
ここは、上田市の棚田。この横に、僕の祖父の家がある。で、僕は小さな頃から遊んでいた。カブトムシやホタルを見たり、名前の知らないきれいな花が咲く遊園地のような存在だったのだ。
その祖父が亡くなった。
祖父の亡骸に手を合わせた後、かつて遊んだ棚田に向かった。祖父が暮らしていたのは、このすり鉢のように傾斜した水田地帯で、毎日のように近所の農家の人たちと言葉を交わす時代だった。自分の庭でも、自分の水田でもない環境を、皆と共有していたはずだ。
今、この地域に住んでいるのは、水田にも出ることのできない年寄りばかり。そして、この棚田は最近になって観光スポットになり、高齢化した農家に代わって都会のオーナーが稲作体験をしているらしい。
祖父が毎日触れていた生活は、もうとっくに息を引き取っていた。棚田は、そんな現実を見下ろしているかのようだ。