経堂界隈

経堂界隈

January 17, 2008
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カテゴリ: 経堂町小史
昭和初期の経堂駅構内の写真を拝見した。

経堂駅構内の蒸気機関車.jpg

写真の中に蒸気機関車が見える。戦前の小田急は、利光鶴松が経営した電力資本・鬼怒川水力電気を親会社としており、小田急線は1927年4月1日の開業時から全線電車で運行されていたので、この機関車は建設工事に従事させたものだろう。架線の建設前、或いは、通電前に、建設工事の資材、作業員輸送車両を蒸気機関車で牽引させたものと推測する。

では蒸気機関車は、どうやって入線させたか?
分解して入れることは、無論あり得る。
しかし、鉄道省等他線から入線させるほうが現実的ではなかったか。
さすればどこから?

鉄道省から新宿駅の南側で
登戸/向ケ丘遊園で南武線から
新原町田(原町田)で横浜線から

新松田(松田)で御殿場線(当時は東海道線)から
小田原で東海道線(当時は熱海線)から
(既に以上の各線は、小田急線開通の時点で開通済み。もっとも南武線開通は小田急開通のわずか1月足らず前)
とあり、一番ありそうなのは、新宿駅南側からだが...

小田急小田原線は、着工から1年ほどで新宿ー小田原間全線一斉開業という非常に短期間で建設されている。
おそらく、そこには、単なる鉄道事業(貨物=主として砂利、客の運搬)というだけでなく、東海道線の代替輸送機関として軍事的な要請があったと筆者は推測している。
さもなくば、沿線に代々木錬兵場、駒場から三宿にかけての航空研究所及び陸軍駐屯地(東北沢利用)、経堂の陸軍自動車学校(現東京農業大学)、陸軍登戸研究所(現明治大学生田校舎)、町田の弾薬庫(現こどもの国)相模原の諸軍事施設、相模大野の通信学校、病院、相武台の陸軍士官学校と軒並みの軍関係施設があり、松田から御殿場線に入れば、東富士は本州最大の演習場(現在でも自衛隊が使用)。
海軍厚木航空隊最寄駅は小田急江ノ島線大和駅。
藤沢からは、東海道線に連絡するほか、大船、または、江ノ島/鎌倉経由で海軍横須賀鎮守府。
これだけの軍事施設を結び、しかも東海道線の代替輸送機関でもある。
この路線を極めて短期間に建設するには、軍関係関与の可能性が高い。さすれば鉄道省などから建設物資、人員運搬のために蒸気機関車を入線させることも十分可能。

新宿ー和泉多摩川の建設には新宿駅南側から
多摩川で区切られる登戸ー厚木間は南武線、或いは/及び相模線から
相模川で区切られる本厚木ー新松田は、御殿場線(東海道線)から
開成ー小田原間は、小田原から
これらの全部、もしくは、一部で複数箇所いっぺんに、というのは十分あり得る。


終戦後まで新宿駅甲州街道南側には、省社連絡線といわれる小田急/省線(国鉄、現JR)の連絡線があった。
戦時中、登戸では、向ケ丘遊園ー宿河原間に、宿河原連絡線が建設された。
厚木駅では、1937年に相模線/小田急線連絡線が作られ、
1955年には松田で小田急/御殿場線の直通運転が開始されている。
藤沢から江ノ島線経由というのも考えられるが、江ノ島線の着工が1928年、開業が1929年なので、これは無理。

宿川原連絡線.jpg

戦時中の宿河原連絡線の航空写真をご覧いただきたい。
写真、中央やや左寄りから左下に走るのが、小田急線。写真左下が向ケ丘遊園駅。右下が宿河原駅である。写真中央やや左よりに円弧状に見えるのが宿河原連絡線。左さらに上方にさらに大きな円弧が見えるが、これは道路。写真右端やや下方に、やはり円弧状のものが見える。これは多摩川の採取場と宿河原駅を結ぶ砂利運搬線の跡。今は道路として残る。

いづれにしても、経堂の構内で蒸気機関車が写真に収まるためには、経堂まで蒸気機関車が来なくてはいけない。そして、新宿から、或いは、登戸、厚木、新松田、小田原といった、既に鉄道が敷設されていた接点から入線させることが可能だったことが分かった。

この経堂の蒸気機関車は、大正末年から昭和の初期にかけての写真だろうが、小田急線の完成後も蒸気機関車が小田急本線を走ったことがある。
それは戦時中のことだった。
その頃軍部は、海岸沿いを走る東海道線が、砲爆撃により寸断された場合の代替輸送機関として小田急線を利用することを考えたらしい。実際に貨車、客車を牽引して走ったかどうかは、分からぬ。小田急線のホーム、或いは、車両が通る狭隘な部分は、機関車を含む鉄道省(当時)の車両の走行を可能とする幅員にまで拡幅され、それが、戦後の復興期、不足する車両をやりくりする中で、小田急は国鉄と同一規格だったため、そのまま入線させることが出来たと聞く。
このことは、後に小田急線が幅広の車両を投入できたことにもつながるらしい。

なお、小田急の初代ロマンスカーも、国鉄の線路を使って試験を行った(当時狭軌鉄道の世界最高速度を記録)あと、新宿の連絡線を使って小田急に入線したと読んだことがある。

1945年5月の空襲で、小田急線も世田谷中原駅(現 世田谷代田)全焼など、甚大な被害を受けたが、当時小田急と同系列だった帝都線(現 井の頭線、当時は小田急も帝都も両者東急に合併していた)は、永福町の車庫が空襲され、神泉のトンネル内に避難していた2編成を除く他の車両が使用不能となった。
この時、小田急線の世田谷中原駅と帝都線の代田駅を結ぶ連絡線を突貫工事で完成させ、小田急線経由で帝都線に車両を投入した。
この連絡線には架線が敷設されなかったため、電車車両の移動に蒸気機関車の利用が検討され、実際に試走したことがあるようだ。しかし、機関車は重すぎたのか、手押し車で移動したと記録にはあるようだ。

代田連絡線.jpg

写真は左上が井の頭線新代田、左下が世田谷代田(共に現在の駅名)円弧状に見えるのが連絡線。

***

完成間もない経堂駅の写真というのも見つけた。
新宿駅側には構内踏み切りがあったはずだから、この写真が経堂駅ならば、経堂西通側から反対側の福昌寺方面に向って撮影されたものと思う。


開業当時の経堂駅.jpg





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Last updated  January 17, 2008 06:54:26 PM
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Re:経堂に蒸気機関車が居た頃(01/17)  
すぎたま さん


経堂に蒸気機関車ということですが、一応2輌が鉄道省から払い下げを受け(画像の621号と703号とされる。他にも借り受けがあった模様)、建設工事に従事した後昭和10年に廃車と記録されています(鉄道雑誌の記述です)。タンク機関車ばかりなので、後進も容易ではありますが、ターンテーブルがあったほうがいいでしょう、というわけで、経堂工場の51番線奥にありました。これは昭和43年頃まであって、井の頭線に入線する1700形車輌や、小田急の各車の方転に使用されたようです。
SLをどこから入れたかですが、南武連絡線は昭和11年完成で、しかも当時は南武鉄道という私鉄でしたから、鉄道省のSLを回送するにはやや困難かと思います。新宿の連絡線も昭和19年建設で、C58形と遊休寝台車など、EF10形などの入線試験も実際に行われました(この時支障するホームなどが改築されています)。しかし、軸重が重いという理由で、線路を横断する側溝等を破壊しかねないので、省線の電車を小田急に入線させて運転するというのは、戦中から戦後にかけて行われました。
厚木・小田原など考えられる接点はあるにはありますが、どれも建設中に線路がつながっていたと思える場所ではありません。よって、このSLたちは、推定になってしまいますが、新宿に「仮線」を作って、そこから自走で入れたのではないかと考えます。
井の頭連絡線は、最初から電化されていました。蒸気機関車の入線はありませんでしたが、鉄道省では一番小型のEB10形電気機関車が入線して使用された記録は、鉄道ピクトリアルなどにあります。
小田急が軍事路線であったかどうかについては、当時の免許条件からして、狭軌での建設も含めてそのような意味合いもあったでしょうし、一方後から軍施設が移転してきたところもあったので、今となってはなんとも言えませんね。
失礼いたします。 (February 14, 2016 08:11:31 PM)

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