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エーテルとグラタン(9)
エーテルとグラタン(9)
<三日目_夜_長岡(4)>
楓の部屋に入ると俺達は今まで以上の驚きを体験した。先を進んでいた楓が『きゃああ』という声を上げ、それを聞いて覗き込んだ俺は『うわあ』という声を上げた。言うなればそれほどの驚きだった。
「お二人とも、こんばんは」
涼しい顔をして楓のベッドに腰掛けるこの少年は、まごう事なき幽霊の少年だった。
「えっ、何で?」
言いながら俺は周囲を確かめる。俺の場合、こいつが出てくるときは何だかわけの分からないところにいる事が多いからだ。だが、周囲は先程と変わらず、楓の部屋のまま。俺は今、特に夢を見ているというわけでもなさそうだ。
「ねえ、どういう事なの、これ?」
楓は俺と少年に説明を求めたが、もちろん俺は答えられない。こっちが聞きたいくらいだ。どういう事だ、これは?
「いやあ、お二人にこんなに驚いていただいて幽霊冥利に尽きます」
ずっと驚いていてもきりがないので俺と楓は落ち着く事にした。驚いたときのままだから電気もついておらず、暗闇で三人、顔をつき合わしているという事になる。だが事態はそんな事に構っていられないほど切迫している。兎にも角にも俺達は少年の話を聞かないといけないだろう。
「やあ、夢の外で君に会うのは初めてだね」
俺は少年の手前、年長者として、負けまいと平静を装ってみた。しかし言葉の端々から混乱が見て取れる。もっと言えば、実際のところ俺と少年のどっちが年長者かだって分からない。だから、俺のやっている事にはまったく意味がない。
「こうして三人で会うのは初めてですね。改めまして、今までお二人に助言をしてきた幽霊です」
「「はあ、どうも」」
すっかり少年のペースだった。まあ『幽霊です』なんて真顔で話せるやつが相手なんだからそれは仕方のない事である。
「ナガオカさん、強盗との死闘は素晴らしいものでした。お陰ですべてうまくいきましたよ」
「ああ、そうだった。君の印象が強すぎて忘れていたけど、これで俺は助かるのか?」
あの強盗を倒したことで俺は勝手に死を免れたと思っていたが、実際のところは少年のみぞ知るというところである。
「ええと、ナガオカさん。言いにくいんですが」
言いよどむ少年。それもそのはずだ。俺は彼の次の言葉を理解するのに数分を要したくらいだ。
「ナガオカさんは、もともと死にませんでした」
いつ開け放たれたのか、窓から差し込む光はカーテンを揺らし、少年の顔を照らし、楓の顔を照らした。俺はそんな二人の顔を見ると幻想的に見えなくもないな、と思った。
「じゃあ、あなた何なの?」先に少年に質問したのは楓だった。
「僕はカエデに言いました。『本人に死を告げることが禁止されています』と。その僕がナガオカさんに死にます、なんて言えません。本当に今日死んでしまうのは、カエデだったんです」
俺と楓は言葉を失った。
「でも安心してください。カエデが死ぬ事も、もうありません」少年はここで少し間を置いて俺達を眺めた。どう話すべきか考えているようでもあった。「数日前に、僕はカエデが死んでしまう事を知りました。それで、何とかそれを避ける事が出来ないかと考えました。先程も言ったとおり、僕は死んでしまうカエデに直接忠告する事が出来ません。ならば、一体どうすればいいのか? 僕はいろいろ考えた挙句に、ナガオカさんを利用する事を思い付きました」
俺は利用されたのかと少し憤ったが、人の命を助けたと思えばそんなに悪い気はしなかったので、そのまま少年の話を聞く事にした。
「カエデは今日のあの強盗に殺される予定でした。そのために僕はカエデを使ってナガオカさんを呼び、強盗と対決させる事を思い付きました。ただ、そのまま行かせると二人とも死んでしまうので事前にヒントを用意しておきました。これでナガオカさんは強盗を撃退する事ができます。結果的にナガオカさんは強盗を撃退し、すべて僕の計画通りに進みました」
ヒントとは『エーテル』の事か。確かにそういう事ならすべての辻褄が合う。俺達は感心した。
「幽霊って凄いな」
「ええ、人間よりは凄いです」
「きっと、この世界で上から順に凄いものを挙げていけば、一番目が幽霊で二番目が神様だ」
少年は俺の評価に満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。ちなみに、三番目は何です?」
「間違いなくグラタンだな」
少年は俺の冗談を満足そうに聞いた後、何故か少し暗い笑顔を浮かべながら話し始めた。
「でも、これもお二人が僕の言うとおりにしてくれなくては成功しなかったんです。僕はまた考えました。カエデの死を防ぐために、楓の死とは別の、二人が僕に従う理由はないだろうかと。だから僕は、ナガオカさんが死ぬという嘘を吐きました。その、嘘を吐いてしまった事は謝ります。ごめんなさい」
言って少年は頭を下げた。俺達としては楓が生き残っているのは少年のお陰なのだから怒る理由もない。
「私の命は助かったよ。助けてもらってありがとう」楓は少年に礼を言った。
「いえ、カエデにお礼を言ってもらうのは筋違いです」少年は笑顔でそう言った。もうその笑顔に翳りはなかった。「僕はどちらかといえばカエデに死んでもらった方がうれしかったんです。人間のカエデと友達になるよりは幽霊のカエデと友達になった方がいいでしょう?」
俺は、こういう事を笑顔で言われると怖いなあ、と思った。当然、楓も何ともいえない表情になった。可哀相なやつである。
「じゃ、じゃあ何で楓を助けたんだ?」
俺は場の雰囲気を変えようと、すぐに少年に話を振った。すると思いもよらない答えが返ってきた。
「スリープスです」
「え?」
「僕はスリープスのファンです」
「う、うん」それが一体何の関係があるのだ、と俺と楓は少年を見た。
「スリープスは随分長く活動しているバンドですが、まったく売れてません」
「ああ、ファンの注目が次のシングルより、いつ解散するかの方に行くぐらいだったよな」
そこまで言わなくてもいいではないか、と俺は二人に睨まれた。なんだかんだ言っても二人はやはりスリープスのファンのようである。
「とにかく、今またファンが減ってしまってはスリープスの進退に影響が出るんです。僕はスリープスに解散して欲しくありません。だからカエデには生きていてもらわなくてはいけないんです」
少年は力強くそう主張した。これが一人の命を救うための動機なのかと考えると頭が痛くなりそうだが、死ぬところを助けてもらったのだから文句は言えない。俺も楓も呆れはしたが、感謝もしていた。
「僕からは以上です。お二人とも何か僕に聞いておきたい事とかありますか?」
「あ、あのさ」楓は少し興奮気味に言った。「握手してもいい?」
「ええ、どうぞ」
そう言うと二人は握手を交わした。このとき楓が何を考えていたのかは俺には分からない。幽霊を触ってみたかっただけかもしれないし、少年に対する感謝の意味が込められていたかもしれない。どちらにしてもこの握手は少年と俺達の別れの儀式だったという事は間違いない。
「それじゃあ、お二人とも、僕は消えます。お元気で」
「ああ、じゃあな」
「じゃあね」
少年はやはり最後まで笑顔でいなくなった。
「俺も帰るよ。もういい加減眠くなってきた」
「そうね。明日、遅刻しないように気を付けなさい」
「言われなくても分かってるよ。じゃあ、また明日」
俺は楓の家を出て家へ向かった。空には大きい満月が偉そうに居座っている。その月明かりのお陰で俺は辛うじて家までの道を辿る事ができる。道の所々に立っている街灯も役には立つが、俺の家まで付いて来てくれる月の方がありがたい。
ふと、その月明かりが弱くなった。何かと思って見上げれば雲が月を覆っていたらしい。すぐに月が顔を出した。こうして俺は家に着くまで再三、月を見ていた。そうする理由は俺にもよく分からない。だが、このときの俺は偉そうな満月を見る度に少年を思い出していた。
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