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沢木遥の「幸せ力をつける練習日記」
女と年金の関係
女の人生、年金未納の落とし穴はこんなに! それでも押さえたい公的年金★沢木遥
「将来、泣いてもいいわけ?」
と、CMで勇ましく国民年金の保険料納付をPRしていた江角マキコさんが、
じつは保険料を納めていなかったことが分かったと思ったら、今度はなんと、
国政を預かる閣僚たちの未納・未加入がゾロゾロ発覚しました。
ついには時の内閣官房長官の福田康夫氏が責任を取って辞職。民主党党首の
菅直人氏まで辞任に追い込まれるという、政界をゆるがす年金スキャンダルに
発展しました。
「うっかりしてました」「気づかなかった」と口をそろえる閣僚たちに
あきれながらも、ここはまずは我が身を反省してみたいところです。
女性は社会的な身分が人生のなかでしばしば変わります。
その都度、保険料の納付についての手続きをきちんとしないと、
「うっかり」「気づかず」未納、となりがちなのです。
国民年金は原則強制加入。20歳から60歳まで40年間加入して初めて、
満額の年約80万円を65歳から受けることができるのですが、
未納期間があれば、当然給付額が減ってしまいます。給付を受けるためには
最低25年間加入していることが必要。40年間のうち15年以上の未納期間が
あると、年金を1円ももらえないという悲惨なことにもなりかねません。
未納期間はないか、短いほうがトクだし、気づいても2年間分しか遡って
払えないので注意が必要です。
「無視していれば、時効(?)になる」
「お金持ちになってからまとめて支払えばいい」
ということをまことしやかに言う人がいますが、これはまったくの誤りです。
さて、どういう時に、女性にとって年金の未納が起こるのか、
OLのA子さんを例にとってみてみましょう。
短大卒業後、就職したA子さんは、入社と同時にほぼ自動的に
厚生年金に加入します。
厚生年金に入っていれば国民年金に入らないというのは誤解で、
厚生年金や共済年金に加入している人は、国民年金の「第2号被保険者」
となり、国民年金の保険料も納めたことになるので、国民年金への
加入手続きは不要というだけのことです。
数年後、A子さんは会社を辞め、フリーで仕事をすることになりました。
会社を退職すると、厚生年金から離脱することになるので、この時点で、
国民年金への加入をしなくてはなりません。それをしないまま
未加入=未納になってしまうケースが非常に多いのです。
今回、江角マキコさんのケースがまさにこれでした。江角さんは
日本たばこ産業(現・JT)時代入っていた厚生年金から、退職とともに離脱。
モデルになりましたが、国民年金への加入手続きをしていなかったのです。
さて、A子さんの例に戻ります。
やがてA子さんは5歳年上のサラリーマンと結婚して専業主婦になりました。
会社員や公務員の配偶者で、年収130万円未満の人は「第3号被保険者」と
なるので保険料を免除されます。ところが、これは自動的になるわけでは
ありません。その恩恵にあずかるには市町村窓口への届け出が必要です。
これをし損じたまま、未納になってしまって、もらえる年金が大きく
減らされてしまっている人が多く、国が以前救済措置を講じたことがあるほど、
社会問題になっています。
結婚後数年して、A子さんの夫がリストラにあい、会社を辞めました。
夫の退職と同時にA子さんは第3号被保険者ではなくなるので、
夫とともに国民年金の加入手続きをしなくてはなりません。
夫が再就職し、どこか会社に入ったら、今度は妻のA子さんは再び
「第3号被保険者」の届け出がしなくてはいけないのです。
さあ、子育ての手が離れ、専業主婦だったA子さんが再就職をしました。
すると、勤務先で厚生年金に入ります。またその会社を退職したら、
「第3号被保険者」の届け出をしなければならない。
やがて5歳年上の夫が60歳で定年退職します。
55歳のA子さんは国民年金の加入手続きをしなければいけないのです。
ここもうっかりしがちなところです。
いかがでしょうか。
女性の人生にはじつにたくさんの未納になってしまう落とし穴が
潜んでいるのです。
65歳になってあわてないためにも、心当たりのある人は、
加入漏れや届け忘れがないか、今のうちに確認しておきましょう。
過去2年間ならさかのぼって保険料を納めたり、第3号の資格を
認めてもらったりすることができます。
一方、年金について大きな不信感が高まっている昨今、きちんと
支払ったとしても予定通り受給できるか疑わしい。保険料だって
今秋から毎年値上げされていく。それならば、保険料の分を貯金に回し、
民間の年金保険に入った方が安心ではないか……と、
確信犯的保険料未払いを決め込んでいる人もいるでしょう。
でも、ちょっと待ってほしいのです。
公的年金には、優れている点もとても多くあります。民間の保険会社の商品には
倒産リスクがあるし、保険や預貯金には、インフレで貨幣価値が
下がった場合の補償はありません。ところが、公的年金は物価スライド制だし、
日本が破産でもしないかぎり、制度そのものがなくなってしまうという
可能性はきわめて低いのです。さらに、障害保険や遺族保険なども
セットになっています。もちろん、保険料は税金の控除が受けられます。
なにより、女性にとってありがたいのは、死ぬまで年金を受け取れる
終身保険であるということです。
平均寿命が男性より長い女性は、独居老人になるリスクはかなり高いといえます。
住居も心配ですし、医療費もかかってくるかもしれません。
死ぬまで受け続けられる公的保険の種をまけるのはいま、この現役時代だけ。
安心の材料は多いに越したことはありません。
人生設計のなかに、公的年金をしっかり組み込んで、そのうえで
民間の年金保険や貯金を考えるなど、複数の柱を立てておきたいものです。
(2004/5)
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