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cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2012.04.10
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 かつて、売文社という会社がありました。

 冬の時代に生活の糧を得るためのパンとペンの会社でした。

 この組織をつくった人物は、日本にいち早くマルクスの思想を紹介した日本社会主義運動の父と呼ばれる堺利彦です。

 ”パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い”(2010年10月 講談社刊 黒岩 比佐子著)を読みました。

 今から100年以上前の1910年に創業された売文社を中心に、そのリーダーである堺利彦の人生を紹介しています。

 黒岩比佐子さんは、1958年に東京で生まれ、慶應義塾大学部文学部卒業のノンフィクション作家です。

 国会図書館にも所蔵されていない書籍を古書の山から見つけ出し、新しい事実を貴重な資料から発掘してきました。

 これまでに、第26回サントリー学芸賞、第6回角川財団学芸賞を受賞しています。

 堺利彦は、1871年に没落士族の3男として豊前国仲津郡長井手永大坂村松坂に生まれ、豊津中学校を首席で卒業、上京後、進学予備校であった共立学校で受験英語を学び、第一高等中学校入学しましたが、学費滞納により一高から除籍処分を受け、大阪や福岡で新聞記者や教員として勤めながら、文学の世界で身を立てようとして小説の執筆を始めました。



 萬朝報は当初非戦論でしたが、日露戦争に際し主戦論に路線転換したため、内村鑑三、幸徳秋水とともに退社し、1903年に幸徳秋水と共に平民社を創設し、週刊”平民新聞”を発行して、戦時下で反戦運動を続けました。

 1906年に日本社会党を結成して評議員となり、日本の社会主義運動の指導者として活躍をはじめ、1908年の赤旗事件により2年の重禁固刑を受けて入獄しました。

 そのとき大逆事件が起きましたが、獄中にいたため連座を免れて出獄しました。

 1910年に代筆・文章代理を業とする売文社を設立して、雑誌”へちまの花”、”新社会”の編集、発行をはじめ、いろいろな事業を行って生活の糧とし、1919年に解散されるまで全国の社会主義者との連絡を維持しました。

 売文社はその名の示す通り”文を売る会社”で、依頼があれば財界人の自伝から学生の卒論、子供の命名まで何にでも腕をふるいました。

 日本初の編集プロダクションで翻訳会社でもあり、今日的な新しさを感じます。

 1920年に日本社会主義同盟が結成されましたが、翌年に禁止されました。

 1922年に日本共産党の結成に山川均、荒畑寒村らとともに参加しましたが、山川らに同調して共産党を離脱し、後に労農派に与しました。

 その後、東京無産党を結成して活動を続け、1929年に東京市会議員に当選しました。

 1932年に発狂し、翌年に脳溢血で亡くなりました。

 社会主義者で投獄された第一号で、女性解放運動に取り組んだフェミニスト、海外文学の紹介者、翻訳の名手、言文一致体の推進者、平易明快巧妙な文章の達人、そして、軍人に暗殺されかけ、関東大震災では憲兵隊に命を狙われたなど、実に複雑で多面的な顔をもつ人物でした。



 堺利彦については、これまで平民社のことは多くの歴史書が取り上げられてきましたが、売文社のことはほとんど無視されてきました。

 この本では、弾圧の時代に社会主義者たちがユーモアと筆の力で生き抜いた素顔が紹介されていて、とても興味深かったです。

序 章 1910年、絶望のなかに活路を求めて
第1章 文士・堺枯川
第2章 日露戦争と非戦論

第4章 冬の時代前夜
第5章 大逆事件
第6章 売文社創業
第7章 へちまの花
第8章 多彩な出版活動
第9章 高畠素之との対立から解散へ
終 章 1923年、そして1933年の死






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Last updated  2012.04.10 21:10:08
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