むかーし、むかしのこと。ある朝、連日の深酒が続いたMちゃんは、下半身に痛みが伴う違和感を覚えた。Mちゃんは女性だし、明確に言うのも何なので、ここではGという表現にしたい。Gには「切れる」とか「イボ」とかいくつかの品種があるらしいが、Mちゃんのは「飛び出る」ヤツだという。時間や場所を問わず、Mちゃんがちょっと力んだり大笑いすると、Gが厳しく自己主張をし、「あらヤダ、困る」の状態になっていたらしい。
ところが、Mちゃんはとても律儀なところがあって、不自然に飛び出たこの物体を「ミミちゃん」と名付け、人生の苦楽を共にしている。僕はこの手の病気は詳しく知らないが、ミミちゃんの近況を聞くたびに、こみ上げてくる熱いものを抑えることができないでいる。
宴会の合間を縫って、Mちゃんの美容室に行く。Mちゃんは2つの店の経営者だが、お客さんの髪の毛はカットできても、ミミちゃんとの関係は断ち切れないでいる。(Mちゃん撮影)

さっそく、ミミちゃんの動向を聞く。「最近はお行儀がよくて、とてもおりこうさんなの」とMちゃんは安堵していた。でも、ここ3日間、僕が行く忘年会や二次会の会場には、必ずMちゃんの姿があった。連日連夜は僕もツライが、「ミミちゃん爆弾」を抱えるMちゃんだってツライはずだ。ミミちゃんだって、もうそろそろ爆発寸前に違いない。
夜、Mちゃんも出席する忘年会に行く。着物姿のMちゃんは、姿勢正しく座っていた。「ミミちゃんが暴れだすと、おしりの左右どちらかに体重をかけなければツライの」と泣いていたMちゃんの言葉を思い出す。良かった。ミミちゃんは今夜もおりこうさんのようだ。大勢の人ごみをかきわけ、僕はミミちゃんに向かって、そっと手を合わせた。