釣りに熱中しはじめた頃は、毎回夕陽に照らされるまで竿を振ってた。大親友だったIさんとの記憶の中でも、この夕焼けは外せない要素。釣りが下手くそで、朝も暗いうちから釣り始めて、一日中ねばって釣れないなんてのは毎度のこと。オレンジ色に変わった川に、「もうそろそろ釣り仕舞いにしなよ」って言われるまでムキになってた。それでも、悔しかろうが楽しかろうが、どんなエピローグであってもスポットライトをあててくれたのは夕焼けだった。
当時、僕はまだ東京で生活していて、休日の度に釣りに行く仲間はIさんぐらいだったから、彼とは「夕焼け友達」みたいなもので、いつしか仲間が増えて作ったクラブの名前が「夕焼けフィッシングクラブ」。
決してカッコ良くないし、全力で「僕らは下手です」とアピールするような名前だったけど、その名前の響きは今でも気に入っている。自分のプロセスを表してくれるかのような、このヘンテコリンな名前に、ちっぽけなプライドもある。
僕が信州にUターンしたことで、このクラブは休止状態に。それからまもなく、Iさんは他界してしまった。秋になると、信州の夕焼けは輝く。西の空が染まると、うれしさの中にちょっぴり悲しい気分が混じるのは、夕焼けが映し出す色に似ている。

「こんな夕焼け、Iさんも見続けたかったろうな」