
彼の愛国心は、当時の一等の見識だった。
神奈川奉行との「問答」より
・偏に古法を守ろうとするは所謂琴柱に膠するの類と申べし。
・2,30年の内に船備り、金銀国中に満ち、欧州のイギリス、アジアの日本といはれむこと疑ひなし。
・日本は不毛の原野多く、外国に比べれば、物価下直なる故なり、生糸茶の類を作らば忽ち開けて
国益の根源をなさぬ。
・道理を正さず、勅命を奉じて日本を乱し遂に御門も絶え、わが家をも失はば智なきの至り也。
・・・
武は、暴人を攻め打つの道なり。用ゆべき時に用ひざれば、暴人上を侮り、是が為に天下も大乱 とならん。勅命より重きは道理なり。道理を天下に示して征罰するに誰か従わざるものあらぬ。
・鎖国を守には、各国戦争に及ばざれば、再び鎖港する事能はず。然れども戦に勝算なし。一度大 敗を取れば支那の如くならぬこと、鏡にかけてみるごとし。
・日本の人心一致せざるはの泉源甚だ深くして、如何良将出るとも容易には一致なり難し。其故は
神儒仏三を元とし、三道各流派を建て、芸術もまた流派を建て。己を是とし、彼を非として 互 いに相戻りて、国人親むことなし。ヨーロッパは、万里を隔てるつる外国の人にも隔心なく、究 理学を以って至善を極め皆其の善に移る故に何事にも流派を建てず。物事に秘伝秘密なし。依っ て人心おのづから公平一致にて、政法、兵器、衣類、調度に至るまで各国一致せり。
・国体草案・・・憲法私案。わが国最初の憲法草案だ。アメリカ合衆国憲法を下敷きにした労作だ。
何れも、目下、形勢下採用し難いとされた。
・日本国益諸案
・存寄書
・改革箇条書
ジョセフ・ヒコは、まれにみる当時一級の日本人であったことに間違いないだろう。