いものに変えようとあるいは必死に生きているのかもしれません。
ただ人の前に立ちはだかる悲劇はちょっとやそっとじゃ倒れない。そんな中を彼は勇敢に立ち向かおうとしている。私はその様子を見て鳥肌が立つのを感じただもう見ていられませんでした。ガタガタ震えながら手を合わせ、はたと目を閉じました。
一瞬の沈黙。刹那、倒れる悲劇、起こる歓声。
その間ずっと下を向いていて、涙すら出そうな気分で、そうして肩を叩く勇者、一人。
「なんだ、見てなかったの、ほら」
先程まで立っていた揺らめく白い群像は一つ残らず無くなっていました。
「次は氷川さんの番。ほら、頑張って」
彼に背中を押されて、わぁと思わず声が出て、広がるは悲劇の沢山の的。この的を一つ残らず綺麗に無くすことはあるいは無理かもしれないけれど、それでも頑張って努力して、あなたともっと素敵に膨らんだ明るい表情のために、私も頑張る。ならば今目の前に並ぶ的くらい、何て事はない。
彼は途中格好悪いところを見せた。それでも最後は格好良いところを見せた。信じていた彼はやはり彼だった。次は私の番。私が応える番、悲劇に立ち向かう番。
ふーっと深呼吸して精一杯の力でボールを離す。始めは左にいったボールも軌道を修正して徐々に真ん中へ。始め、あなたを試していた。あなたが倒すその白い的の数で恋の今後を決めようとしていた。十個残ったら十個あなたと悲劇を感じなければいけないと思っていた。そんな軌道も徐々に修正されていった。「事件」は「彼」のほうではなく「私」のほうだった。その修正も今ならば自然と心地が良い。

そのピンが倒れていく様をじっくりと見届けると、後ろにあなた。信じていた人。大好きな大好きなあなたが一人。そして共にはにかむ笑顔が、二つ。






自称占い師(女)がお届けしましたw
純愛=韓国ドラマみたいな。サランヘヨ、みたいな(文中の解説です、分かります?)。
あんまし小説に解説加えてもしょうがないでしょうけど。
一応小細工はまあ隠していますけどねw
長々お疲れさまでした~では。






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最終更新日  2008.06.04 20:18:55
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