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cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2020.03.07
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 トウガラシは唐辛子、唐芥子、蕃椒とも言い、中南米を原産とするナス科トウガラシ属の果実あるいは、それから作られる辛味のある香辛料です。

 ”トウガラシの世界史 - 辛くて熱い「食卓革命」”(2016年2月 中央公論新社刊 山本 紀夫著)を読みました。

 原産地の中南米からヨーロッパに伝わり、わずか500年のうちに全世界の人を魅了するに至った比類ない辛さが魅力のトウガラシの、伝播の歴史と食文化を紹介しています。

 唐辛子の漢字は、唐から伝わった辛子の意味で、歴史的に、この唐は漠然と外国を指す語とされ、同様に南蛮辛子や、略した南蛮という呼び方もあります。

 唐辛子の総称として鷹の爪を使う者もいますが、正確には鷹の爪はトウガラシ種の1品種です。

 トウガラシ属は中南米が原産地で、メキシコでの歴史は紀元前6000年に遡るほど古いそうです。

 トウガラシ属には数十種が属しますが、そのうち栽培種は、

 annuum(トウガラシ)、baccatum(アヒ・アマリージョなど)、chinense(ハバネロ、ブート・ジョロキアなど)、frutescens(キダチトウガラシ)、pubescens(ロコト)

 の5種です。

 トウガラシ属の代表的な種であるトウガラシには様々な品種があり、ピーマン、シシトウガラシ、パプリカなど、辛味がないかほとんどない甘味種も含まれます。

 山本紀夫さんは1943年大阪市生まれ、京都大学農学部農林生物学科を卒業し、同大学院博士課程を修了しました。

 農学博士(京都大学)、学術博士(東京大学)、専攻は民族学、民族植物学で、国立民族学博物館教授を経て、同館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授を務めました。

 トウガラシは15世紀後半に、ヨーロッパでは純輸入品の胡椒に代わる自給可能な香辛料として南欧を中心に広まりました。

 16世紀にはインドにも伝来し、様々な料理に香辛料として用いられるようになりました。

 バルカン半島周辺やハンガリーにはオスマン帝国を経由して16世紀に伝播しました。

 日本への伝来として、1542年にポルトガル人宣教師が豊後国の戦国大名に献上したとの記録がありますが、諸説があるようです。

 いまや日本の漬け物の生産量第一位を占めるのはキムチですが、これにはトウガラシが不可欠です。

 そのせいか、トウガラシの原産地は朝鮮半島だと考えている人が少なくありません。

 また、インド原産だと考える人もいます。

 これも辛くて刺激的なトウガラシを使ったカレーライスのせいかもしれません。

 しかし、トウガラシは朝鮮半島原産でもなければ、インド原産でもありません。

 トウガラシの故郷は中南米であり、15世紀の末にコロンブスによってカリブ海の西インド諸島から初めてヨーロッパに持ち帰られました。

 コロンブスは、唐辛子を胡椒と勘違いしたままでしたので、これが後々まで、世界中で唐辛子 (red pepper) と胡椒 (pepper) の名称を混乱させる要因となりました。

 そして、トウガラシはコロンブスの新大陸発見まで、旧大陸ではまったく知られていなかった作物ですが、ヨーロッパからアフリカやアジアなど世界各地にもたらされました。

 著者がトウガラシに初めて興味をもったのは、40年以上も前の1968年のことだったといいます。

 当時、京都大学農学部の学生で、京都大学探検部が派遣したアンデス栽培植物調査隊の一員として、ペルーやボリビアなどのアンデス地帯を踏査していました。

 アンデスは、ジャガイモをはじめとして、タバコやトウガラシなど多数の栽培植物の原産地ですので、これらの栽培植物の起源を探ろうとしていました。

 ある日のこと、ボリビアの事実上の首都であるラパスの市で珍しいものを売っているのを見つけたそうです。

 小指の先ほどの小さな緑色の果実で、見たところサンショウのように見えますが、果実を売っていた女性は「ウルピカ」だと言いました。

 その果実を一個だけ味見させてもらったところ、たしかに飛び上がるほど強烈な辛さでした。

 その味はトウガラシ以外の何者でもなく、ウルピカはトウガラシの野生種だと分かりました。

 それからトウガラシと人間の関係に大きな関心が生まれ、それを知るために中南米の各地を歩きまわりました。

 そして、中南米各地域で採集した900系統あまりのトウガラシの栽培、観察、交配実験などを繰り返し、1978年には「トウガラシの起源と栽培化」のテーマで学位論文を提出し、博士号を得たそうです。

 これまで世界各地におけるトウガラシの利用や歴史を追いかけてきましたが、なぜ、人間はあんなに辛いトウガラシを好むのでしょうか。

 食べているときは、汗をかくほどつらいのに、食べおわるとまた辛いものを食べたくなってしまい、トウガラシの辛みには一度食べると病みつきになってしまう魅力があります。

 人間の舌には辛みを感じる感覚はありませんが、トウガラシの辛み成分のカプサイシンが舌を強く剌激し、舌の痛覚かそれを感じます。

 トウガラシを食べると人間の体は、痛みの元となる物質を早く消化し無毒化しようとして、胃腸を活発化させ食欲が増進します。

 トウガラシは胃腸を活性化するだけでなく、カプサイシンによって体に異常をきたしたと感じた脳は、脳内モルヒネと呼ばれるエンドルフィンまで分泌します。

 エンドルフィンには鎮痛作用があり、疲労や痛みを和らげる役割を果たし、結果的に、人間は陶酔感を覚え快感を感じます。

 トウガラシの辛み成分であるカプサイシンには、食欲増進効果だけでなく、ストレスの解消や体内の脂肪の分解を促進する働きもあります。

 カプサイシンは胃腸から吸収されると副腎に作用し、かなり長時間にわたって、アドレナリンを主成分とする人間を興奮状態にさせるホルモンの分泌を促進します。

 現在、トウガラシを含む香辛料が食品として使われる主な目的は、食欲の増進や風味づけにあると考えられます。

 しかし、人間が香辛料を使ったそもそもの動機は必ずしも食欲増進や風味づけだけにあったわけではありません。

 肉類や魚介類の品質変化の抑制や腐敗防止の目的でも、香辛料は使われたのではないでしょうか。

 中米でもアンデスでも、まだ人びとが狩猟採集で食料を得ていた時代から、トウガラシが利用されていたことはそのことを物語ります。

 トウガラシの主な辛み成分はカプサイシンですが、これはカビに対して効力を有し、一部の細菌に対しても強い抗菌性を示すことが知られています。

 トウガラシはキムチやコチュジャン、辛子明太子などの貯蔵や保存を目的とする食べものに用いられており、腐敗防止という作用を期待してのものだったことかうかがえます。

 トウガラシの代表的成分はカプサイシンで、生のトウガラシには重量の0.02~0.2パーセント、乾燥トウガラシで0.1~1パーセント含まれています。

 カプサイシンはトウガラシを食べたときのカーッとした熱い辛さを生み出し、食品として食べたときには、まず口にさわやかで強烈な辛みを引き起こします。

 そして、辛いと感じることで、大多数の人が汗をかき唾液の分泌も高まります。

 そのほか、カプサイシンの刺激が脳に伝わるとさまざまな作用が起き、まず、交感神経を刺激して、エネルギー消費を高め、脂肪の燃焼をよくします。

 同様に、交感神経か刺激されることで血行がよくなり体が温まります。

 また、ビタミンEよりも高い抗酸化作用があることもわかっています。

 トウガラシの栄養素のうち、ビタミンやミネラルなどの微量成分では、ビタミソCの量の多いことか特徴として指摘できます。

 ビタミンCの働きのうち代表的なものとしては、体の老化を防ぐ抗酸化作用があります。

 ビタミンC以外のビタミンとしては、ビタミンEやA、Kの含量も高いです。

 これらは単独で働くだけでなく、一緒に摂取することでお互いの効果を高めあうことができ、酸化を防止するACE(エース)とも呼ばれます。

 このほか、トウガラシには医薬品としての用途などもあり、まだまだ知られていない魅力もあります。

 これらの魅力が明らかにされれば、トウガラシによる辛くて熱い食卓革命は、さらに世界中で広く深く浸透してゆくに違いありません。

 本書の構成はわかりやすいように地域別にしてあり、原産地の中南米に始まり、地球を東まわりに日本で終わるという構成となっています。

第1章 トウガラシの「発見」/第2章 野生種から栽培種へー中南米/第3章 コショウからトウガラシへーヨーロッパ/第4章 奴隷制が変えた食文化ーアフリカ/第5章 トウガラシのない料理なんてー東南アジア・南アジア/第6章 トウガラシの「ホット・スポット」ー中国/第7章 「トウガラシ革命」ー韓国/第8章 七味から激辛へー日本/終章 トウガラシの魅力ーむすびにかえて






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Last updated  2020.03.07 06:57:33
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