経堂界隈

経堂界隈

May 27, 2015
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カテゴリ: 歳時記
「大阪都構想は住民投票で否決されたが、僕は衝撃を受けたんだ」

「賛否は殆ど拮抗してましたからね」

「個人的には僕は神奈川県民で大阪市民じゃないから、大阪都構想には特段の関心はない。確かに開票結果だけを見れば賛否拮抗なんだが、出口調査の分析で、反対が賛成を上回ったのは、70歳以上だけなんだ。それ以外の年代ではすべて、賛成が反対を上回っている。30代では、なんと賛成が7割、反対が3割だったわけで、あと、何年か先に同じ内容で住民投票が行われるならば、大阪都構想は可決される可能性が高い」

「それは、高齢者パスの廃止など、大阪都構想により大阪市が廃止となった場合に、今、大阪市の高齢者が享受しているさまざまな住民サービスが廃止なり、縮小されるという、制度上の設計ミスが、高齢者を多く反対にまわしたんですよね。そこを、もう少し、緩和しておけば、もっと多くの高齢者が賛成したんじゃないんですか?」

「君は今、制度上の設計ミスと言ったが、 国から都道府県、市町村に至る、殆どの自治体の財政状況を考えるならば、それは、設計ミスでなく、大阪都構想の、というか、大阪都構想に限らず、今の高齢者が享受している住民サービスのかなりの部分は、大阪に限らず、いやおうなく、全国的に廃止、縮小されていかざるを得ない。その意味で、今回の住民投票は、大阪都構想については否決という結果が示された一方、通常の選挙では表に出てこない世代間の温度差がここまで明白に表現されたことに、僕は衝撃を受けたんだ」

「そこまで衝撃的でした?」

「君らはまだ若いから、若い世代の高齢者に対する反感をVividに感じないで済むが、僕みたいに70を超えた人間にとっては、衝撃だね」

「先輩方は年金も僕らより多いし、70まで働かれてたくわえも十分。衝撃といわれても、ピンと来ませんよ」

「なんやかや言ってこの20年、世界の景気を事実上牽引してきた中国経済が、いよいよやばい。日本の新聞は、株価が2万円の大台を超え、新卒の就職率もリーマンショック以前のレベルに回復して、昨年春の消費増税で腰折れした景気が回復基調とか言ってるけど、アベノミクスがいいか悪いかなどという瑣末な問題じゃあなく、下手すれば、90年近く前以来の大恐慌が、そこに迫っているかもしれない。現実となれば、若い世代は容赦なく、我々高齢者から既得権を剥奪するだろう。

こないだ、10年勤めた大学を辞めて、いよいよ年金暮らし。もう稼ぐ手段がない中で、これからは剥ぎ取られる一方。君らみたいに、まだ稼げる連中は、しがみついてでも働き続けねばダメだ。65でも70でも、働けるならば、懸命に働き口を確保しなさい。雇ってくれるところがないときのために、それでもどうやって食ってくか、ちゃんと考えとかなきゃいかん。
日本の人口は減り始めた。少子化対策とか言っても、あと何年か、人口減少は避けられない。深刻なのは、生産年齢人口の減少。かつて総人口に占める生産人口の割合は70%を超えていた。それが60%をきるところまできている。デフレで苦しんだ日本だが、近未来的に、これがインフレに転ずるのは確定している」

「まさか。もちろん政府はインフレへの転換を目指してますけど成功してるとは言いがたい」

「インフレとデフレは、総需要すなわち名目GDPと、本来の供給能力すなわち潜在GDPのギャップにより生ずる。
政府の努力.....努力というべきかどうか、政府の政策にもかかわらず、インフレ基調が定着しない理由は、原油安にある。
円安が進んでいる。金融緩和、日銀による国債の際限なき引き受けは、生産性向上なき、根拠なき株高をもたらしたが、一方で、円安を招いている。食料と資源を自給できない日本経済にとり、長期的に円安は、日本人の生産価値を貶め、物価上昇へとつながっていく。これも、当然インフレ要因だ」

「先輩のおっしゃる意味が分からないんですが。人口が減るから需要も減る。だからデフレ基調は変わらない。それが常識じゃないですか」

「この場合、人口には二種類あって、それは総人口と生産年齢人口だ。現在、生産年齢人口の減少が総人口の減少を上回る中で、需給ギャップは次第に、今のデフレギャップからインフレギャップへと急速に変化しつつある。この変化の中で、デフレギャップが維持されるには、生産性を向上させる以外にない。あと、労働力として移民を受け入れるというのもあるか。移民はともかく、現代において、劇的に生産性向上が期待できる分野は次第にせばまりつつあり、特に、労働における需給ギャップは既にインフレに転じていることを、多くの人は認識していない」

「大卒の就職率は若干の改善を見ていますが、それでも賃金はなかなか上昇しないじゃないですか」

「マクロではそう見える。だけど、君らは、インフレというのは、世の中全体が一斉にインフレになると思っているようだが、そうは限らない。現に、労働の需給ギャップは既に高齢者を直撃しつつある」

「どういうことですか?」



「年収の多い人はこの8月から1割から2割へ引き上げですよね」

「夫と専業主婦の夫婦の場合、年金収入が359万円以上の世帯は2割負担になる。介護業界の人手不足は深刻さを増している。インドネシア人とかを入れようとしているが、うまくいかない。文化の違いを無視して、移民入れれば、労働の需給ギャップが解消するなどと考えは無駄なトラブルを生み出すだけだ。ヨーロッパを見てみろ。明快じゃないか。労働集約型しかも3Kのこの業界では、インフレが生じていて、今後も加速していくことは間違いない」


「インフレにも業種別、年代別跛行性があるんですか」

「当たり前だ。インフレが国民を平等に襲うなどというのは、誰もインフレを体験したことのない我々世代の幻想に過ぎない。破綻というのは、弱いところ、ひずみの生じているところに負担が集中して、そこから全体に破壊が波及し、やがて、次の平衡に到達していく現象である。日本の場合、ひずみは、生産することをしない世代が急増している、ぞこにまず集中しているんだ。
生産することをせず、既得権益を享受し、さらなる優遇までを求めようとする高齢者に、若い世代が、冷淡であることは、極めて当然なのさ。

生産者としての人生を終えたのは、僕にとって判断ミスだった。僕より若い君らは、間に合う限り、生産者として生き延びることを考えたまえ。シルバーデモクラシーへの反感は、一人一人はそれほどのものでなくとも、それが集まることによって巨大な力を生ずる。我々は若い世代を搾取し、これからも搾取しようとシステムをつくってきた。システムの牙城が既存自治体、議会であり、大阪都構想とは、都構想に名を借りた既存秩序への挑戦、ないし、既存秩序の破壊を目指すものと思えば、若い世代は、それに正しく反応したといえる」

「橋下さんは、住民投票が否決されたことに伴ない、政界引退を表明しました。彼は将来的に政治に復帰すると思いますか?」

「僕には分からない。
橋下君は、自らが政治家、首長ならずとも、既存秩序の変更、破壊を目指す都構想は実現できると思っているんじゃないか」

「首長、政治家たらずして、既存秩序の変更ないし、破壊が可能なのでしょうか。革命ですか?」

「革命たらずしても、いろんな可能性はあるのでは?現に、都構想は、住民投票で、実現寸前まで行った。ほかにも誰も発想したことのない方法があるのかもしれないよ。時間っていうのもひとつ大事な要素だ。実現は、今でなく、10年先でもいいとすればどうだろう?彼は次の世代の人だからね。
彼は、政治家たること、 都構想の住民投票に勝つことを、かならずしも、自己実現の手段、目的においていない。確かに住民投票で都構想は否決されたが、逆に、彼は、近未来的に、都構想の意味するところは次世代に受け入れられたと判断しているだろう。
高齢者世代の抹殺へとつながっていく都構想を、紙一重のところで、寸止めした。
ここまでしておけば、意図するところは、もはや自分が関与することなく実現される。
政治家として非常に有能、優秀ではあるが、彼は、もともとは政治家志望ではない。維新とはすなわち橋下、橋下あっての維新、橋下=都構想だと僕らは思っているが、彼は、期間限定でおみこしを演じただけなのかも。
寸止めまでで自分の役割は十分果たした。あとは熟柿が落ちるのを待てばいい。最後の鉄槌を下し、多くの高齢者からうらみを買って10年20年過ごすのは迷惑面倒 かな?
彼の引退を聞いて、僕は、僕より一世代前の人だが、庄司薫を思い出した。ああいう人たちのことは、僕らには分からないのさ」





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Last updated  May 28, 2015 10:34:49 AM
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