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cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2018.10.06
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 一般的に県境は、川の上だとか、山の稜線に沿って引かれていることが多いです。


 ”ふしぎな県境-歩ける、またげる、愉しめる”(2018年5月 中央公論新社刊 西村 まさゆき著)を読みました。


 日本各地の複雑怪奇な県境について、なぜ生まれたのか、実際に何があるのか、地元の人は不便ではないのかなど、県境マニアの著者が全国13ヵ所の県境を検証しています。


 川の上や山の稜線に境目か実際にあるわけではなく、よくて県境かあることを示す標識やカントリーサインと呼ばれる看板か申し訳程度に立っているくらいです。


 そのため、県境を見に行くという趣味は、境目は見えないけれどここか境目だと思うとテンションがあがるといいます。


 形而上的な興奮や感動であるため、写真などのビジュアルでは伝えにくいというジレンマを抱えているそうです。


 西村まさゆきさんは1975年鳥取県倉吉市生まれ、1996年に上京し編集プロダクションに14年勤務しました。


 その後、フリーライターになり、主にインターネットサイトで、地図、地名、県境などに関する記事を執筆しています。


 県と県を分け隔てる線、県境ですが、現地におもむくと、たいてい線すらも引かれていないところか多いです。


 こんな県境にいったいどんな魅力があるのか、不思議に思う方も多いかもしれません。


 たとえば、県境マニアというマニアが三県境と呼んでいるポイントがあります。


 その名のとおり3つの県か境目を接する場所のことで、日本全国に48ヵ所あるといわれています。


 そのほとんどが水上や山の上にあるため、実際に行くことはもちろん、近づいて見るといったことも難しいです。


 しかし、そんな三県境のなかでも、渡良瀬遊水地そばにある群馬、埼玉、栃木の三県境は、日本で唯一、鉄道駅から歩いて数分で行くことかできます。


 そのため、歩いて気軽に行ける三県境として県境マニアの聖地になっています。


 そこはもともと川の上でした。


 しかし、あの有名な足尾銅山鉱毒事件で発生した鉱毒対策で設けられた渡良瀬遊水地が造成される際、もともと県境か引かれていた河川の流路が変わったため、田んぼの中に突然三県境が出現しました。


 つまり、県境が昔の河川の痕跡として存在しているのです。


 群馬、埼玉、栃木の端っこが接する場所は、なんの変哲もないただの田んぼのあぜ道でしかありませんが、あぜ道をまたいで歩けば、たったの二歩で埼玉、栃木、群馬をわたり歩くことかできます。


 ところが、県境マニアはそこで満足し珍しい場所にきたなでは終わりません。


 なぜこんなヘンテコな境目が引かれることになったのかに思いをめぐらります。


 県境は一見、空間と空間を分け隔てているだけのように見えますが、なぜそこに県境か引かれるよになったのかを考えると、たちまち時間を背負った存在にもなり深い意味が出てきます。


 県境マニアは、県の境界線の、この線からそれぞれの県の広大な県土が始まっていること、そしてその境界線の歴史、そこに関わる人々の営みに思いをはせます。


 ただの一筋の境界線を、地理や歴史をも含めた、立体的な魅力を持った境目として見ています。


 境界の魅力は、県境のみに限りません。


 町丁目の境界や市区町村境、果ては州境や国境に至るまで、境界となるものに関しては必ずそうなった理由が存在します。


 境界マニアは、そういった目に見えない物語を肌で感じるために、さまざまな境界線をめぐるのです。

 境目好きの人間であれば、何もなくてもこの道が群馬県と栃木県の境目かなどと、盛り上がることができます。


 しかし、あまりそういうものに興味のない人を県境に連れて行っても、何がすごいのか今ひとつピンとこないことか多いです。


 そこで、見ただけでひと目で境目かわかるような場所、そんな場所かあれば、県境初心者の人でも十分楽しめるのではないでしょうか。


 そんな思いで目を皿のようにしてグーグルストリートビューを探していたところ、県境初心者でも楽しめそうな場所が東京都練馬区と埼玉県新座市の間にありました。


 大泉学園駅からバスに乗り、目的の県境が近いバス停まで移動しました。


 しばらくすると、県境近くのバス停の天沼マーケット前に到着しました。


 バス停を降りると、県境はすぐそこにありました。


 そこには、かつてこれほどまでに県境か明確にわかる場所はあっただろうかというほど、明らかに歩道のつくりが違っていました。


 車道のアスファルト舗装も、ちょうど東京都練馬区と埼玉県新座市の県境で切れ目か入っています。


 県境の明瞭さが予想以上で、練馬区のアスファルトは粒が粗くて擦ると痛そうと、皮膚感覚で県境を堪能できます。


 県境がこれだけ目に見えてわかると、たしかに面白いです。


 グーグルストリートビューで見られますが、やはり、本物を実際に見るというのは違います。


 最近は境界探訪の趣味がこうじて、国境をめぐりはじめました。


 まだそんなにめぐったわけではないですが、ドイツ、オランダ、ベルギーの国境、韓国と北朝鮮の軍事境界線、中国と香港の境界など、行けそうなところからめぐっています。


 ただ、国境は、県境のように、軽い気持ちで境界にまたかって写真をとったりしてふざけることかできないところか多いです。


 韓国と北朝鮮の国境である板門店に行ったときなどは、ピースなどはもってのほかで、引きつった笑顔で憲兵の横に近づき、記念写真を撮るのが精一杯でした。


 一方、ペルギーとの国境に近いオランダにバールレ=ナッサウという町があります。


 町の中に無数のベルギーの飛び地が存在し、さらに、そのベルギーの飛び地の中にオランダの飛び地が入れ子になっているといいます。


 複雑な国境を抱えた町です。


 オランダもベルギーもシェングン協定という、国境審査なしで国境を行き来できる協定に加盟しています。


 この町の国境は、日本の県境ほどの気持ちで越境できるようになっています。


 もちろん、境目をまたいでの記念撮影も可能です。


 国境や境界の話になると、境界かあることの良し悪しを語ろうとする向きがあります。


 しかし、境界がいさかいのもとになっているからと、区切るための目印でしかない境目を取り去ったとしても、それは問題の根本的な解決になるわけではありません。


 境界線は、そこに境界を引く必要性かあって初めて引かれるものです。


 そういった人の営みを、何十年、何百年と積み重ねてきてその形になっているのです。


 いわば、境界線はその土地の歴史が刻み込まれた記念碑でもあります。


 県境などの境界が、なぜそこに引かれているのかをニュートラルな目線で見つめ直すと、今まで気付かなかったことにいろいろと気付けるのではないでしょうか。


1練馬に県境がひと目でわかる場所があるので見に行った/2店舗内に県境ラインが引かれているショッピングモール/3東京都を東西に一秒で横断できる場所/4「峠の国盗り綱引き合戦」で浜松と飯田が仲良すぎて萌え死にそう/5蓮如の聖地に県境を見に行く/6標高二〇〇〇メートルの盲腸県境と危険すぎる県境/7福岡県の中に熊本県が三ヵ所もある場所/8日本唯一の飛び地の村で水上の県境をまたぐ/9県境から離れたところにある「県境」というバス停/10埼玉、栃木、群馬の三県境が観光地化している?/11湖上に引かれた県境を見に行く/12カーナビに県境案内をなんどもさせたかった/13町田市、相模原市の飛び地の解消について担当者に話を聞く






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Last updated  2018.10.06 05:50:59
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