15年を超える釣り友だちは、タバコを吸わない以外は体に悪いことばかりしていたので、遂に病院から「御用」と相成った。言い方を代えれば、自ら選んでこの病気になった確信犯なのだ。まあ、神様から御用にならなかっただけ幸せ者だ。なので、僕は病院への見舞いは一切しなかった。川で再会するのがスジだと思っていたのだ。
おぼつかない足取りで杖をつきながら、Sちゃんは川に戻ってきた。

「今日はイスに座って大名釣りだ」と偉そうなことを言うので、僕と後輩S君はSちゃんのそばに腰を下ろして川を見ていた。

「病院の中じゃ若い女の先生にモテモテでさぁ」とか「かっちゃんも酒の量ひかえないと体に悪いよ」などと、井の中の蛙発言を繰り返す。あきれてモノも言えず、涙が出てきた。釣りをする気になれない僕は、酒を飲めないSちゃんの横で、缶ビールやワンカップをたらふく飲んで川を見ていた。
まだまだ満足に竿を持てず、川に立ちこむこともできないSちゃんに、鮎は1匹も掛からなかった。僕と後輩S君は、せっかくの解禁日なのに1時間も釣りをせず、鮎は去年の10分の1も釣れなかった。
Sちゃんのリハビリ生活は、夏いっぱい続く。時々は、適当な理由をつけて病院を抜け出し釣りをする気らしい。病院、ならびにご親族の方々、ならびに全国で闘病生活を送っているみなさんへ。僕の釣り友だちなので、どうか許してやってください。
解禁の味 2012.06.30
解禁で占う 2011.06.25
越後荒川で2時間だけ釣る 2010.08.29